第5回 情報サービス業
人事労務コンサルタント/社会保険労務士 金子賢一
全6回シリーズで業種別に労務管理のポイントについて解説いたします。今回は第5回、情報サービス業の労務管理です。
わが国の経済の拡大に伴い、情報サービス業は堅調に成長していますが、人材の育成や高度な技術を有する人材の確保が成長戦略における最大の課題となっています。
ここでは情報サービス業の特殊性を考慮し、過重労働や年俸制を中心に重要項目をまとめてみました。
1. 労働時間
(1) 過重労働
情報サービス業というと、システムエンジニアに代表されるように概して労働時間が長いという印象を受けます。実際、請け負った仕事を納期に間に合わせるため職場に寝袋を持ち込み、何日も泊りがけで仕事をするということも珍しくありません。エンジニアは若年者が多いため、使用者も労働者も過信があるようですが、過重労働による健康障害には十分に留意する必要があります。
過重労働による脳・心疾患については、発症前1カ月から6カ月にわたって1カ月当たり、おおよそ45時間を超える時間外労働が認められない場合には、業務と発症との関連性が弱いと判断されますが、おおよそ45時間を超える時間外労働が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まるものと判断されます。発症前1カ月間におおよそ100時間を超える時間外労働が認められる場合、又は発症前2カ月から6カ月にわたって1カ月当たり、おおよそ80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと判断されます。
最近では、うつ病やパニック障害などの業務上の精神障害を発症する労働者が後を立ちません。精神障害についても過重な責任の発生や職場環境の変化といったストレスだけでなく、過重労働がその一因になっています。
時間外労働は原則として、労働基準法の規定による延長時間の限度の範囲内でおこわなければなりません。繁忙期などは労使協定の特約条項によりこの基準を超えて労働させることもできますが、業務分担の適正化や業務の外注化により過重労働にならないように十分に配慮することが必要です。

(2) 裁量労働制
裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分などを大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として定められた業務のなかから、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。換言すると、労働時間ではなく、仕事の成果で賃金が決まる働き方といえます。情報処理システムの分析または設計の業務やシステムコンサルタントの業務は、専門型裁量労働制の対象業務になります。専門業務型裁量労働制を導入するには、一定の事項について労使協定で定めたうえで、「専門業務型裁量労働制に関する協定届」を所轄労働基準監督署へ提出することが必要です。しかし、ベンチャー企業などでは、届出をしていないにもかかわらず、募集要項や就業規則に裁量労働制をうたって労働者を使用していることがあります。労働基準法に抵触する行為ですので速やかに是正する必要があります。
システム関連業務では裁量労働制の対象となるのは、前述の2種類の業務に限られますので、例えばプログラマーの業務は対象になりません。また、実際に当該対象業務に従事している労働者を対象にしていますので、その労働者に適用されている資格制度などの呼称で判断するものではありません。
裁量労働制のメリットは、仕事の成果に重視した働き方であるということですが、一方で過重労働を招きやすいことがデメリットとして指摘されています。メンバー個々の能力応じた仕事の割り当てやプロジェクト管理の徹底を図り、過重労働を防止しなければなりません。
- 第4回 運送業
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