業種・業態 現状の課題と今後の取組
第9回 食品・飲料卸売業の現状と今後
中小企業診断士 西場 友彦
1. 食品・飲料卸売業の現状と課題
(1)食品・飲料卸売業の現状
1) 食料・飲料卸売業はどのようなものがあるのか
商業統計の産業分類によりますと、食品・飲料卸売業は、大きく農畜産物・水産物卸売業と食料・飲料卸売業に分けられます。農畜産物・水産物卸売業とは、青果、食肉、魚介の卸店です。対して食料・飲料卸売業とは、砂糖、味噌・しょうゆ、酒類、乾物、缶詰・瓶詰食品、菓子・パン類、飲料、茶類などの卸売業が挙げられます。今回は食料・飲料卸売業の動向と今後の取り組みについて説明します。
2) 市場規模
平成14年商業統計表 流通経路別編(卸売業)によりますと、食料・飲料卸売業の平成14年の年間販売額は約43.6兆円、事業所数は33,920店となっています。(図表[1])平成9年と比較する年間販売額は95.2%と約5%のダウン、事業所数は98.3%と約2%のダウンであり、年間販売額、事業所数ともに縮小傾向がうかがえ、厳しい経営環境にあると言えます。
図表[1]
食料・飲料卸売業 年間販売額 事業所数
出典:平成14年商業統計表 流通経路別編(卸売業)
経済産業省経済産業政策局調査統計部編


3) 食品・飲料卸売業の「顧客」の動向
食品・飲料卸売業の顧客である食品・飲料小売業について見てみると、スーパー・ショッピングセンター、ディスカウントストア、コンビニエンスストアなどの台頭に伴い、商店街などの既存の小売店が減少し続けています。今後も既存の小売店の減少は続くものと予想されますが、従業者規模別の食品小売業について見てみると、10人未満の従業者規模の食品小売業は事業所数の割合は81.0%に対して、商品販売額の割合は25.6%を占めています。20人未満の従業者規模の場合は、事業所数の割合が92.6%に対して、商品販売額の割合は45.1%を占めています。(図表[2])
図表[2]
食品小売業 従業者規模別 事業所数 年間商品販売額 割合
(平成16年商業統計表 産業編 経済産業省経済産業政策局調査統計部編より作成。
注:この食品小売業は各種食料品小売業、酒類小売業、菓子パン小売業に分類されているものを合計したものであり、コンビニエンスストアは含まれません)

4) 食品・飲料卸売業の現状
各食品・飲料卸売業の競合状況を把握するため、平成14年の食料・飲料卸売業の従業者規模別の事業所数、年間商品販売額を図表[3]で見てみます。20人未満の従業者規模の食品・飲料卸売業の事業所数の割合は81.6%と8割を超え、対して20人未満の年間商品販売額の割合は33.6%を占めています。100人以上の大規模食品卸売業の事業所数の割合はわずか1.1%でありながら、商品年間販売額の割合は21.3%を占めています。従業者規模別の事業所数と年間商品販売額の割合はトレードオフの関係にあり、小さい規模の卸売業の厳しさがうかがえます。しかしながら、30人未満の従業者規模の年間商品販売額を見ると、45.4%を占めており、一定の売上を確保していると言えます。
図表[3]
食料・飲料卸売業 従業者規模別 事業所数、年間商品販売額
出典:平成14年商業統計表 流通経路別編(卸売業)
経済産業省経済産業政策局調査統計部

