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業種・業態 現状の課題と今後の取組
第11回 眼鏡店の現状と今後

中小企業診断士 阿部 将美


1. 眼鏡店の現況

1.1 眼鏡の消費支出

日本人の二人に一人は視力の矯正をしているといわれています。眼鏡小売市場は安泰のように見えますが、矯正手段が眼鏡しかなかった時代とは違って、コンタクトレンズ(以下CL)が登場し、さらには手術で視力を回復しようとするレーシックが現われています。

このように、眼鏡小売市場にとって構造は大きく変化しています。1世帯あたりの眼鏡年間支出額は、平成18年6月に発表された総務省「家計調査年報(平成17年)全世帯・勤労者世帯」では次のようになっています(平成12年調査からコンタクトレンズが眼鏡から分離されています)。

図表1 一世帯あたりの眼鏡年間支出額

同年報で一世帯あたりの眼鏡(以下メガネ)に対する平均支出金額を購入月別にみますと、1年のうちで8、9月の支出金額が最も多いことがわかります(平成17年)。メガネを新入学・就職などを契機に新調するといった予想を覆していますが、メガネが季節商品の性格をもつことがわかります(図表2)。

図表2 月別メガネ支出

世帯主の年齢階級別のメガネ支出をみると、若年世帯と比べて中高年世帯の購入金額が大きいです(図表3)。40歳代以上の世帯では、20歳代、30歳代と比べて、2倍以上となっています。これは高価格の中高年向け遠近両用メガネなどがメガネ需要の中心になっていることを示しているようであります。

コンタクトレンズでは、年齢が高まるにつれて購入が減少し、60歳代以上の世帯では医療用を除いてほとんどなくなります。

図表3 世帯主の年齢階層別メガネ支出

1.2 メガネ市場の現状

メガネは身の回り品でありながら生活必需品でもあるといえます。そのために個人消費が低迷したバブル崩壊後の時期においても、メガネの売上はそれほど減っていません。新規の購入とともに、視力低下やメガネ破損等による買い替え需要などがあり市場としては安定しています。
しかし、メガネ小売市場はこの安定を狙う他業種からの新規参入や低価格均一ショップの急増などによって市場環境が大きく変わりました。

メガネ店の現況を「平成16年商業統計調査 業態別統計編」からみますと、平成16年は「時計・眼鏡・光学機械小売業」全体でみると事業所数21,405で平成11年と比べると△1.1%であり、小売業全体の△12.0%に比べると減少率はかなり低く、従業者数でも1.0%増、年間販売額は△5.1%、売場面積で7.8%増でした。

図表4 眼鏡小売業の現状

  事業所数 従業者数(人)
平成11年 平成16年 伸率 平成11年 平成16年 伸率
小売業計 1,406,881 1,238,049 -12.0% 8,028,558 7,762,301 -3.3%
時計・眼鏡・光学機械小売業 21,648 21,405 -1.1% 73,399 74,134 1.0%
  年間商品販売額(百万円) 売場面積(平米)
平成11年 平成16年 伸率 平成11年 平成16年 伸率
小売業計 143,832,551 133,278,631 -7.3% 133,869,296 144,128,517 7.7%
時計・眼鏡・光学機械小売業 1,066,442 1,011,996 -5.1% 1,413,110 1,523,941 7.8%

事業所数がやや減少しているのに対して、従業者数はやや増、売場面積は増となっています。メガネ小売業も他の小売業界と同様に店舗の集約化と大型化、さらにはチェーン店の店舗が増加したものとみることができます。

(注)日本標準産業分類では「主として時計,眼鏡及び光学機械並びに附属品を小売する事業所」をもって小分類「眼鏡・時計・光学機械小売業」としています。つまり、これに準拠する商業統計ではメガネ店単独での把握ができないため、ここでは「眼鏡・時計・光学機械小売業」の計数を便宜上メガネ小売店とみなしています。

2 メガネ小売業界の構造

視力矯正分野ではメガネやCLの利用が一般的であり、とくにメガネが多く利用されています。しかしながら近年、国内のCL売上高はメガネ市場を侵食して拡大傾向にあります。

ディスポーザブル(使い捨て)CL市場はボシュロム、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどの外資系が独占していましたが、平成9年にシード、平成14年にメニコンによるディスポーザブルCLの販売が本格化しました。そのためにメガネ売上高が年々減少しているのに対して、CL売上高は続伸しています。

2.1 診察処方が不要なメガネ

CLは購入に際して医師の診察と処方が必要で、屈折異常を矯正する医療用具として装用時には衛生管理が肝要とされます。そのため、購入は医師が常駐する専門クリニック、大学病院、眼科医院、眼鏡併設店舗などに限定されています。

一方、メガネは医師の診察・処方の必要がありません。検眼や調整・加工はメガネ店が行います。メガネ加工・販売についての国家資格はありません。しかし、平成13年度から業界内で眼鏡販売に携わる技術者を対象に「認定眼鏡士制度」をつくっています。

