業種・業態 現状の課題と今後の取組
第8回 冠婚葬祭業
中小企業診断士 山下 義
1. 冠婚葬祭業の現状
冠婚葬祭業は、葬儀社、結婚式場とその周辺業から構成されており、ここでは葬儀社、結婚式場を中心に述べます。
(注)周辺業:生花、造花、ギフト、写真、貸衣装等の業界
1)市場の現状
<1> 葬儀
現代は高齢者社会といわれ、死亡者数は増加すると予想されています。
人口動態統計(厚生労働省)によると、平成9年以降90万人台、平成15年以降100万人台と死亡者数は増加しています。さらに、国立社会保障・人口問題研究所の推定では、死亡者数は2020年149万人、2030年165万人に達します。このように、葬儀業及び葬儀関連ビジネスは今後とも安定した市場と考えられます。このため、葬儀業は、特別な資格や許可が不必要なこともあり、多くの異業種からの参入があります。具体的には、農協、生協、ホテル、結婚式場などが葬儀業に進出しています。「平成17年特定サービス産業実態調査(経済産業省)」によると、事業所数を除いて売上等すべての数値が増加し、業界は拡大しています。事業所の減少は、9人以下の事業所が減り、10人以上の事業所が増加しております。これは、個人事業から大規模な組織へ業界主体が移行していることを表しています。
図表1 死亡者数の推移

出典:人口動態統計(厚生労働省)
図表2 葬儀業の推移

出典:平成17年特定サービス産業実態調査(経済産業省)
図表3 経営組織別・資本金別事業所数の推移

出典:平成17年特定サービス産業実態調査(経済産業省)
現在の葬儀も、消費者ニーズの多様化がおこり、個性のある葬儀を希望される故人や遺族の方が多くなってきています。その結果、家族葬、友人葬、ホテル葬、オリジナル葬(故人の意思に従った葬儀)等の葬儀が行われるようになりました。
また、平均葬儀費用(平成17年特定サービス産業実態調査:東京都)は150万円(2002年(平成14年))から137万(2005年(平成17年))へ低下しております。これは、葬儀の簡素化と葬儀業者の増加による競争の激化の結果と思われます。
<2> 結婚
結婚ビジネスは、結婚適齢世代の減少、晩婚化等の理由により、市場規模は縮小していると言われています。そこで、データから市場を検討してみます。人口動態統計(厚生労働省)から結婚数の推移を見ると、昭和45年100万件を越していたのが、平成15年には74万件と約28%と減少しています。近年では、80万件台から70万件台へ緩やかに低下しています。そのため、市場規模は確実に減少していると言えます。
図表4 結婚数の推移
| 昭和 45年 |
50年 | 55年 | 60年 | 平成 2年 |
7年 | 12年 | 13年 | 14年 | 15年 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 結婚数 | 1,029,405 | 941,628 | 774,702 | 735,850 | 722,138 | 791,888 | 798,138 | 799,999 | 757,331 | 740,191 |
出典:人口動態統計(厚生労働省)
周辺産業は含まれませんが結婚式場業の市場規模を平成17年特定サービス産業実態調査(経済産業省)で見ると、平成17年度は平成14年度に比べて、売上で約11%減少するなど、全体的に減少しています。
業界構造としては(図7参照)、消費者ニーズの多様化により挙式や披露宴スタイルも多様化が進み、洋館の邸宅を借り切って利用するハウスウェディング(邸宅風結婚式)を行う事業所の増加により、「結婚式場(生業)」が増加しています。逆に、公共系の式場は、民間のような大胆な企画が出来ないので、シェアを低下させています。
図表5 結婚式業の推移

