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業種・業態 現状の課題と今後の取組
第12回 スーパーマーケットの現状と今後

中小企業診断士 石井 浩一


1. スーパーマーケット業界の現状

(1) スーパーマーケットの区分

平成16年業態分類の定義
区分 セルフ方式 取扱商品 売場面積 備考
I 総合スーパー        
  1 大型総合スーパー   3000平方メートル以上(都の特別区及び政令指定都市は6000平方メートル以上) 「総合スーパー」とは、産業分類「551百貨店、総合スーパー」に格付けされた事業所であり、衣、食、住にわたる各商品を小売りし、そのいずれも小売販売額の10%以上70%未満の範囲内にある事業所で、従業者が50人以上の事業者をいう。
2 中型総合スーパー 3000平方メートル未満(都の特別区及び政令指定都市は6000平方メートル未満)
II 専門スーパー        
  1衣料品スーパー 衣が70%以上 250平方メートル以上  
2 食料品スーパー 食が70%以上
3 住関連スーパー 住が70%以上
III その他スーパー     I総合スーパー、II専門スーパー及び商業統計産業分類上のコンビニエンスストア、ドラッグストア以外のセルフ店

経済産業省 商業統計調査

スーパーマーケットの明確な定義はありませんが、上記分類における「食料品スーパーマーケット」と「その他スーパー」に含まれる食料品主体の事業所がスーパーマーケットに該当するものとして考察します。

(2)業界を取巻く環境

スーパーマーケット業界に影響を与える主な法規制には、以下の様なものがあります。

1)まちづくり三法(中心市街地活性化法、大規模小売店舗立地法、改正都市計画法)

中心市街地の空洞化に歯止めをかけるために、街の機能を郊外から中心市街地に集中させるコンパクトシティの考えに基づいて、まちづくり三法が改正され、郊外立地の大型店の出店が規制されることになりました。これにより、中心市街地での競争が激化することが予想されます。
(改正中心市街地活性化法の施行は平成18年8月、改正都市計画法の施行は平成19年11月、大規模小売店舗の指針改定平成19年2月)

2)食品衛生法

平成18年5月から、残留農薬等に関するポジティブリスト制度(残留基準が定められました)による規制が適用されました。農産物、畜水産物以外の加工食品も全て規制の対象となり、原則として、残留基準(一律基準を含みます)を超える農薬が食品から検出された場合、その食品の出荷・販売等が禁止されました。

3)酒税法

平成18年9月から酒類販売が完全自由化されました。スーパーマーケット業界にとっては、消費者ニーズに対応した品揃え強化による売上への寄与が期待できます。

4)改正容器包装リサイクル法

平成19年4月から、レジ袋の排出抑制をはじめとする容器包装廃棄物の3R(リデュース・リユース・リサイクル)への取組促進を目的に改正容器包装リサイクル法が施行されました。

具体的には、スーパーなどの小売業者に対し、国が定める判断基準に基づいた

  1. 容器包装の使用の合理化のための目標の設定
  2. レジ袋の有料化
  3. マイバッグの配布

等、による排出抑制促進への取組が求められています。また、容器包装を年間50トン以上用いる多量利用事業者には、毎年の取組状況や成果等について国への報告が義務付けられています。

5)農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)

一般消費者の商品選択に役立てるため、すべての飲食料品を対象に、品質に関する表示を製造業者等に義務づけています。
具体的には、

  1. 生鮮食品では、「名称」及び「原産地」、
  2. 加工食品では「名称」、「原材料名」、「内容量」、「消費期限又は賞味期限」、「保存方法」、「製造業者の氏名又は名称及び住所」

等、の表示を義務化しています。

6)個人情報保護法

平成17年4月から、個人情報を取扱う事業者に対して

  1. 個人情報を安全に管理する義務
  2. 個人情報の利用目的を特定し、当該利用目的に限定して利用する義務

が課されました。
それに先駆け、(社)全国スーパーマーケット協会、(社)日本セルフ・サービス協会、日本スーパーマーケット協会が「個人情報の保護に関する法律についてのスーパーマーケット業界ガイドライン」を作成しており、全社的なセキュリティ対策への対応が求められています。

