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百貨繚乱となるか ビジネスソリューションへの挑戦

新しいツールを携えたイノベーターたち

写真左から、稲毛大輔、中村英資担当課長

購買スタイルの多様化にともない、流通業界はかつてないほどの熾烈な浮沈のただなかにある。
なかでも百貨店は戦国時代とも称され、常に世間の耳目をひいている。

流通ビジネス本部の担当課長、中村英資はこう分析する。
「インターネットの普及による通信販売の拡充、販売ルートのバイパス化による価格破壊、ブランド品などの高額商品と激安商品の二極化など、商品を取りまく状況はいままさに激動の時代だと言えるでしょう。」

購買するユーザにとっては利便性が高まった昨今の商品環境ではあるが、売り手サイドの悩みがつきることはない。

「今、百貨店は個性化を求められながらも“百貨”という品揃えの豊富さを一方にはフィーチャーしたいという思いもあります。様々な選択肢を持ったユーザに対して、なお魅力的な場所であるために百貨店はどういうアプローチが必要なのか。業態の垣根を越えることも視野に入れ、百貨店は新しいビジネスモデルを構築しようとしています。」

現代のビジネス改善にITがかかわってくることは必然である。
経済産業省は電子タグの活用による流通小売業の活性化のための『日本版フューチャーストア・プロジェクト』を推進、その一環として「百貨店業界による電子タグ活用拡大実証実験」を平成16年~18年にかけて実施した。

この実証実験に手を上げた三越様は今までも新たなビジネスモデルへの挑戦をし続けてきた。いままたRFID(電子タグ)をひとつのツールとして改善に向けた取り組みのチャンスを逃すことはなかった。
富士通はパートナーとしてシステム構築と機器開発をもってこの実証実験に参加した。

老舗三越様が挑むNEXTに富士通が応えること

RFID(電子タグ)はいま最も注目されるITツールのひとつである。その利用価値、利用範囲は多岐にわたると推測されつつも本格的な実用に向けた取り組みはまだ緒についたばかりだ。

中村英資担当課長

三越様のRFID(電子タグ)活用の取り組みは三カ年プロジェクトの初年度、靴売り場での実験から始まっている。

次年度、これを進めてジーンズにRFID(電子タグ)を取り付けることに挑戦。
この段階でRFID(電子タグ)の受発信機能にはほぼ満足がいく状況だったため、最終年度は商品や利用範囲を拡げて、次のポテンシャルを探るという意味で顧客満足度のバロメーターをはかりやすい1階化粧品売り場で実施され、資生堂様の協力もあってテスターの需要予測やバーチャルなメイクアップシステムなど興味深い実証実験も行うことができた。

このプロジェクト・メンバーのひとり、流通ビジネス本部の稲毛大輔はいう。
「アイディアとともに実証実験を重ねていくことが不可欠であり、この地道なプロセスが重要なんですね。たとえば携帯電話が開発されたとき、従来の通話機能の枠を超えて普及し、多彩なコンテンツまで搭載した今日の姿を想像した人は恐らくいなかったでしょう。
RFID(電子タグ)も近い将来なくてはならないインフラだと感じますが、普及までにはまだ様々な課題が点在しています。」

今回の実証実験はRFID(電子タグ)の可能性を探る上でも、また意識を改善する上でも有意義なプロジェクトになったという。

「RFID(電子タグ)は優れた情報収集能力を備えたITツールですが、そのツールだけで課題解決ができるわけではありません。
集めた情報をどう分析し活用し、どういうシステムと連携して、最終的にどう事業収益につなげていくかというプロセスにおいては人間の智恵が主軸。ハードからのアプローチではなく、課題解決をするために便利なツールをどう使いこなしていくか、ということ。そういう視点が欠けると、現場の方々にとって使いにくく役に立たないツールになってしまいます。」

実際、今回のプロジェクトでも、実用に向けて売り場の美容部員へ負担なくシステム移行をする難しさを痛感した。
また、システム化は容易でも、直接来店客の目に触れるマルチサンプルディスプレイのデザインやコンテンツなどソフト面での強化も重要である。
中村はこういった課題ひとつひとつが大切な収穫だという。

「三越様も今回の実証実験で課題を明確にすることが目的のひとつだとお考えでした。新しいシステムに切りかえていくには、模索する過程をないがしろにはできないからです。」

もちろん、多くの利点も見いだすことができた。
「個人の購入履歴の把握をRFID(電子タグ)で行うことにより、化粧品カルテの取扱い、保存が容易になり、美容部員の負担が軽減されました。
また、自宅と売り場とつなぐというコンセプトでシステム化した電子タグ@ホームやかざすだけで密度の濃い情報が得られるタブレットPCはモニターの方々に好評を持って迎えられ、実験期間は売上が10%伸びるという結果もだせました。次のステージに向けた手応えは充分に感じています。」

フィールド・イノベーションという名のソリューション

百貨店にしかできないことが必ずある。それをITを使ってどう具現化していくかが富士通の使命であると中村はいう。そしてそこには人間起点の視点が不可欠だとも語る。

「ITだけで業務改善の全てをサポートできると考えているわけではありません。しかし、私たちが利用する側からの視点を常にもっているか否かによって、ソリューションの方向は全く違ったものになってくると思います。」

稲毛も今回のプロジェクトでは老舗百貨店三越様、そして資生堂様のブランドイメージというものを常に念頭においていたという。

「システムに充分な機能をもたせることは当然として、デザイン性にも気を配りました。最近のユーザの感性は鋭いですから、機能が満たされていればそれで良し、というわけにはいきません。」

富士通が提案するフィールド・イノベーションはたとえて言えばらせん階段のイメージかもしれない。エレベータに乗って一気に高層ビルの最上階に到達するイメージとは違う。全方位型にあまねく『見える化』を推進し、途中階にも解決すべき課題があることを明らかにする。

稲毛大輔

「定量ではなく、定性的なデータの分析が必要なのです。物事の本質がわかっていないと、まるで見当違いの解決策になることだってありえます。」
中村はゼロからのスタートが形になり、それが評価される喜びを感じながらも、本質の把握ということに厳しい目を向ける。

コンサルタント的な要素もあった今回のプロジェクトで大いに刺激を受けたという稲毛は、
「百貨店という一般消費者に馴染みの深い業態での導入事例は、富士通のフィールド・イノベーション力をアピールする絶好の機会だととらえています。そしてこのプロジェクトはその先導役として有意義だと自負しています。」と語る。

「三越様にしかできないこと」を、「富士通にしかできないこと」でつくりあげる。フィールド・イノベーションの高みにはそんな到達点を眺めることもできる。


2007年6月20日 公開


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