業種・業態 現状の課題と今後の取組
第4回 土木建築サービス業の動向
中小企業診断士 福場 哲夫
1. 土木建築サービス業とは
日本標準産業分類によれば、土木建築サービス業は大きく建築設計業、測量業、その他の土木建築サービス業に大別される。
建築設計業は、「建築設計、設計監督などの土木・建築に関する専門的なサービスを行う事業所をいう」となっていて、実際には設計監督業、建物設計製図業、建設コンサルタント業が例示されている。昨年の構造計算の偽造事件で問題となった民間確認検査機関も含まれる。
測量業は「基準点測量、地図を作成するための測量、土木測量、河川測量、境界測量などの専門的なサービスを行う事業所をいう」となっていて、測量業が挙げられている。
その他の土木建築サービス業は「他に分類されない土木建築サービスを行う事業所をいう」となっていて、地質調査業、試すい(錐)業が挙げられている。
ここでは、建設コンサルタント、測量業、地質調査業を中心に概観し、ある建設コンサルタントでの事例に基づき、管理の実態等について説明する。
1. 土木建築サービス業共通のテーマ
(1)開業の条件
法律か国土交通省の規定に基づく登録制度があり、いずれの業種も一定の資格保有者が必要である。規定による登録制度の建設コンサルタントと地質調査業は登録の義務はないが、実質的には公共機関は登録業者にしか発注できない。小規模で下請けだけ行う建設コンサルタントなどでは資格保有者がおらず、登録していないこともある。
建築設計事務所では建築士が必要である。建築士は1級・2級・木造の区分があり、設計・監理できる建築物の規模・構造が定められている。
建設コンサルタントは、国土交通省告示による登録制度がある。登録部門は20部門で、技術士の第二次試験のうち建設に関係する科目に準拠している。事業の縦割り部門別としては1.河川・砂防および海岸、2.港湾および空港、3.電力土木、4.道路、5.鉄道、6.上水道および工業用水道、7.下水道、8.農業土木、9.森林土木、10.水産土木、11.造園、12.都市計画および国土計画の12部門がある。各事業部門に共通の横割の部門として、1地質、2.土質および基礎、3.鋼構造およびコンクリート、4.トンネル、5.施工計画・施行設備および積算、6.建設環境、7.建設機械、8.電気・電子の8部門があり、併せて20部門である。登録の要件としては、登録する部門ごとに技術士又は認定技術者を専任の技術管理者として置くこと、および十分な財産的基礎と金銭的信用を有することを有していることが求められる。
測量業では、営業所ごとに1名以上の測量士を置き、国土交通大臣に請け負う測量の種類等を記載した登録申請書を提出して登録しなければならない。
地質調査業は国土交通省告示による登録制度がある。登録要件としては、1.技術上の管理を行う専任者(実務経験年数、技術士等の資格等)を置く、2.登録する営業所ごとに、現場での調査を管理する専任者を置く、3.財産的基礎または金銭的信用を有すること、が求められる。
(2)事業の特色
いずれの事業も受注により業務が開始する「受注業」である。見込み生産はできない。受注額も業務によりかなりの幅があり、常時処理能力に対して過不足なく業務量を確保することは難しい。受注量が増加しても従業員数を増やして対応することは、業務量が減少した時のリスクや、熟練技術者は見つかりにくいことから行いにくく、部分的に外注により処理能力を拡大することが多い。
また業種により差があるが、公共事業に依存する比率が高い。このため、景気動向やその時の政策により受注が大きく左右される性格がある。昭和50年代終わりの頃の内需抑制の時期には受注・売上は大きく落ち込んだ。バブルの時期には処理能力を大きく上回る発注があり、業差が受注を回避する事態も起こった。公共機関からの受注の比率が高い企業が特に建設コンサルタントでは多い。この場合、会計年度末を納期とする業務が多く、年度初めは業務が少なく、年度末に業務が集中しがちである。
(3)人材の状況
総務、経理、営業など以外はほとんどが技術系の人材である。営業についても技術経験者もしくは一時的に技術から異動した人材が担当している場合があり、いわゆる文系人材の比率は低い。
設計事務所におけるCADオペレーター、測量、地質調査業の現場作業担当者等高卒の人材もいるが、学歴的には大卒が多い。建設コンサルタントでは修士修了者も珍しくなく、博士号保有者もいる。
(4)労働条件
1) 労働時間
労働時間は建築設計事務所や建設コンサルタントでは各人の担当業務がはっきりしているため、フレックスタイムや裁量労働制を導入しやすい。また、同じ面から遅刻に対しては比較的寛大である。
納期や打合せの日程に間に合わせるため、また年度末などは業務の集中により時間外勤務が多くなりがちである。
2) 給与
開業の条件で述べたように、資格の保有者が必ず必要である。また公共機関の入札参加資格の中では資格保有者の人数が問題とされるため、資格の取得が奨励されている。資格の取得に対しては一時金の支給、毎月支払われる手当、受験費用の補助などが行われる。対象となる資格としては、技術士、一級・二級建築士、測量士、1級土木施工管理技士、RCCM、博士などがある。全国建設関連業労働組合連合会の「2005年賃金白書」によれば企業により金額が違うが、一時金として3万円(測量士、RCCM)から20万円(技術士)、手当の月額は500円(測量士補、二級建築士)から10万円(技術士)などである。
3) リフレッシュ休暇
技術者が中心の会社であり、自己啓発による知識・技術のレベルアップや見聞を広める目的等で、一定の勤続年数を条件に2週間程度~1ヶ月程度のリフレッシュ休暇を制度化している企業も多い。
(5)経営分析
国土交通省総合建設局建設振興課の「建設関連業の経営分析」(平成15年分)によって、経営指標を現状を見る。
1) 総売上高
近年、景気の低迷と公共事業費の削減のため、建設関連業の売上高は減少を続けている。平成15年は11年の8割程度まで減少している。

