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市場を世界に置いた新たな挑戦、富士通のSaaSビジネス

ICT資産を自社内に所有せず、必要な機能やサービスを必要なときに必要な分だけ利用できるSaaS(Software as a Service)の需要が高まっている。富士通では2007年にSaaS事業部を立ち上げ、体系化したサービスビジネスの拡張を推し進め、2009年4月にSaaS事業を大幅強化することを発表した。

SaaS事業部アプリケーション基盤開発部プロジェクト課長の安川武男、同事業部SaaSプロデュース部プロジェクト課長の輪島章司に、富士通のSaaSビジネス展開について話を聞いた。


アウトソーシング・ニーズの高まりとSaaSビジネスとの関連性とは

もはやITは社会インフラのひとつだが、その応用範囲や利便性が高まる一方で、IT維持コストは増え続けている。お客様のビジネスに最適なサービスをインテグレーションしてご提案する役割を担うと輪島はいう。

「IT環境の範囲が広がるにつれ、ICTシステムを維持・運用するためのコストも増大しています。企業においていかにTCOを削減するかということは、もっとも重要な課題のひとつであり、その解決策のひとつがアウトソーシングといえます。ICTコスト全体の6割を占めるといわれる維持・運用コストを削減する解決策として、企業は積極的にアウトソーシング・サービスを活用し始めています。」

ICTのアウトソーシング・サービスとして注目されているのが、インターネット経由でのソフトウェアの提供、SaaSサービスである。

「サーバなどのハードウェアやアプリケーションソフトウェアを自社で所有する必要がなく、必要なサービスを必要な分だけ、早期に導入できるSaaSサービスは、運用負荷の低減に貢献し、結果的にコストの最適化を実現する、まさに時代のニーズに合致したサービスです。」

しかし、お客様からの多種多様なニーズが増えるに従い、サービスを提供する側の技術レベルはさらに高くなければ対応できない、とSaaSプラットフォーム開発のプロジェクトマネージャーを担う安川は、開発側の視点からいう。

「たくさんの人がソフトウェアをシェアしながら利用するわけですから、セキュリティを万全にするのはもちろんのこと、24時間365日止まらず安定稼働するプラットフォームが非常に重要になります。そして、お客様がストレスなく利用できる環境を実現するためには、あらゆる場面を想定したテストやシミュレーションを繰り返しながらプラットフォーム開発を進める必要があります。」

富士通のSaaSサービスの強み

SaaSプラットフォームの開発は、富士通のSaaSサービスのひとつとして力を入れている事業のひとつだ。

「SaaS市場は多くの企業が参入し、しのぎを削る状態です。そのなかで富士通はどのようにして特長のあるSaaSサービスを提供するのか。そのひとつがプラットフォームを中心とするサービスです。SaaSビジネスを展開するソフトウェアベンダーやインターネット企業などのSaaSパートナーに富士通のSaaSプラットフォームを使っていただくことで、プラットフォームの構築・運用を私どもに任せていただき、アプリケーション開発に注力していただくことが可能となります。このサービスで、私たちはSaaSパートナーのビジネスに貢献していきます。」と輪島はいう。

プラットフォーム開発上での富士通の強みを安川は次のように考える。

「ひとつはベンダーとして長きにわたり蓄積してきた開発ノウハウと、これらの体系化です。ノウハウとは成功した経験だけでなく、失敗経験も含めて考えています。開発過程においては、想定できるあらゆるケースを検証していくことが大切です。また、これらを活用することで、テスト方法そのものも精度があがるので、従来に比べて短時間で検証作業を進めることができます。」

富士通ではSaaSプラットフォームサービスだけではなく、SaaSアプリケーションサービスも提供している。

「SaaS型eラーニングサービス「e-Learning Navigware(イーラーニング ナビウェア)」は、すでに多くのお客様にご利用いただいています。私たちにはプラットフォームにおいても、アプリケーションにおいても、開発から運用までの経験がありますから、これらのノウハウを提供できることも富士通のSaaSサービスの強みです。富士通自身の経験をふまえているからこそ、確実性をもったサービスが提供できるのです。」と輪島はいう。

