業種・業態 現状の課題と今後の取組
第1回 廃棄物処理業の現状の課題と今後の取り組み
中小企業診断士 山崎 隆久
1.廃棄物処理業界の現状
(1) 市場動向
廃棄物処理業者は廃棄物の回収・処理を行い、その対価として処理料を得ることを業と
していることから、その市場規模は一般的に廃棄物の排出量で測ることができる。ここ10年間の産業廃棄物排出量の推移をみてみると、図1に示すように、ほぼ4億トン/年前後で推移しており、横ばいの状況にある。このことから、全体の市場としては増加しているとはいえない。一方、図2に示すように、廃棄物処理業者の数は年を追うごとに増加しており、むしろ競争は激化しているといえる。

図1 産業廃棄物の排出量及びその内訳(最終処分量、減量化量、再生利用量)の推移(百万トン)【資料:環境省廃棄物対策課】

図2 産業廃棄物処理業の許可件数の推移【資料:環境省廃棄物対策課】
(2) 廃棄物の処理内容
日本はもともと国土面積が狭く、また近年は環境問題に対する意識の高まりから、廃棄物の最終処分場(埋立施設)建設は困難を極めている。そういった状況を反映して、廃棄物処理に関しては必然的に「捨てるための処理(減量、減容)」から「活かすための処理(リサイクル)」へ移行してきている。図3に示す現状の全国の産業廃棄物処理フローをみてみると、全体排出量411百万トンの内、最終処分(埋立て)されるものは30百万トンと僅か7%であり、リサイクルでの処理が大半を占めていることが分かる。

図3 全国産業廃棄物処理フロー(平成15年度、百万t/年) 【資料:環境省廃棄物対策課】
また、図1に示す廃棄物処理の内訳毎の推移をみても、最終処分量の減少、再生利用量の増加傾向が顕著になっている。一部の品目や処理後残渣物等において依然として埋立て処分せざるを得ないものがあるものの、処理内容としてはリサイクルが前提になっているといえよう。
2.廃棄物処理業者の抱える課題
廃棄物処理業者は様々なステークホルダー(利害関係者)との間で、適切な関係を保ちながら事業を運営していくことが求められる。以下、現在の本業界の抱えている課題を各ステークホルダーとの関係から述べる。(図4参照)
(1) 顧客
廃棄物処理業者にとっての顧客とは、言うまでもなく廃棄物を排出する事業者(法人)であり、業種としては製造、流通、サービス、金融機関等様々である。
近年、排出事業者に対し法的規制が強化されてきている。廃棄物処理を委託した業者が不法投棄や不適切な処理を行った場合、その責任は委託元である排出業者にあるとされ、具体的には現状回復費用の支払い、不法投棄排出事業者としての社名公表等の実害を負うことになる。排出事業者の責任拡大に伴って廃棄物処理業者に対する選定基準は厳しさを増している。
また、各種リサイクル法の整備や、企業のCSR(社会的責任)の一環としての環境貢献活動の高まりにより、処理業者に対してリサイクル率や処理質の向上といった高度なニーズが発生している。しかし一方でバブル崩壊後の長期に渡る不況を経て各企業は利益重視型経営に切り替えており、コスト削減への取り組みが常態化している。廃棄物処理に対しても例外ではなく、「リーズナブルな処理費」と「質の高い処理内容」の両方が求められることになる。廃棄物処理業者にとってはまさに受難の時代を迎えたとも言えるが、逆にこれら顧客ニーズをきめ細かく満たしていくことで、マーケット拡大、成長路線を築いていくことも十分可能である。
(2)行政
平成12、15、16年の廃棄物処理法改正に伴い、処理業者に対し大幅な規制強化が図られた。法違反はもちろんのこと欠格要件(人的、経理的基礎要件等)に該当する場合にも、自治体は処理業者に対して許可を取り消すことが義務付けられている。廃棄物処理業者はコンプライアンス(法令遵守)をより一層重視していかなければならない状況にある。
(3)地域住民
ここ数年の相次ぐ不法投棄や不適正処理報道の影響もあり、廃棄物処理業者に対しては悪いイメージが先行してしまっている。環境問題意識が市民レベルでも高まる中、とかく廃棄物処理業者は迷惑施設と捉えられがちである。風評から住民反対運動にまで発展し、最悪の場合は操業停止に追い込まれることもあり、日頃から地域住民とコミュニケーションを図っていくことが重要である。
(4)処理物の売却先、再処理先
通常、廃棄物処理業者は中間処理(破砕、焼却、乾燥、選別等)後に発生する再資源化物や廃棄物に関して、素材メーカーや再資源化先への売却、2次処理先への処理委託を行う。排出業者の責任が拡大する中、排出した廃棄物の最終処理の段階まで情報開示を求められる傾向があるので、廃棄物処理業者はこうした売却先や再処理先との間で常に透明性、信頼性のあるルートを確保しておく必要がある。
(5)競合他社
前述の図2でも示す通り、廃棄物処理業者の数は増加傾向が続いており、その要因としては既存業者の拠点数の拡大、新規業者の参入が挙げられる。特に新規参入については、従来は排出業者側であった製品メーカー(家電、パソコン、自動車等)や、処理物の売却先であった素材メーカー(非鉄製錬、セメント、製紙等)が自ら廃棄物処理を手がける事例も増えている。圧倒的な信用力やブランド力を持った大手企業の参入も目立っており、既存の廃棄物処理業者にとっては脅威であるといえる。また使用済み製品などについては、廃棄する前に中古業者が買い取っていくケースも増えており、廃棄物処理マーケットそのものの構造変化も起こっている。