2) 収益性
総売上高総利益率は建設コンサルタントが20%台であるが、測量業と地質調査業は30%台である。
総売上高経常利益率は0.0~0.3%と極めて低い。総売上高当期利益率は地質調査業ではマイナスとなっている。公共機関からの受注が多いため、入札での指名に不利になるため、赤字を避ける企業が多いが、売上高の減少のため赤字決算になった企業が多いと考えられる。

3) 資本に対する収益性
総資本経常利益率、総資本当期利益率は建設コンサルタントを除き、低くなっている。

4) 生産性
職員1人あたりの総売上高は測量業が1千万円、建設コンサルタントと地質調査業が2千万前後である。総資本回転数は測量業、建設コンサルタントが1.07、地質調査業は0.78で低い数値となっている。

5) 安全性
総資本自己資本率はそれぞれ30%以上であり、流動比率も150%以上と比較的高い。固定費率は測量業が100%を超えている。

2. ある都市計画コンサルタントでの経験から
私が勤務した都市計画コンサルタントの経験から建設コンサルタントの業務と管理についてまとめる。
(1)受注までの活動
受注活動は情報収集から始まる。一番大きいのは予算の把握である。都市計画コンサルタントに発注になりそうな、調査・計画・設計物件があるかどうか。業界新聞や予算書で可能性のある物件を把握したら、それぞれの物件の概要を把握する。予算額は予算書などで把握しているので、地区、目的、事業内容などを担当から聞き出す。前年度以前からの継続物件かどうかも重要項目である。前年度受注企業が継続受注する可能性が大であるから。
新聞等の一般の記事も業務の開発に欠かせない。公共団体の所有する施設が移転する記事があれば、その跡地利用計画の作成調査の可能性がある。関係課へヒアリングや提案活動を行い翌年度以降の予算化に結びつける。
受注可能性がある物件に対して営業活動を展開する。類似の事業の報告書等の提供、企画書、見積書等の提出などを行う。企画書・見積書の作成については技術部隊の協力が欠かせない。
公共機関からの発注は入札が原則であるが、複数年度の事業や小額発注では随意契約となることもある。プロポーザルコンペ方式で発注される業務もある。都市計画コンサルタントの業務は、調査の項目、作業の進め方、整備のコンセプトなどがそれぞれ考え方が異なるので、一定規模以上の業務についてはこの方式が望ましいと思う。
複数年にまたがる業務は同じ企業が継続して受注するのが原則である。このような業務もかつては入札によっていたが、平成初めの談合の摘発後は随意契約となった。設計関係では基本計画、基本設計、実施設計と分けて発注される。継続して同じ業者に発注される場合と、見直しの意味から別の業者に発注になる場合とがある。
(2)実行計画の作成
受注後、プロジェクトメンバーを決め、プロジェクトリーダーが実行計画を作成する。実行計画は作業項目毎の工数(労働時間)、担当者の月別工数、外注費及び経費で構成される。工数に計画工数単価(業務間接費予算額を年間計画工数で除したもの)を乗じて工費に換算し、外注費・経費と合算して原価・原価率、付加価値を算出する。
実行計画は毎月の工数集計、経費集計でフォローされ、次の場合は変更の手続が取られる。1.計画変更(特に契約額)があった場合、2.内部作業を外注する場合もしくは外注予定作業を内部で行う場合、3.原価が大幅に変更(通常は増大)の場合
(3)受注後の業務管理
毎月、各課は今後3ヶ月のプロジェクト別担当者別の工数、業務終了までの経費・工数を提出する。各課の資料を集計し、今後3ヶ月の課別の繁忙、終了時の原価、付加価値を把握し、問題点があれば担当者の異動を含め対処する。
期末間近には、計画工数単価と実際の工数単価の差を原価差額として計算し、利益額の正確な把握に努める。
(4)打合せ記録
発注者とは打合せを重ねながら業務を進める。打合せの際の決定事項などは「打合せ記録」を作成し、発注者に提出するし、業務によっては押印していただく。打合せ記録で決定した事項でも、変更になる場合がある。ある市の公園設計で、作業がほぼ終わった段階で姉妹都市から贈られた像を入口に設置することになり、全面的に見直しとなったが、契約変更とならなかった。
(5)資金繰り
工期は通常短いもので3ヶ月程度、長いもので10ヶ月程度、地方公共団体発注の物件は通常単年度契約で、納期は2月、3月となるものが多い。受注金額は少額なもので2~300万円、調査・計画ものの高額なものは2千万円程度。設計の高額なものは数千万円程度である。公共機関から受注が多いことから、入金は年に1度4月ごろに集中する。入金が年1回という状況は米作農家に似ている。時たま小額で短期の物件の場合は他の時期に入金することになる。また区画整理組合の設立業務のように、3年程度の工期で、数千万円から時には億を超えるプロジェクトもある。この場合、測量会社への外注費などは外注作業が完了した段階で支払わなければならず、完了までの立替払いがかなりの額となる。このような状況に対処するため通常では短期の借入れが必要となる。
著者プロフィール
- 福場哲夫
- 中小企業診断士・社会保険労務士
(社)中小企業診断協会正会員
都市計画コンサルタントで、計画業務、技術営業、経営企画を担当
現在は(1)企業の労務管理、税制適格年金からの制度移行、賃金体系の見直し、(2)企業の経営体質の改善、創業支援等の業務を行っている。
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