直営店の作り方
第2回 店舗管理の極意
トーマツ コンサルティング株式会社
マネジャー 加納由紀子
E-mail: yukiko.kano@tohmatu.co.jp
前半の第1回はメーカーやホールセラーが直営店を持つときに考えなければならないブランド戦略の再確認と店舗を作る際の「ブランド戦略の視点」と「店舗管理の視点」について整理しました。
後半、第2回の今回は、本業とは違う、小売業ならではのオペレーションの留意点について、「店舗管理の極意」と題して整理していきます。
前回「店舗フォーマットの策定」や「オペレーションフォーマットの策定」の必要性をお伝えしましたが、実際に店舗を運営してみると、様々な問題点が発覚し、躓かれることが多々あるようです。具体的には、
- 従業員は契約社員やアルバイトが多く、本社の労務管理と同じように管理ができない
- 適正な販売スタッフ数がわからない
- 店舗の受発注、在庫管理が正しいかどうかがわからない
- 店舗の出店立地の特性をMDにどのように活かすべきなのか
- 店舗での粗利率設定はどのくらいにするべきなのか
- 出店予定の店舗の売上予測はどうあるべきなのか
- 小売向けのシステムと本社システムの統合はどうすればいいのか
といった内容です。
種々様々な問題点はありますが、大きくは、「人の管理」と「商品管理」と捉えることが出来ます。
「人の管理」という面では、これまでの事業とは業務が全く異なるので、業務の整理から、体制、評価、労務など様々な要因が関係しています。
また、「商品管理」という部分では、商品の開発や全体の生産計画、出荷予測などは本来業務で行っている部分であり、それほど障害が無いように思われますが、店舗における最適在庫という観点では、在庫過多の傾向がみられることが多いようです。
今回は「人の管理」と「商品管理」について、特に直営店展開に当たって直面する課題とその解決策について確認していきましょう。
1.店舗における人の管理の極意
小売業の組織や人の特徴として、「パート・アルバイト活用」があります。一般的に小売業は粗利率が低く、利益を出すためには経費を切り詰めなければなりません。いくら「販売の達人」といっても一人当りの販売額には上限があり、また店舗に来店するお客様に対して商売をしているわけですから、来店客にも、1日に対応できる顧客数にも限界があります。
更に、店舗では接客以外にもたくさんの業務があります。発注や検品、品出しなどの作業は、接客以上に時間を要するようなこともあるのです。
そうなると、時給の安いアルバイトやパートを上手く活用しなければ利益は確保できません。
これまでは業務を難易度に分け、検品や品出し、レジ打ちなどの比較的単純で難易度の低い作業にパート・アルバイトを活用している店舗が多かったのですが、最近では、パート・アルバイトも単なる雇用形態の違いと捉え、能力のある人には商品管理や売り場変更など難易度の高い作業をさせたり、店長もパート化する店舗も増えてきています。
直営店の場合は、粗利率の設定が難しく、メーカーや卸の手間を勘案せず、高い粗利率を設定して個店別の損益を出している企業もありますが、それで利益が出ていることで満足していては、真の店舗経営のノウハウが身につきません。直営店を運営するためにかかっている本社の手間やコストを含めて、直営店への商品の卸価格を決めたり、本部経費として費用で計上するなどして「独立した事業としてあるべき姿」を求めます。
ですから、やはり直営店でもパート・アルバイト活用は必須です。
パート・アルバイトを多数雇用する際にすぐに直面する問題が、雇用のプロセスと労働時間と時給による給与の支払いの処理です。店舗数にもよりますが、相当な数のパート・アルバイトの人員に対して、必要数を確保するための採用や毎月の給与の計算、支払いは思いのほか時間が掛かります。
パート・アルバイトの雇用については、一般的な小売業においては、各地域のスーパーバイザーや店長が決められた予算の枠内で決定するということが多いようです。人数も多いので、正社員は本社、パート・アルバイトは現場のリーダーが決定するというプロセスの方が現実的ではないでしょうか。
また、給与のシステムも変わってきますので、店舗数が増えてくれば店舗専用の労務担当を置く必要もあります。
更に、店舗のオペレーション上ではもっと複雑な問題が挙げられます。店舗内の各人の役割と評価の問題です。
図1にメーカーやホールセラーがリテール参入の際、直面する現象と問題を整理しました。
想定される事象としてまとめているポイントに該当するようなことは無いでしょうか。
これらの解決方法としては、まずは「本部」と「店舗」の役割を明確化すること。問題やトラブルが発生した時の対応部署を明確にしておき、すぐに対処できること。本部は店舗サポート体制を整えること。それぞれの働きに対する「評価・報酬体系」が明確なこと、です。(図2参照)
これらが整理された上で、各人、各ランクの役割と評価項目、その評価結果と報酬の連動をどうしていくのか、具体的にしくみに落としていきます。
業績評価のしくみ自体はどのような企業にも存在していると思いますが、店舗ならではのポイントとしては、「店舗」と「本部」の関係、パート・アルバイトの多用があり、それを考慮した人事のしくみを構築しなければならないのです。
2.店舗における商品管理の極意
流通業であれば、需要予測の考え方、そのための商品生産、発注のしくみはよくご存知だと思います。
店舗にとっての商品管理の特徴的なことは、在庫管理です。
店舗の在庫は店頭在庫とバックヤードの在庫に分かれます。その在庫の管理、発注は商品によって頻度や納期は異なりますが、メーカーに比べると、小売業の商品管理はより短期で細かいことが多いのです。
具体的には、メーカーは季節や新商品の発売ごとに需要予測に基づき、生産を行います。また、ホームセラーは、数社分の需要を想定し、仕入れます。
ところが、小売業の場合は、「品集め」がキーとなってくるので、商品の形状や色、大きさなど、細かな規格の違う商品を顧客のニーズに合わせて、必要な時期に必要な分量集めなければなりません。
また、特に店舗立地は「売る」ための場所なので、立地が良く、地代も高いため、在庫をストックするスペースも限られているため、発注数量は少なめで、頻度が多くなります。
このように細かく発注、品出しを行わなければならない店舗に対して、本社はどのように商品を供給できるのかを検討しなければなりません。
あるメーカーの担当者は、「これまでメーカーとして春・夏と秋・冬の2回のみの生産計画しか立てていなかった。店舗をはじめると、店頭での商品の入れ替えを週単位で行わなければ店舗の鮮度が確保できない、そういうノウハウの取得はなかなか難しい」と言っていました。まさに、このノウハウの取得が直営店の成功の要因であり、それが取得できれば、本業にも大きな貢献となるのでしょう。
この他にも、店舗経営に必要な係数である、「商品回転率」をどう効率的に設定するのか、といった問題もあります。
直営店であり、ブランド戦略を実現する目的を持った店舗にとっては、「直営店であるならば欠品はするべきでなく、全種類展開しなければいけないのではないのか」といった声も聞かれます。
しかし、そのような在庫の持ち方をしていると、商品回転率は下がり、店に在庫が溢れます。ここでもブランド戦略の視点と店舗経営の視点をどのように融合させるかがポイントとなります。
以上、2回にわたり、直営店展開のポイントをまとめてまいりました。
直営店を積極的に生かし、リテールのノウハウを高めることは、流通チャネルを増やすことに留まらず、本業へのメリットはたくさんあります。
是非とも、成功させてください。
- 第1回 直営店をつくる時の戦略と視点
- 第2回 店舗管理の極意
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