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直営店の作り方
第1回 直営店をつくる時の戦略と視点

トーマツ コンサルティング株式会社
マネジャー 加納由紀子 E-mail: yukiko.kano@tohmatu.co.jp


流通業は一般的にメーカーからホールセラー、リテールという順番で商品が流通し、顧客ニーズなどの情報は逆にリテールから発信されていると言われています。
そのため、直営店を持つことで、顧客ニーズを把握して、自社製品の開発、買付けに生かしたり、あるいは直接顧客に情報発信することでトレンドをつくりたいというメーカーやホールセラーが増えてきています。
自社のブランド戦略のチャネルとして、ダイレクトに店舗を活用することは魅力的であるのでしょう。
その一方で、「直営店をつくった」という方に、「状況はどうですか」と聞くと、「管理が大変で、個別の店舗で儲かっているのかどうかがわからない」という答えが返ってくることも多いのです。

本シリーズにおいては、「直営店のつくり方」というテーマで、前半の第1回は「直営店をつくる時の戦略と視点」、後半の第2回は「店舗管理の極意」と題して、お伝えいたします。

1.直営店をつくるための戦略

まずは、直営店を展開するに当って、その目的と自社戦略との関連について確認していきましょう。
ここでは、あるアパレルメーカーの直営店展開を例に挙げています。

アパレルメーカーA社は、いくつかのブランドを所有し、「店舗にて直接自社ブランド製品を売る」という全社的戦略をもたれています。店舗展開を自社ブランドのシェア、認知度を高める有効な手段であると認識されています。
出店を進めるに当っては、戦略と店舗政策についての検討が必要となります。A社が所有しているブランドは複数あり、それらのブランドごとに認知度や展開力が異なります。検討すべきは、「店舗展開に向けての優先順位」です。全てのブランドを同時に同規模展開するには資金力もマンパワーも必要となります。そのため、優先順位をつけて、展開しながら店舗運営のノウハウを取得することが必要となってくるのです。
A社のブランドを評価してみました。(図1)

図1 ブランド評価

評価軸は様々ありますが、ここでは、顧客への浸透の速さと事業規模に関係する「認知度」と、商品が量、質ともに潤沢に用意できるかどうかという「供給力」、今後自社が主導権を有することが出来るかどうかのポイントとなる「ライセンスの所有」について主に評価しています。
この企業の場合、出店の候補として上がっていたのはブランドaとブランドbでした。
ブランドaは認知度も高く、直営展開することで売上増加は確実でしたが、ライセンスが自社所有ではなく、契約関係が続くという保証はありません。一方のブランドbは認知度はaと比べると格段に違いはあるのですが、自社でライセンスを保持しているので、aのように「突然、契約を打ち切られるリスク」というものはありません。
さて、どちらのブランドを優先すべきでしょうか。
残念ながら、これだけでは答えは出ません。
ブランドaを優先する場合は、他社およびライセンス所有企業を追随させないだけの店舗での販売ノウハウの早期確立がキーとなってきます。そのためには店舗数の急拡大は必須です。企業の体力を考えつつも、「ハイリスク・ハイリターン」を目指すこととなります。
一方のブランドbを選択した場合は、店舗以外での取組み、プロモーションとの連動などを行いながら、ブランドの認知度を高めることが重要要因となります。また、出店当初はブランド名での集客がブランドa程は期待できないでしょうから、一般的な店舗の販売方法を踏襲し、集客力を確保するための取組み、立地条件の選択、固定客化のしかけなどを地道に習得していくこととなります。出店速度はあまり早くはないと思われるので、当初、売上高が急激に上がることは期待しにくいと思われます。
このようにそれぞれの展開時のメリット、デメリットを整理し、最終的にはブランド力を判定した上で、自社戦略を組み立てます。

2.ブランド戦略と店舗運営

では、次にブランド戦略を店舗展開に生かす場合のポイントを確認していきましょう。
一般的に小売業に必要な「店舗経営の視点」に加え、「ブランド戦略の視点」といった2つの視点を店舗に反映させていきます。(図2)

図2 店舗基盤の整備

店舗経営の視点とは、個別店舗の収益の確保を実現するために、出店地や在庫、オペレーションの管理を行うことで、ブランド戦略の視点とは、自社ブランドのイメージやターゲット層を考慮し、エンドユーザーに提案することにより認知度を高めることにあります。
その2つの視点を「出店」「オペレーション」「本部管理体制」に反映させていきます。
ここで、「本部管理体制」を独立して取り上げているのは、もともとメーカーであってもホームセラーであっても本業があり、店舗部門は、本業の「営業」や「商品企画」と連携していくことが不可欠であるからです。全社をあるブランドとして捉えた場合、あるいは特定のブランドを軸にフォーカスする際に、流通の各過程としての連携を持たせなければ、直営チャネルとしての利点を生かすことが出来ません。
自社の企画や営業戦略を最もダイレクトに反映できる店舗でなければならないのです。そのため、本業部門の関連部署との連携を店舗に対する本部管理体制として整備しておく必要があるのです。
出店に関しては、「A.出店フォーマットの策定」にあるように、ブランドコンセプトやターゲット層に適合し、かつ、店舗の収益性を確保できる出店条件を整理することが必要です。候補物件の周辺の商圏や店前通行客の客層を調査するとともに、売上/利益を確保するために必要な人口(量)を満たしているかどうかをチェックします。
ここで決定したハードに加え、「B.店舗フォーマットの策定」では、店舗のソフト的要素である商品のMDや売り場、接客スタイルなどを決めていきます。ハードも大事ですが、特に、このソフト的な要素によって来店客にブランドイメージが伝わります。商品-売り場-接客に一貫性を持ち、ブランドをアピールしていきます。これが「B.店舗フォーマットの策定」です。
更に、先ほどの本業の各部との連携を含めた「C.オペレーションフォーマットの策定」を行います。一般的な店舗管理に加え、ブランドイメージを維持するために必要な組織体制、業務を加味してオペレーションを整備します。
これらは戦略を具体的な施策に落とす際の視点です。
非常に面倒なように思われると思いますが、A~Cのどれもが店舗展開には必要な要素であり、それにブランド戦略の視点を組み合わせることで真に「直営店」を強力なチャネルとしていくことが可能となるのです。
もし、仮に読者の皆様が直営店をもう既に何店舗が持たされているとしても、再度戦略と施策の詳細化を行うことで、更なる強化が期待できるのではないでしょうか。

著者プロフィール

加納由紀子(かのう ゆきこ)
トーマツ コンサルティング株式会社 マネジャー
日系/アメリカ系コンサルティング会社を経て現職。リテール部門担当マネジャー。著書「売上アップのための店舗診断入門」「売れる『売り場』はこうつくる」「ストアコンサルティング」「なぜこのお店に人が集まるのか」他
トーマツ コンサルティング株式会社

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