7)内部統制の構築・整備

金融商品取引法により上場企業及びその連結子会社では、平成20年4月1日以降に開始する事業年度(決算期ベースでは平成21年3月期)から「内部統制」が適用されます。

(3)技術革新

2007年4月23日、セブン&アイ・ホールディングスではセブン-イレブンの店舗で独自の電子マネー「nanaco」(ナナコ)の取り扱いを始め、同年秋にイトーヨーカドーでも取り扱いを開始する予定です。また、イオンではSuicaの導入に続き、独自の非接触型電子マネーサービス「WAON」(ワオン)を2007年4月27日に導入しました。これにより、2大流通グループは新たなマーケティングの手段を手に入れ、顧客にとっては決済手段の選択肢が増え、時間短縮・容易さという利便性の向上が図れることになります。
更に、ICタグの実用化実験やセルフチェックレジの導入など店舗形態の多様化や業務プロセスの変革に繋がる技術開発が進んでいます。
これらの技術革新は、今後、中小のスーパーマーケットへも影響を与える可能性があります。

(4)市場動向

スーパーマーケット市場全体の大きな成長は期待しにくい状況にあります。なぜなら、平成18年10月1日現在の日本における総人口は1億2,777万人で、前年と比べほぼ横ばいとなっていますが、長期的に人口が減少すると予測されるからです。しかし、2020年までは全都道府県で老齢人口(65歳以上人口)が増加すると予測されるため、高齢者市場の拡大は期待できます。

日本の人口推移(2020年、2035年は推計値)
年次 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成32年 平成47年
人口(千人) 127,486 127,694 127,787 127,768 127,770 122,735 110,679
老齢人口
(65歳以上)の割合
20.2% 29.2% 33.7%

国立社会保障・人口問題研究所(平成19年5月推計)から筆者加工

事業所数では、「総合スーパー」、「専門スーパー」、「その他スーパー」の合計数が平成9年の154,818事業所をピークに平成16年には94,106事業所に減少しています。その主な要因としては、売場面積250平方メートル未満のその他スーパーが64,000事業所減少した点が大きいです。

事業所数
業態別 平成3年 平成6年 平成9年 平成11年 平成14年 平成16年
1.総合スーパー 1,683 1,804 1,888 1,670 1,668 1,675
 (1)大型総合スーパー 1,152 1,360 1,546 1,461 1,499 1,496
 (2)中型総合スーパー 531 444 342 209 169 179
2.専門スーパー 20,827 25,171 32,209 33,381 37,035 36,220
 (1)衣料品スーパー 2,237 3,111 4,549 4,780 6,324 5,991
 (2)食料品スーパー 14,761 16,096 17,623 18,707 17,691 18,485
 (3)住関連スーパー 3,829 5,964 10,037 9,894 13,020 11,744
3.その他のスーパー 72,027 84,874 120,721 77,667 65,011 56,211
 うち各種商品取扱店 384 468 625 1,020 782 782
94,537 111,849 154,818 112,718 103,714 94,106

(注)平成14年調査において業態定義の見直しを行っており、平成11年は平成14年と同定義で再集計した数値である。
出典:経済産業省 商業統計調査 業態別統計編(小売業)より筆者加工

また、年間販売額では、「総合スーパー」、「専門スーパー」、「その他スーパー」全体で平成9年の40兆3,800億円から平成16年の37兆9,890億円へと減少傾向にあります。この間、「専門スーパー」の年間販売額は平成9年の20兆4,400億円から平成16年には24兆1,020億円へと増加傾向にあります。

「食料品スーパー」の年間販売額に限ってみますと、14兆7,680億円から17兆470億円へ増加しています。しかし、「その他スーパー」に含まれている「食料品を主体に取扱っているスーパー」の売上高を推定し加算すると、食料品スーパー全体の年間販売額は横ばいから微減傾向にあります。「その他スーパー」の売場面積の小さな事業所が減少し、その分の消費を「食料品スーパー」が吸収したと類推できます。

その他スーパー(食料品のみ)の仮定の割合 食品スーパーとその他スーパー(食料品のみ)の推定年間販売額
(単位:百万円)
平成3年 平成6年 平成9年 平成11年 平成14年 平成16年
売上の65%が食料品スーパーとした場合 16,006,075 18,620,838 21,258,835 21,663,051 20,123,361 20,609,372
売上の75%が食料品スーパーとした場合 16,730,554 19,455,172 22,257,405 22,419,213 20,772,530 21,157,430

(注)平成14年調査において業態定義の見直しを行っており、平成11年は平成14年と同定義で再集計した数値である。
出典:経済産業省 商業統計調査 業態別統計編(小売業)より筆者加工

