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第3回 小売業・飲食業

人事労務コンサルタント/社会保険労務士 金子賢一


全6回シリーズで業種別に労務管理のポイントについて解説いたします。今回は第3回、小売業・飲食業の労務管理です。

小売業・飲食業は、パートタイマー等非正規社員の占める割合が極めて高く、非正規社員の労務管理は他の業種とは比較にならないほど重要です。最近は、非正規社員の業務が軽易・補助的、定型的なものから高度・複雑、専門的、管理的なものへ変容しており、非正規社員の積極的な活用が重要な課題になっています。


1. 労働時間管理

(1)1カ月単位の変形労働時間制

小売業・飲食業とも一般に店舗の営業時間が長く、また曜日や時間帯により著しい業務の繁閑が生じるため、固定的な勤務体制では対応することができません。そこで1カ月単位の変形労働時間制や1週間単位の非定型的変形労働時間制等により繁閑に応じた柔軟な勤務体制と採る必要があります。

1カ月単位の変形労働時間制とは、1カ月以内の変形期間を平均して1週40時間(特例事業場は1週44時間)を超えない範囲であれば、1日8時間、1週40時間(同前、以下、同じ。)という労働時間の規制を超えて労働させることができる制度です。(労働基準法第32条の2)業務の繁閑や特殊性に応じて労働時間を柔軟に配分することができます。

1カ月単位の変形労働時間制を導入するには、就業規則その他これに準ずるもの又は労使協定により次の要件(就業規則等の場合は、1~3、5、6、労使協定の場合は、2~5、7)を定める必要があります。常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合で就業規則を変更して変形労働時間制を導入する場合には、変更後の就業規則を、労使協定による場合は、これを所轄労働基準監督署長へ届け出なければなりません。

  1. 1ヵ月以内の一定期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えない定め
  2. 変形期間
  3. 変形期間の起算日
  4. 対象となる労働者の範囲
  5. 変形期間の各労働日の労働時間
  6. 変形期間の各労働日の始業・終業時刻
  7. 協定の有効期間

注 : 5、6 については業務の実態から毎月異なり、就業規則等に具体的に記載することが困難な場合には、毎月の勤務割による旨を定め、事前に各労働者に周知すれば足りる。

変形期間を1カ月とした場合、1週を平均して40時間以内となる変形期間の法定労働時間の総枠は、「法定労働時間×変形期間の歴日数÷7」で算定されます。具体的には31日の月では177.1時間、30日では171.4時間、28日では160.0時間となります。

変形労働時間制を採用していても次の時間は時間外労働となり、割増賃金を支払う必要があります。

  • 1日の時間外労働
    就業規則等で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
  • 1週の時間外労働
    就業規則等で1週40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間(イで時間外労働となる時間を除く)
  • 変形期間の時間外労働
    変形期間の法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(イ、ロで時間外労働となる時間を除く)

(2)1週間単位の非定型的変形労働時間制

日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難なものとされている小売業・旅館・料理店・飲食店(ただし、規模30人未満の事業場に限る)で、以下の要件を満たせば、1週間以内の範囲で1日の法定労働時間(8時間)を超える所定労働時間を設定することができます。(労働基準法第32条の5)これを1週間単位の非定型的変形労働時間制といいます。

  1. 労使が協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届出ること
  2. 1週間の所定労働時間は40時間以内、1日は10時間以内を限度とすること
  3. 1週間の各日の労働時間をその週の始まる前までに労働者に書面で通知すること
  4. 緊急やむを得ない事由が生じた場合には、すでに通知した労働時間を変更しようとする日の前日までに書面により労働者に通知すること
  5. 1週間の各日の労働時間を決めるに当たっては、労働者の意向を聞き、これを尊重するように努めること

小売業・旅館・料理店・飲食店の事業のうち、10人未満の事業場(特例事業場)の1週間の法定労働時間は、週44時間となっていますが、1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用する場合は、この特例は適用されず1週40時間以内としなければなりません。

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