Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

 Newテクノロジー(1) |  Newテクノロジー(2) |


Newテクノロジー(1)
安心安全に役立てる
人工抗体技術

PDFダウンロード(638KB)

身体にとって異物であるウイルスや病原菌を捕える抗体は、病院での検査やバイオの研究等に盛んに利用されています。富士通研究所では、抗体と同じような物質識別機能を低コストで実現する人工抗体技術を開発しています。これは化学合成が容易な核酸を骨格としつつ、物質認識機能を高めるためにたんぱく質に似た側鎖をたくさん入れたものです。ここでは、人工抗体をどのように作るかという手法と、実証例をご紹介するとともに、この技術を実用化するための取り組みについてご紹介します。

最近、学生に麻疹(はしか)が流行して大学の休校が相次ぎ、ニュースで話題になりました。三種混合ワクチンの副作用が懸念されて接種が行き渡らなかった頃に幼児であったいまの大学生世代に、麻疹に対する免疫を持った人が少なくなっていることが原因とされています。
予防接種で麻疹ウイルスを含むワクチンを接種されると、体内で私たちの身体を守るための免疫系が働きはじめ麻疹ウイルスに対する抗体を作る仕組みができあがります。これによって、そのあと麻疹ウイルスが体内に侵入しても、血液中にある麻疹ウイルスに対する抗体が、ウイルスを捉えて無毒化してしまうのです。

抗体の利用

このように抗体は、身体にとって異物であるウイルスや病原菌のたんぱく質を識別する働きを持っています。この抗体の機能は、医療や健康に関わる様々な検査(前立腺ガンの指標になるPSAたんぱく質、BSEの原因となるプリオンたんぱく質等)や、医学やバイオテクノロジー研究の試薬として盛んに利用されています。また最近では、抗体を医薬品に使うことが増えており、転移性乳ガンに対するハーセプチン、大腸ガンに対するアバスチン等の例があります。このため大手製薬企業は、抗体作製技術を囲い込むためベンチャーを数百億円規模の高額で買収する例も相次いでいます。一方で抗体の医薬品は年額500万円を超える等、費用がかかる問題も抱えています。

私たちのアプローチ

富士通研究所では、いまご紹介した抗体と同様の物質識別機能を、生物の免疫システムに頼らずに低コストで実現することを目指し、人工抗体技術の開発を進めてきました。
この手法の特長は、図1の概念図に示す通り、安定で取り扱いが容易なDNA分子を骨格に用い、そこに抗体に似た枝を多数入れた構造を作る点にあります。私たちの技術を使うと、例えば9種類の異なる化学的性質(陽イオン性、陰イオン性、脂肪族疎水性、芳香族疎水性等)を20個組み合わせた場合、1019通りもの組み合わせが可能な多様性を持っています。これは、身体をどんな異物からも守るために抗体が備えている多様性(1010通り)をはるかに超えるもので、様々な物質を識別できる可能性を秘めています。

[図1]人工抗体の構造概念図

人工抗体の開発プロセス

膨大な多様性の中から最適な組み合わせを選ぶために私たちが使っている方法を図2に示します。これは、コンビナトリアルケミストリーと総称されるアプローチです。
まず、あらかじめDNAの原料であるヌクレオチドに様々な枝を入れたものを合成します。この枝付きヌクレオチドを全て混合した溶液を使ってDNA合成反応を行わせると、ランダムに枝が入った様々の組み合わせの混合物(ランダムライブラリ)ができあがります。次に、人工抗体を作ろうとするターゲット物質(例えばウイルスのたんぱく質)をランダムライブラリ液に浸けてからよく洗い、強く結合した人工抗体をターゲット物質とともに釣り上げます。最後に、釣り上げた人工抗体の配列を遺伝子工学を使って解析します。その後、この配列だけを大量に合成すれば、人工抗体として利用することができるのです。

[図2]人工抗体の開発プロセス

ジャーナル最新のテーマ

今月のテーマ 安心安全 「守り」+「攻め」の安心安全へ お客様の企業価値向上をご支援します 続きを読む


今月のアンケート 第1回集計結果公開中 2008年7月9日集計 約9割が実施!企業の信頼性に直結するセキュリティ対策 気になる結果は?


お客様の声をお聞かせください

富士通ジャーナルに掲載している記事やコンテンツについてのご意見・ご感想を、ぜひお寄せください。

ご意見・ご感想フォーム いただいた、お客様の声


お寄せいただいたご意見・ご感想については、富士通からの回答をお約束するものではありません。ご了承ください。
なお、富士通からのご回答を必要とするお問い合わせについては、
富士通ジャーナルに関するお問い合わせをご利用ください。