  年間販売額 (単位:百万円)
業態別 平成3年 平成6年 平成9年 平成11年 平成14年 平成16年
1.総合スーパー 8,495,701 9,335,933 9,956,689 8,849,658 8,515,119 8,406,380
 (1)大型総合スーパー 7,033,787 8,069,330 8,986,997 8,264,234 8,061,796 7,949,605
 (2)中型総合スーパー 1,461,915 1,266,603 969,692 585,424 453,323 456,775
2.専門スーパー 14,064,488 17,134,894 20,439,962 23,121,207 23,630,467 24,101,939
 (1)衣料品スーパー 786,778 891,394 1,153,739 1,270,681 1,583,349 1,544,556
 (2)食料品スーパー 11,296,961 13,197,669 14,768,134 16,747,995 15,903,759 17,046,994
 (3)住関連スーパー 1,980,749 3,045,831 4,518,089 5,102,531 6,143,359 5,510,389
3.その他のスーパー 7,244,791 8,343,337 9,985,694 7,561,624 6,491,695 5,480,581
 うち各種商品取扱店 119,323 160,020 145,175 258,665 191,328 227,569
29,804,980 34,814,164 40,382,345 39,532,489 38,637,281 37,988,900

(注)平成14年調査において業態定義の見直しを行っており、平成11年は平成14年と同定義で再集計した数値である。
出典:経済産業省 商業統計調査 業態別統計編(小売業)より筆者加工

(5)顧客の購買意識

平成16年11月に東京都生活文化局が「食品の購買意識に関する世論調査」(有効回収標本数2,107標本70.2%)を実施しており、主な調査結果は次の通りです。

生鮮食料品購入先の理由として

  1. 生鮮食料品の品質や鮮度が良いこと(68.1%)
  2. 自宅から近いことや勤務先からの帰り道にあること(45.8%)
  3. 食料品の品揃えが良いこと(42.8%)
  4. 値段が安いこと(42.0%)

をあげています。

生鮮食品購入時に重視する項目としては

  1. 鮮度(77.8%)
  2. 価格(53.9%)
  3. 安全性(37.0%)

と続いています。

輸入された生鮮食品の安全性について「不安がある」という回答は79%を占め、40代から60代女性の9割前後が「不安がある」と回答しています。

上記世論調査から、購買動機・来店動機として「価格」よりも「食の安全・安心」に関する比重が大きいことが見てとれます。また、平成17年6月に「食育基本法」が成立しました。今後、大量の団塊の世代が定年退職となり少子高齢化が進展すると、「食を通した健康づくり」というテーマも購買行動に影響すると考えられます。

(6)競合

コンビニの生鮮食品強化、ドラッグストアの食品強化等、スーパーマーケットと他業態との競合も激化しています。また、都心への人口回帰に合わせターゲットを絞った生鮮食品中心の小型食料品スーパーマーケット等の実験的店舗も出店しています。
営業面では、夜間に買い物をする顧客のために営業時間延長や24時間営業を行うことで消費者のライフスタイルの変化に対応している店舗も増加しています。オーバーストア状態から、業種・業態を超えた顧客の奪い合いという状況となっています。

2.今後の課題

(1)顧客の囲い込みによる売上高向上

消費者にとって定率減税の廃止や社会保険料の負担増加はあるものの、個人消費には持ち直しの動きがみられます。しかし、個人消費が回復しても人口動態からみた市場成長性の余地は低いことは前述しました。客数の大きな伸びが期待できない状況下で売上高の拡大を図るためには、「既存顧客を競合店に流出させずにいかに自店に囲い込むか」という点がより重要となります。言い換えれば、来店頻度・買上点数の向上が課題となります。

(2)リスク・ロスの排除と経営の効率化

今後予想される主な収益圧迫要因として

  1. パートタイマー等短時間労働者に対する社会保険適用基準拡大
  2. 最低賃金の引き上げ
  3. 労働時間延長など労働需要増加による人件費負担増
  4. 環境対策のための新たな費用負担増
  5. 消費税の引上げに伴うシステム変更コストの発生

等、があげられます。
また、法規制や食の安全への対応等従業員の業務負荷増加も予想されます。景気の回復がありましても、新たなコスト増加懸念要因も多いです。そのため、利益拡大のためにはリスク・ロスの徹底した排除と経営の効率化による利益率向上が課題となります。

3.対策の方向性

競合店の新規出店、少子高齢化、法規制の制定、天候不順等は自社の売上に大きな影響を与えますが、それらの流れを自助努力で変えることは不可能です。自社内部を変革することで、外部の環境変化に適応し、他社との差別化を図っていくことが必要となります。