2.2 「低価格均一ショップ」の登場と新業態店

「スリープライスショップ」「ツープライスショップ」といった低価格均一ショップが出現したのが2001年2月(「Zoff」)。大手メガネ専門店チェーンはこれに敏感に反応し、同様の低価格均一ショップを業態開発し、出店攻勢を仕掛けました。しかし乱戦模様となり、その結果、各社が競合店との差別化を狙った新業態店舗を開発し、新たな業態店舗の出店を行いました。

2002年に公正取引委員会から「価格に対するガイドライン」が策定され、大手メガネ専門店チェーンでは、二重価格・レンズ無料の訴求ができなくなり、より厳しい状態に陥りました。大手チェーン店では、業績悪化の店舗のスクラップ、大型ショッピングセンターへの出店など戦略の再構築が目立ちます。

いまでは次のように、低価格均一ショップも出店当初の業態から大きく変化しています。

  1. 低価格だけではなく、ワンランク上の価格帯を追加するなど、プライスラインが広がっている
  2. ブランド品やシニア層に向けたチタン、高機能の加価値レンズオプションを勧めるなど客単価アップを狙う
  3. レンズのみ交換ができると宣伝、複数購買がお得とうたう
  4. 集客のために関連商品(眼鏡ケース、グラスコード等)、周辺商品(傘の販売、アクセサリー等)を導入している

3 メガネ小売業界の課題

3.1 ストアからショップへ

業種としてのメガネ店(ストア)から、業態としてのメガネショップへの進化とともに、客単価の引上げ、販売員の商品知識の向上・技術力の強化などが課題となります。

  1. 「自店顧客のリピート率向上のための販促強化」の取り組みが必要
  2. シニア層はストアとの競争となり、やや高機能な商品を揃えた「シニア向け商品魅力の向上」「遠近両用眼鏡の販売強化」が必要
  3. 「客単価の引き上げ」を実現するための顧客満足度の充足が絶対条件
    店員の眼鏡専門家としてのさらなる「商品知識の向上」・「技術力の強化」が必要、シニア層を中心顧客とする傾向の強い一般の眼鏡店との競争がますます激化

3.2 オーバーストアで競争環境が激化

全国的に大型ショッピングセンターのオープンが続いています。全小売市場に占めるショッピングセンターでの売上高が年々増加し、2004年には約20%にまで達しています。この状況の中で、メガネ店が有力ショッピングセンターに出店していくためには、魅力あるメガネ店の業態開発の必要性が高くなります。

4 今後の取り組みの方向

平成18年10月1日現在推計人口(総務省統計局)の「人口ピラミッド」によると、団塊の世代と団塊ジュニア世代が飛び抜けています。

団塊の世代である55歳~60歳(54歳180万人)。その次の世代である31歳~34歳(30歳180万人)が順次メガネ必需者として大きなターゲットになっていきます。日本人のメガネ装用人口は全人口の5割から6割といわれており、そのメガネ人口の約半分が遠近両用世代となります。

日本の人口が減少していくわけですから、将来的に市場規模を維持又は上昇させるためには購買頻度の増加あるいは単価の向上しか方策がありません。しかしながら、一般的に購買サイクルが短縮されると単価が上がりにくいという傾向があります。購買頻度と単価の向上をともに上昇させていくことは非常に難しいです。

4.1 差別化-業態

若者をねらうツープライス・スリープライスショップ、シニア層をねらうコンセプトショップ、大商圏で競合他店と比べて圧倒的に広い売場面積(100坪以上)を有し、全てが揃うという大型専門店などがあります。
「認定眼鏡士」が居るメガネショップを目指し、通信教育などによって資格取得に挑戦できる制度をつくるとともに、顧客との応対などサービスレベルの向上を図ります。

4.2 差別化-ターゲットを明確に

消費者の購買意欲を刺激するファッション性や魅力的なデザインなどが差別化のポイントです。大型専門店でなければ、ターゲットを明確にしたフレームの商品構成、内装・看板を含めた店舗づくりで違いを打ち出します。大手チェーンでは、累進屈折レンズなど高付加価値商品を売り物にして高齢者層を囲い込もうとしています。

ターゲットを明確にすると共に、「店舗コンセプト」を確立し、消費者から見て他店との違いがはっきりとわかるような店づくり、品揃え、サービスを展開することが成功のポイントです。

2、3年にいちどであろうとも、1年に2~3回であろうとも、顧客の購買をいかにサポートしていくのか、そのために顧客との長期的で良好な関係を築いていくことが重要です。
詳細な顧客データベースを元に、商品の売買から保守サービス、問い合わせやクレームへの対応など、個々の顧客とのすべてのやり取りを一貫して情報管理することにより実現しようとするのがCRM(Customer Relationship Management)。顧客のニーズにきめ細かく対応することで、顧客の利便性と満足度を高め、顧客を固定客として囲い込んで長期的にみた収益率の極大化をはかることです。

【参考】http://glovia.fujitsu.com/crm/jp/concept/

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