多面性を持った新たなサービスビジネスへの挑戦

富士通のSaaS事業部は、さまざまな部署からメンバーが集まっている。

「多様なバックグラウンドを持ったバリエーションに富んでいるメンバーが多いです。考え方も文化も違うなかで育ってきた人たちの集まりなので、さまざまな視点からの発想が開発過程でのお互いの刺激となり、良い影響をあたえている面があります。」
と安川はいう。

安川は、デジタル生物ソフトの先駆けともなったプロジェクトに従事したあと、ネットワークサービス開発、そして現在のアプリケーションプラットフォーム開発と、インターネット環境での開発にたずさわってきている。

「デジタル生物ソフトはビジネス一辺倒だったパソコンの世界に初めて“癒し”を持ちこんだものだと思います。見た目は優しいのですが、その裏側では人工知能ともいえる複雑で高度なソフトウェアが動いていたのです。その後インターネット上で機能するプラットフォームやアプリケーションの開発を通して、チームで開発することの大切さを学びました。ビジネスは一人で成し遂げられるものではないですから、チーム全体のムードがプラスの方向に機能するように努力することはとても重要です。」

その時々にプライドを持って仕事にあたることで、やがて良い実りを迎える。

「私たち開発の仕事というのは、作ったら終わり、ではなく、運用がスタートしたら、メンテナンスやエンハンスなどが必ず発生するため、終わりなき業務です。また、映画の最後に出てくるエンドロールのように、最後に関係者の名前が出る、といったこともありません。そのため、仕事のゴールが立て難く、モチベーションを維持し続けることにも苦労するのですが、たとえば、サービス公開直前は、メンバー全員でカウントダウンしながら正常稼働を見届けたり、稼働後はイベントを企画したりとメンバーの一体感を盛り上げています。新プロジェクトはいわば「祭り」のようなもの。そう考えれば、仕事は楽しく、前向きに取り組めるはずです。今回のSaaSの開発では新しいビジネスやサービスに関わることができ、いままでの案件とはまた違った意味で、仕事の価値を誇れるようになると思います。」

輪島は新しいビジネスへの挑戦を次のように語る。

「今までにないビジネスを立ち上げるというやりがいとともに、前例がないことを進める難しさが同居しています。既存ビジネスに比較すれば、市場の要求にマッチしないケースも多々あり、プロジェクトそのものを終了させるケースもなかにはあります。だからといって慎重になりすぎず、挑戦の気構えで進めたいと思うのです。失敗も含めて、それらの積み重ねが、さらに新たなプロジェクトがより良いサービスを提供していくことにつながると考えています。」

同時に、そこにはグローバルが視野に入る。

「インターネットを利用したサービスですから、もともとこのビジネスに国境は存在しません。お客様も世界展開できるとともに、競合相手も世界中にいるのです。そこに厳しさもあれば、逆に新たなビジネスの可能性も見いだすことができる、と感じています。」

安川はスピードも重要だという。

「世界で戦っていくためには、開発段階でのスピードの速さも重要になります。富士通のサービスレベルは高いと自負していますが、もはやそれだけでは世界の舞台にはあがれない。今後は、開発に関してもドラスティックな発想が必要になると思います。」

そしてこの多様性を持ったビジネスの展開を輪島は次のように締めくくる。

「世界で勝負できる、どこにも負けないサービスを確立していきたいと考えます。いうなればキラーサービス。豊富なノウハウを持ち、総合力で勝負してきた富士通だからこそ、柔軟性を持った提案が可能ですし、今後のビジネス展開も、新たなリソースとして体系化し、私たちの財産としていくつもりです。」

攻めの気持ちを持たずして新事業のステップアップは踏めない。蓄積してきた富士通ノウハウを活かしながら、本格的なSaaSビジネスのグローバル展開へ向けて、富士通は新たなビジネスを始動している。

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[2009年5月1日 公開]

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