図4 廃棄物処理業者を取り巻く課題 全体図
3.今後の発展に向けての取り組み
(1)環境経営の充実
近年、各企業とも廃棄物処理をリサイクルによる環境活動の一環と捉えており、処理業者に対しても、リサイクル処理は当然のこと、経営面においても環境管理の実践を求める傾向が強い。環境経営の有効且つメジャーなツールとしてはISO14001があるが、近年、中小企業向けの独自の環境マネジメント規格認証制度が一部自治体や民間団体等によって創設、運営されている。ISOに比較して規格の内容がより平易で取り組みやすく、低コストで取得できる。(図5参照)

図5 中小企業向け環境マネジメントシステム認証制度
(2)情報開示の徹底
顧客である排出事業者、さらには地域住民に対して、信頼性ある企業姿勢を打ち出していく必要がある。徹底した情報開示を行っていくことが重要であり、具体的には工場見学の受入、環境報告書の発行、最終処理までのフロー提示等により積極的に外部に対してコミュニケーションを図っていくことが望ましい。
平成17年4月1日より排出事業者が自らの判断により優良な処理業者を選択できることを目的として、「産業廃棄物処理業者の優良性評価制度」がスタートした。全国の処理業者は、国が定めた評価基準に適合していることを、処理業の許可更新等の際に都道府県知事等に確認してもらい、その旨を許可証に記載してもらうことができる。評価基準としてはまさに“情報開示”が核となっており、処理業者が事業内容などをインターネットで公開していることが要件となっている。具体的には(財)産業廃棄物処理事業振興財団が運営する産廃情報ネットが、基準適合を目指す処理業者のための情報公開の場となっている。
本制度を利用して優良性評価を得ることは、排出事業者からの信頼性確保に非常に有効とされているが、あくまで処理業者を選定する上での参考情報であり強制力はない。最終的には排出業者の意思に委ねられており、本制度の効果は今後の状況を見定める必要がある。
(3)IT化
近年、企業経営においてIT化の波が押し寄せてきており、廃棄物処理業者においても例外ではない。まず本業界独自の取り組みとして電子マニフェスト制度が挙げられる。電子情報処理ネットワークを使用して、排出事業者・収集運搬業者・処理業者をパソコンでつないでマニ フェスト情報を報告、管理するシステムのことで、従来から使われている紙のマニフェストに代わり、この電子マニフェストの利用を希望する排出事業者が増えている。廃棄物処理業者も本システムへの対応は必須になっている。また最近では廃棄物の排出から処理までの信頼性担保を目的として、GPSやICタグを用いたトレーサビリティシステムが開発されている。一部運用も始まっており、将来的に普及が進む可能性が高い。
著者プロフィール
- 小山崎隆久(やまざきたかひさ)
- 中小企業診断士 社団法人中小企業診断協会正会員
廃棄物処理、資源リサイクルを中心とした環境管理を専門とする。
企業、自治体の各種環境対応マネジメントの支援業務を行っている。
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