出典:平成17年特定サービス産業実態調査(経済産業省)
図表6 経営組織別・資本金別事業所数の推移

出典:平成17年特定サービス産業実態調査(経済産業省)
図表7 事業形態別事業所数

2. 市場の課題
1)葬祭
<1> 競争
新規参入が容易なため、競争が激しく、顧客ニーズ対応してないと、お客様が他の葬儀社へ流れていきます。ただ、葬儀であるため、(1)動揺している遺族の代わりに葬儀をプロデュースが出来る、(2)地域の習慣や宗教に精通している、(3)多様化したニーズに先取りし対応するなどの基本が出来ていることが重要です。
<2> 費用の低下
バブル時代のように盛大な葬儀ではなく、小規模になる傾向があり、そのため費用も縮小し売上低下しています。しかし、遺族が納得するサービスや演出なら、費用は出すので、いかに付加価値を付けるかが課題です。
<3> ニーズの多様化
従来の形式的な葬儀より、自分らしさを葬儀にも求める故人や遺族が多くなったので、それらのニーズを取り込み、それを実現できることです。
2)結婚
<1> 競争
新しいアイデアを持った会社が参入し、競争が激しいため顧客ニーズに十分に対応してないとお客様が他の式場へ流れていきます。
<2> 費用の低下
結婚式は、バブル時代のような盛大な結婚式はなくなり小規模になる傾向があり、そのため費用も縮小し、売上低下しています。しかし、カップルや親が納得するサービスや演出なら、費用は出しますので、いかに付加価値を付けるかが課題です。
<3> ニーズの多様化
従来の結婚式より、オリジナルな結婚式が求められており、それらのニーズを取り込み、実現できる能力が重要です。
<4> 外国系ホテルのオープン
最近、外国系ホテルのオープンが相次いでいます。客室の過剰が問題になっていますが、ブライダルも競争が激化すると予想されます。また、もう一つの問題として、人の引き抜きが多く発生すると思われます。
3. 今後の取り組み
1)葬祭
<1> 料金の明確化
従来からの問題に、葬儀料金の不明瞭性があります。そのため、お客様が納得できる料金表を作ることが重要です。
<2> ニーズの多様化
消費者ニーズの多様化がおこり、「家族に負担をかけたくない」「家族だけの葬儀にしたい」「故人の意思を反映した葬儀にしたい」などと葬儀に対する要望が従来と違ってきました。そのため、それらに対応したノウハウを蓄積する必要があります。例えば、家族葬、友人葬、ホテル葬、オリジナル葬(故人の意思に従った葬儀)、散骨などです。
2)結婚
<1> オリジナル
葬祭と同様に、消費者のニーズに的確に対応することが重要です。成功例としては、消費者のニーズをうまく取り入れて成長したハウス系会社、プロデュース会社です。
具体的には、有名なハウス系会社では、チャペル、宴会場等結婚式に必要な設備を設けている欧米の邸宅風の施設を作り、そこで結婚式を行います。新郎新婦が当日、自宅でゲストを招いてパーティーを行うような披露宴を演出します。敷地内時間貸しで、他の組と鉢合わせを避けてプライベート感覚を高めて演出効果を出しています。
プロデュース会社:結婚式のプロデュースを行う会社で、80年代から登場した。会社により、自社設備を所有した形態から、提携した施設を利用する会社まで形態に幅がある。利用するメリットは、そのカップルに最適な、施設や演出をプロデュースしてくれる点です。(ハウス系会社はプロデュース会社の一形態と考えられます)
<2> 海外進出
中国など東南アジアでは、所得が多くなり日本式の洗練された結婚式が受け入れる土壌が出来つつあります。特に、上海などでは、多くの日本のブライダル会社が展開しています。
<3> 晩婚、再婚、おめでた婚
業界では、今まで初婚を中心に結婚式のパッケージ等を作ってきました。しかし、式の数が減ってきており、従来十分に対応してこなかった「晩婚、再婚、おめでた婚」等のカップルが結婚式を行い易いパッケージを開発し、受注件数の増加につなげる必要があります。
<4> 海外ウエデングの対応
海外ウエデングは、オリジナル性、費用が安く抑えられ、非日常性等の特徴があり、挙式の1スタイルとして定着してきました。そのため、式内容も国内と同じレベルが求められています。
<5> リゾートウエデングの対応
海外ウエデングと同様に、オリジナル性、費用が安く抑えられ、非日常性等の特徴があり、挙式の1スタイルとして最近注目されてきています。海外ウエデングより、抵抗感ないため受け入れ易い特徴があります。場所としては、沖縄、軽井沢などが有名です。
【参考文献】
平成17年特定サービス産業実態調査(経済産業省)
人口動態統計(厚生労働省)
【業界団体】
- 全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)
〒102-0073
東京都千代田区九段北4丁目1番3号 飛栄九段北ビル6F
Tel(03)3222-4370 Fax(03)3222-4373 - 社団法人全日本冠婚葬祭互助協会
〒105-0001
東京都港区虎ノ門3-6-2 第2秋山ビル
Tel 03-3433-4415 - 社団法人日本ブライダル事業振興協会(英文名:Bridal Industry Association、略称「BIA」)
〒105-0014
東京都港区芝2-3-12 芝アビタシオンビル9F
Tel 03-5418-4501 Fax 03-5418-4505
著者プロフィール
山下 義(やました ただし)- 中小企業診断士
電機メーカー、ソフトウェア会社勤務を経てコンサルタントとして独立。
情報化支援、FC本部設立支援、飲食業、食品関係、情報産業、派遣業、産業廃棄物等を中心に活動を行っている。
特に、経営革新計画、新連携等の公的支援を活用してのコンサルを得意としている。最近では、地域おこしを活用したビジネスモデルを研究中。
- 第7回 ソフトウェア業の現状と今後の取組み
- 第8回 冠婚葬祭業
- 第9回 食品・飲料卸売業の現状と今後
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