(2)食品・飲料卸売業の課題
1) 小売業の急速な業態変化に対する品揃え、物流機能強化
1980年代後半より、一部の小売業とメーカーが直接取引するようになっていきました。この背景には、大手食品スーパーやコンビニエンスストアなどの業態の出店が進み、販売力を増していったことが挙げられます。大手食品スーパーは配送センターをつくり、ロット数がまとまり一括で納品を引き受けることによって仕入価格を引き下げるようにメーカーに要求しています。いわゆる「卸の中抜き」です。この動きに対して、配送センターから各店への配送機能を担うためにメーカー系販社や物流会社などの異業種が参入しています。食品・飲料卸売業にとって、大手食品スーパーチェーンと取引するためには、メーカーから低コストで調達できる力を持ち、チェーン店が望む品揃えやチェーン店独自の配送より優れた物流機能をもつことができるかどうかが課題といえます。
2) 情報化の進展に伴う情報設備投資への対応
受発注業務の軽減のため、EDIの導入等のコンピュータ化が進むことで、情報設備への投資が増加しました。情報投資の負担が大きく情報化に対応できていない中小の食品・飲料卸売業も少なくありません。流通の中間に位置する卸売業として、小売店とメーカーに対して必要な情報を発信していけるかどうかが課題といえます。
3) 業績不振の中小小売店への支援強化
食品・飲料卸売業にとっての顧客である商店街などの中小小売店の経営が業績不振で減少し続けていることは、中小の食品・飲料卸売業の経営に大きな影響を与えているため、中小小売店への支援強化を積極的に行っていき、中小小売店の業績を向上させることができるかどうかが、中小の食品・飲料卸売業の業績回復・生き残りへの課題と言えます。
2. 今後の対応策
スーパー、コンビニエンス、ディスカウントストアなど新しい業態が台頭することにより、流通が再編し、大手小売チェーンの発言力が増していきました。大手小売チェーンと取引するためには、前述通り、大手小売チェーン店が望む品揃えや、より優れたITシステム・物流機能をもち、メーカーから低コストで調達できるバイイングパワーを持たなければなりません。 したがって、大手小売チェーンと取引を望む大規模卸店はフルライン化、総合卸化を目指し、大手小売チェーンと対等に取引できる力をつけるため、大型化しています。
今回は大手小売チェーンと取引ができない中小の食品・飲料卸売業の生き残り策、対応策を考えます。
(1)地域密着型経営~ターゲットをリージョナルスーパー、地域有力店に絞る~
食品・飲料卸売業の顧客である食品小売業の動向や、食料飲料卸売業の従業者規模別年間商品販売額から今後の対策を考えます。前述の通り、食品・飲料卸売業の顧客である食品・飲料小売業は、商店街などの既存の小売店が減少し続けています。今後も既存の小売店の減少は続くものと予想されますが、20人未満の従業者規模の食品小売業の場合は、事業所数の割合が92.6%に対して、商品販売額の割合は45.1%を占めており、全体の半分近くの売上を占めています。大手小売チェーンと取引が困難である中小の食品・飲料卸売業としてはリージョナルスーパー、有力小売店にターゲットを絞ることで活路を見出すことが可能であると考えられます。メーカーと直接取引が不可能であり、かつ大規模卸店のサポートが不十分なリージョナルスーパーをターゲットにするのです。現に20人未満の従業者規模の食品・飲料卸売業の年間商品販売額の割合は33.6%、30人未満の場合は45.4%を占めており、中小規模の食品・飲料卸売業でありながら、一定の売上を確保している卸店があることがうかがえます。
(2)PB商品開発
中小の食品・飲料卸売業にとって、ナショナルブランドに関しては全国卸、大規模卸などのバイイングパワーと比べて価格競争力でどうしても劣ってしまいます。したがって、中小の食品・飲料卸売業は独自のPB商品を開発することで、利益を確保していくことが必要です。ターゲットとして絞りたいリージョナルスーパーや有力小売店にとって、大手小売チェーンは競合店になります。そのため、大手小売チェーンで扱っていないPB商品を開発することはターゲットとするリージョナルスーパー、有力小売店の繁栄にもつながります。
(3)小売りの囲い込み、組織化
大規模卸店が特定の小売を囲い込みすることは、グループに入らない取引先との関係悪化が懸念されるため、容易ではありません。その点、中小の食品・飲料卸売業は有力小売店を組織化して小売の囲い込みをしやすい環境であると言えます。有力小売店の発展こそが中小卸売業の発展につながることを理解した上で経営していくことが大切です。有力な小売店を組織化することにより、販売量の拡大、それに伴いバイイングパワーも強化することができます。
また、小売業に進出することは既存の顧客と競合する可能性もありますが、繁盛店の成功ノウハウを獲得でき、既存顧客へ売れ筋商品、売場提案、効果的なプロモーションなどの情報を発信できるなど、有力小売店囲い込みのモデル店としての機能を果たすことが期待できます。
(4)カテゴリーマネジメントの充実
カテゴリーマネジメントとは小売業、メーカー、卸売業の供給側が、消費者視点に立ち小売業の店舗イメージと競争差別化を推進し最適化を目指すものです。カテゴリーマネジメントに積極的に参画し、小売業からのパートナーとしての関係を構築する必要があります。
(5)リテールサポートの充実
食品・飲料卸売業の役割とは、単に受注して商品を届けることだけではありません。中小の食品・飲料卸売業にとっては、中小小売店の売上回復の支援こそが自らの生き残りの活路といえます。そのため、売れ筋情報発信、販促プロモーション支援、IT化支援などを実施することによって、小売店を支援するものです。売り場における適切な品揃え、売り場配置等の提案が中心となります。
【ポイント】
地域密着型の経営を目指して、ターゲットはリージョナルスーパー・地域有力店に絞ることができるか。- 大規模卸店にない独自商品、PB商品開発を積極的に進めることで、利益を確保した経営を実現できるか。
- 小売業の囲い込み、組織化が実現できるか。
- カテゴリーマネジメントによる小売業とパートナーの関係を構築できるか。
- リテールサポートにより、中小小売店を活性化できるか。
上記のポイントはあくまでも生き残りのための方向性であり、それらのすべてが個々の卸売業にとって必要であるとは言えません。
中小食品・飲料卸売業にとっては、大規模卸売業と違い経営資源が限られています。大切なことは、自社を取り巻く環境に考慮しながら、自社の強みを活かした分野に対して、集中的に経営資源を投入することができるどうかが成功へのKEYとなるでしょう。
(参考文献)
平成14年商業統計表 流通経路別編(卸売業)経済産業省経済産業政策局調査統計部
平成16年商業統計表 産業編 経済産業省経済産業政策局調査統計部編
著者プロフィール
- 西場 友彦(にしば ともひこ)
-
中小企業診断士
中小企業診断士 社団法人中小企業診断協会正会員
LLC城東ビジネス総研主任研究員
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