運用・保守に平準化を持ちこみ、見える化・最適化を実現するAPM(エーピーエム)サービス
今日、ビジネスの根幹を担うITシステムのなかで、長期に渡ってメンテナンスを繰り返し、肥大化してしまったアプリケーション(注1)の運用・保守には、IT投資額全体の約70%が費やされているといわれる。
このアプリケーション保守に関して、ISOやITIL(注2)などの標準化手法にもとづいて保守の再構築をしながら、ポートフォリオ手法による継続的な品質改善と最適な投資を支援するのが富士通のAPM(注3)サービスである。
このサービスを実際に提供する現場の取り組みについて、産業ビジネス本部 製造ソリューション事業部 プロジェクト部長 島津めぐみと阿部和紀に聞いた。
現場ですぐに活かせる型をつくりあげる それがAPMサービスの出発点
アプリケーションの運用・保守はまず現場を知ることだと、APMサービスを率先して推進してきた島津は次のように語る。
「従来、産業ビジネス本部は新規システムの立ち上げを中心としたビジネス展開を推進していました。しかし、世の中の環境変化がスピードアップして、お客様のシステムも頻繁に変更する必要性が生じ、アプリケーション運用・保守の重要度がますます高まったため、ライフサイクル全般にわたってお客様をサポートしていく体制が必要となってきたのです。」
「運用・保守の現場はまさしく『待ったなし』です。トラブル対応にはスピードと確実性が求められ、お客様の眼も厳しくなります。
今までのように担当者のスキルに依存した対応ではなく、富士通として組織全体での取り組みがない限り、お客様のご要望に応えていくことは不可能だということを痛切に感じました。
そして組織で対応するためには、現状を整理して統制し、基本となるガイドライン、つまり型をつくることが重要だという結論に達しました。」
型を作るためにお客様の事例を集め分類・整理していったが、それは思いのほか難航する作業だった。
「それぞれのプロジェクトによって受託条件や実施する体制もまちまちで、お客様との役割分担があいまいな契約を締結しているケースもありました。」
およそ2 か月間で、現場での問題点、課題点を収集。その後、分析/整理を繰り返し、一年でAPMサービスを提供するための体制設計やプロセス・ルールのガイドライン(型)をつくりあげていった。
「この型により、今までバラバラだったアプリケーションの運用・保守の方法が体系化されてきました。ひとつの基準ができたことで、業務プロセスや業務内容の平準化、役割分担の共通化・共有化が可能になり、この基準を実際の現場に適応することで、現状の見える化、課題の見える化が可能になりました。
これにより、アプリケーションの運用・保守に対する最適な投資のご提案を含めたサポートや、コスト削減も見込むことができるサービス体系を確立することができました。」

アプリケーションライフサイクルにもとづく価値
現場のSEとしてお客様とダイレクトに接している阿部は、アプリケーションの運用・保守にかかるコストをきちんとお客様に理解していただくことが重要だと語る。
「たとえば、システム導入時の初期投資額というのは非常に見えやすいと思います。ところが、一旦システムが稼働してしまうと、健全な状態を維持するためにもコストをかけることが必要だという発想にはなかなかおよばないものです。運用・保守にはかなりの人員が必要ですが、それをわかっていただくことも容易ではありません。
アプリケーションの運用・保守に関しても、費用対効果がわかるような提案方法というのが必要だと感じています。コストがかかるという一面のみを伝えるのではなく、現在の投資がどのように将来のコスト削減へつながるかということを、お客様に納得していただけるよう、具体的に説明することが必要です。」
アプリケーション運用・保守の最適化をサポートするAPMサービスの現場は、お客様のビジネスの現場でもある。まずお客様の現場を知り、お客様の課題を知ることが大切だと阿部は言う。
「ありふれた言い方ですが、常にアンテナをはり、お客様よりも業務がわかっているというぐらいになるのが理想です。もちろん、お客様以上にお客様の業務を理解することは現実的にはありえませんが、お客様からの要望があってアクションを起こすという受け身の姿勢だけではなく、富士通のノウハウや知見と、お客様先での経験をもとに、次の課題の先取りをしていきたいと思っていますし、そこにこそ富士通のAPMサービスの価値が存在すると思います。」
『平穏無事』こそが理想的なAPMサービスの現場
APMサービスはお客様のビジネスの現場でどのように活かされているのだろうか。
阿部が担当している日本製紙株式会社様は、2003年より継続中の基幹システムのアプリケーション保守について、富士通がAPMサービスの型を確立後、いち早くサービス契約(アプリケーション保守サービス『Premium』(注4))の適用を実現している。
「受託条件や実施体制、お客様との役割分担など、従来から運用してきたものはありましたが、APMサービスの型をもとに見直したことでより精度の高い定義ができました。 基準に照らし合わせることで、長期に渡るサポートのなかで形骸化しがちなプロセスも見直すことができ、またAPMサービスのあるべき姿が型で具体化されたことで、各担当がより強く改善を意識して行動するようになりました。」
昨年度はグループ情報システム資源の効率的運用を目指し、情報インフラの標準化・集中化、災害・ウイルス対策などのリスクマネジメント強化の実現に向けて、システム全体を富士通館林システムセンターへ移転している。
「センター移転はお客様のアウトソーシングサービス活用シナリオの第一ステップです。APMサービスを始めとする今後のサービス拡充を支えるインフラサービス基盤として位置づけられます。