(1)POSの活用による買上点数の増加

顧客から選択される店舗になるには、店舗コンセプトを明確にし、顧客に支持される商品構成、商品陳列にする必要があります。売上・利益が向上するということは購買代理人として顧客から評価されたということです。そのためには、POSデータを徹底的に分析・活用する必要があります。

現在の状況は、「ものあまり」を背景に消費者のニーズは多様化しています。安ければ買うという顧客だけではなく、安くて品質の良い商品・安全な商品を求める顧客、高くても安全・安心な商品、こだわりの商品を求める顧客など顧客ニーズは多様化しています。また、来店客が集中する時間帯が地域によって異なるなど購買行動も多様化しています。多様化した顧客ニーズや購買行動に継続して適合していくためには、経験だけではなく客観的なデータ分析が必要です。

留意しなければいけないのは、POSデータの数値だけで機械的に判断してはいけないという点です。具体的には、死筋商品を排除する前に「なぜ、死筋商品になったのか」、「陳列には問題がなかったのか」、「POPには問題はなかったのか」等仮説を立て検証する必要があります。商品自体に問題があったのかどうかを明確にするためです。

また、売場責任者は、「時間帯別にパックの量を変えた場合や陳列方法・場所を変えた場合の売上貢献度はどうか」、「低価格帯の商品と高価格帯商品の売れ行きはどうか」、「中食需要の動向はどうか」、「POPの効果はどうか」等、常に仮説・実行・POSデータによる検証・改善を繰り返すことが必要です。

これにより顧客ニーズに適合した商品を適当な量で適当な時間帯に提供できる売場構築が期待できます。
少子高齢化を迎えるにあたり、徒歩商圏内の高齢者ニーズをいかに捉えるかが今後生き残るためのポイントになります。そのためにPOSの活用を見直したいところです。
【参考】POSシステム「GlobalSTORE™」

(2)ポイントカードとFSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)の導入

顧客管理のために発行した顧客カードを、マーケティングに効果的に活用することで来店動機を創出し、顧客の固定化を図ります。

具体的には、顧客属性(名前、性別、生年月日、住所、電話番号、E-mailアドレス等)をポイントカード作成時に収集し、顧客の購買時点でPOS情報と連動させ、購入日時・曜日、購入商品、購入価格情報のデータベースを構築します。
購買金額や購買頻度に応じてポイントを付与し、その残高に対して商品割引サービスやキャッシュバック等特典の提供を行うシステムです。

これにより優良顧客への利益還元と優良顧客ニーズ把握が可能になり、顧客満足の向上と来店時の欠品防止が期待できます。
【参考】CRM/FSPソリューション

(3)内部統制とロスプリベンション

競争激化により売上・粗利益の拡大が厳しい環境下では、業務フローを見直し、リスク・ロスを排除・予防することで利益率の向上を図ることが効果的です。

具体的には、万引き・社内不正・伝票ミス・業務の無駄によるロス、従業員・顧客による事故等の発生を排除することで利益の逸失を防止し、利益率の向上を図ります。そのためには、業務フローを可視化(見える化)し、業務の有効性と効率性を確保しなければなりません。

具体的には、利益を生まない業務や無駄な業務は見直し、不正やミスが起こらないようなチェック機能の働く業務プロセスを構築します。業務プロセスの構築に当たっては、業務記述・業務フローチャートの作成・部門間の連絡等の作業負担が大きくなるので、ITの効果的な活用が必要となります。

(4)従業員教育

店舗の雰囲気は従業員や企業文化が作り出します。サービス業は、最後のチェック時に顧客に不快な印象を与えましたら、それまで提供した素晴らしい時間を帳消しにしてしまいます。小売業も同じです。他店よりいくら低価格で販売しても、接客や店舗の雰囲気を不快に感じた優良顧客は戻って来ません。顧客の固定客化を図るためには、従業員の接客技術の向上が欠かせません。

著者プロフィール

石井 浩一
中小企業診断士
有限会社マイティータンク 代表取締役
合同会社城東ビジネス総研 主任研究員
国際公認投資アナリスト(CIIA)・日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)
立教大学経済学部卒業後、日系・外資系証券会社を経て独立。マーケティング、IPO、M&A、経営革新、ビジネスプラン立案支援等のコンサルティング、企業研修講師として活躍。

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