7 か月に渡る、サーバ160台という大規模な移転でしたが、移転中もお客様には営業日通り業務を続けていただき、大きなトラブルを起こすことなく完了しました。
そのためには、お客様の業務状況およびシステム全体、アプリケーション全体を把握することが重要です。
また、各システム担当SEの体制をしっかりすることも忘れてはなりません。何があっても、すぐにリカバリーできるようなフォーメーションを組み、その上でリスクを最低限にする綿密な計画を立てることです。日々のAPMサービスにより蓄積されたノウハウがセンター移転にも活かされ成功につながりました。
『平穏無事』は現状調査、リハーサル、お客様との役割分担など、万全の準備ができてこそ実現されるものです。
そして、障害発生時には、臨機応変に対応することも重要です。プライオリティを決め、お客様の業務に支障が出ないレベルまで復旧し、残りはあとから対応するといった判断を即時に適切にできるヒューマンスキルも大事だと思います。」
富士通の徹底した取り組みが認められ、日本製紙様より表彰状をいただいたことは、阿部の大きな誇りである。
理想的なSEの姿 そしてAPMサービスの今後へ
「今は第一フェーズ。産業ビジネス本部のAPMサービスとして基本形ができたところです。第二フェーズの目標は、APMサービスをもとにした提案型のビジネススタイルを確立していくことです。
お客様の要望を聞いて対応していくという受け身のスタイルではなくて、富士通側から経営層にも理解していただけるような提案をどんどんしていきたいですね。
また、運用・保守に携わるSEの現場が元気になる仕組みをつくっていきたい。SEが誇りを持って仕事を遂行できる現場をつくることが必要です。お客様の業務を支える大事な現場なのですから。」と島津は熱い思いを語る。
お客様の要望や障害対応に対処するだけで手いっぱいだった現場も、APMサービスの適応で、少しずつ提案もできる体制になってきたと阿部は言う。
「お客様のビジネスパートナーとなること、ここは富士通にしか任せられない、と思っていただけるだけの結果を出していくことが目標です。そのためには、的確にお客様のビジネスにどう貢献できるかを提案し、今後はお客様のIT戦略にもかかわれるよう実績を積み上げていきたいと思います。」
「そのためにも、人材育成は重要です。SEという職業は、技術力+人間力が必要だと思います。SEがお客様の業務目線で話せるということがこの業界においても重要で、コミュニケーションの基本です。システムの専門用語で話しても、お客様は理解できません。業務にどういう不都合が出るのか、何時に復旧するのか、復旧後は正常な状態に戻るのか、ということを平素に説明できるSEが、ITシステムの現場では大切なことです。」と島津は語る。
そして最後に島津は、富士通のAPMサービスの展望について語った。
「APMサービスは富士通全体からみればあくまでサービスのひとつにすぎません。総合力で問題解決できるのが富士通の強みです。現在のビジネススピードにそってシステムを対応させていくために、これからますますAPMサービスの需要は増すと思われますが、そこにLCMサービス(注5)やSaaSサービス(注6)、あるいはユビキタスの提案を付加することで、お客様のビジネス価値を高める提案へ結びつけることも可能でしょう。富士通のリソースを最大限に活かすことを考えていきたいです。」
お客様にとって非常に重要なアプリケーションの運用・保守の現場。派手さはないが、的確で地道な仕事が要求される現場だからこそ、富士通の総合力がいきてくることはゆるぎないと言える。
注記
- (注1)アプリケーション
- 文書の作成、数値計算、データベース構築など、ある特定の目的のために設計されたソフトウェアのこと。富士通のAPMサービスでは、プログラミングやデータベース構築に関するアプリケーションの運用・保守の支援をしています。
- (注2)ITIL
- IT Infrastructure Library。システム運用管理、ITサービス管理に関するベストプラクティスを集めた手引集。1980年代後半に英国政府が策定し、現在、著作権はOGC(Office of Government Commerce)にある。ITサービスのプラン、開発、提供、維持の各プロセスに関するガイドラインが定められていて、IT部門はその各ガイドラインに合わせてサービスレベル合意書(SLA)を締結。日々のプロセスを改善し、全体最適を目指す。
(【出典参考】 it-SMF JAPAN オフィシャルサイト) - (注3)APM(エーピーエム)
- Application Portfolio Management:アプリケーション ポートフォリオ マネジメントの略。
- (注4)アプリケーション保守サービス『Premium』
-
サービス範囲により4段階に分けられたAPMサービスのメニュー体系の一つであり、『Premium』はもっともサービス範囲が広いレベル。
- (注5)LCMサービス
- ITインフラのライフサイクル全体にわたり最適化を支援するサービス。
- (注6)SaaSサービス
- ハードウェア・ソフトウェアなどの資産を持たず、ネットワークを利用してアプリケーション機能を提供するサービス。
アプリケーション運用・保守の最適化をサポートする「APMサービス」
ITILベースの高品質な運用・保守サービスに加え、お客様のIT投資最適化に向け、ポートフォリオ分析を活用し、IT運用の向上を支援する「APMサービス」。戦略立案にも有効な、充実したサービス内容をご紹介。
[2008年10月1日 公開]
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