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小売業改革 強い本部の作り方
第6回(最終回) 強い店長

トーマツ コンサルティング株式会社
マネジャー 加納由紀子 E-mail: yukiko.kano@tohmatu.co.jp


本シリーズでは、小売業の事業拡大における本部の強化方法について連載をしておりましたが、最終回の第6回は、本部の意向を実現するための店長の役割についてまとめていきたいと思います。

店舗の管理業務

店舗における業務は大きく、「販売業務」と「管理業務」に区分することが出来ます。販売に関わる接客や商品補充などの作業を販売業務とし、売上高や在庫、シフトなどの管理を管理業務とします。
店長の仕事の多くは「管理業務」となります。粗利率が比較的低い小売業にとって、店舗での利益を確保するためには、パート・アルバイトの活用は必須であり、彼/彼女たちにどのように動いてもらうかを考えるのが店長の仕事です。いわば司令塔の役割です。
本部と連携しつつ、店長が店舗においてどのような管理を行わなければならないかを整理してみましょう。

A.店舗運営部との連携

第2回の店舗運営部のパートでは、店舗の業績責任を負うのが店舗運営部であるとお伝えしました。
店舗運営部の予算は、個別店舗予算の合計であり、実際に売上を上げるのは店舗です。店舗では、本部のスーパーバイザーのアドバイスを受けながら日々の業績数値をモニタリングしていきます。
主に店舗運営部と連動してモニタリングすべき指標は4つで、どれも店舗損益に関係する数字です。

店舗における業績管理項目

店長の役割
(1) 売上管理・・・売上(客数・客単価)のモニタリングと店舗における改善策の立案および実施
(2) 在庫管理・・・店頭在庫のモニタリングと改善策の立案および実施
(3) 就業管理・・・人件費のモニタリングとシフト改善の立案及び実施
(4) 金銭管理・・・レジ違算のモニタリングと改善立案および実施

売上高については、日次で管理していきます。日々の実績と当月の累計を確認しながら、月次の目標達成に向けた施策を検討します。図1の(1)では、売上高を客数と客単価に分けて、分析しています。客数や客単価が下がった原因を次のチェックポイントを参考に確認していきます。

売上管理のチェックポイント

客数が下がったら・・・
  • 近くに競合店ができていないか
  • インショップの場合、施設全体、他のテナントの動向はどうか
  • ハンドビラなどの販促を定期的に実施しているか
  • 看板やのぼりは目立っているか、汚れていないか
  • 客の動線が変わるような要因はなかったか
客単価が下がってきたら・・・
  • 売場に商品が十分展示されているか(空きスペースはないか)
  • 売れ筋商品やシーズン商品が十分売場に並べられているか
  • 催事スペースは季節にあった展開がなされているか
  • 商品の部門表示が明確で、関連性がわかるか
  • POPはきちんとついているか

次に在庫管理です。商品の回転率から在庫が多いか少ないかを確認します。商品の売れ筋、死に筋の見極めも大切ですが、まずは売上を確保するために適切な在庫量となっているかどうかを確認します。

在庫管理のチェックポイント

在庫高が多かったら(商品回転率が低い)・・・
  • 倉庫に在庫が残っていないか
  • シーズン商品の売れ残りなど処分するべき在庫はないか
  • 発注単位が多すぎないか
  • 発注ミス(ダブル発注など)はないか
  • 展示フェースが広すぎないか
在庫が少なかったら(回転率が高い)・・・
  • 売れ筋商品は十分に仕入確保されているか
  • 特にプロモーショナル商品は十分に展示されているか
  • 発注単位が少なすぎないか
  • 売場に商品が十分展示されているか(空きスペースはないか)

3つめは店舗で管理できる経費のうち、最も大きな人件費の管理です。店舗での利益を確保するために、店舗で使える人件費は制限されます。人が効率的に動くために、曜日別、時間帯別に必要な人員を想定し、シフトを組むのが店舗での人の管理です。
シフト作成はパート・アルバイトの都合で決めるものではなく、本来は売上予測、作業量予測に基づき、店舗で曜日別時間帯別に必要人数を設定し、それにパート・アルバイトの予定をあわせていく方法でなければなりません。
また、店舗業務のうち作業時間の長い値付け、荷出し作業については、業者さんに事前に値付けしてもらう場合や早朝アルバイトを活用して荷出しを開店前に集中させた場合などいろいろな対応策を想定し、通常よりも人件費をどれくらい圧縮できるかを検討することも大切です。

就業管理のチェックポイント

人件費が高かったら・・・
  • アルバイトの人数が多くないか
  • 人件費率が高い曜日はないか
  • 時間帯によって、人手が余っていないか
  • シフトは定期的に見直しているか
従業員の就業状況について・・・
  • 無断欠勤や遅刻をする販売員はいないか
  • 決められた勤務時間を守っているか
  • タイムカードは決められた通りチェックしているか

最後に金銭管理のチェックです。店舗のレジを閉めて違算がないかどうかを確認します。いつも必ず店長が最後になる、というわけではないでしょうから、レジ金が合うように管理をするのも店長の仕事です。

金銭管理のチェックポイント

レジ違算が多かったら・・・
  • レジ対応の際、商品点数を声に出して確認しているか
  • お買上金額、お預かり銀額、釣銭を声に出して確認しているか
  • 金銭の取扱は丁寧か
  • 違算の多い日に何か特徴はあるか

ここで整理している管理項目はいずれも基本的な項目ですが、これらの管理を店舗できちんと実施することが出来なければ多店舗展開は行えません。ずさんな管理になると、本来確保できるはずの利益が飛んでしまいます。本部としては、店長からこれらの情報がしっかり上がってくるためのシステムを整備する必要があります。

B.商品部との連携

第1回で「個店対応」の取り組みの必要性、第3回の商品部のパートでの在庫コントロールにおける「各店舗の特徴を理解した在庫の最適化」にあるように、これからのチェーン店も全店共通MDだけでなく、地域特性を加味した商品構成を検討していかなければ真に強い店舗が確立できません。
図2は、店舗スタッフからの商品に関する「アイデアメモ」をベースに店舗から情報を上げる仕組み例です。

図2 店舗情報共有プロセス

店舗の販売の中心となるパート社員は、その土地に住んでおり、社員であり、主婦でもある場合が多く、地域のイベントや商品の好みなどさまざまな情報を持っています。それらの情報を引き出し、積極的に商品構成に必要することの必要性は誰もが感じることです。
必要性を感じながらも、実行している企業が少ない理由は、この仕組みが上手く機能するかどうかが「フィードバック」に掛かっているからです。
アイデアを出しても、出しても返信が無ければ、制度は続きません。個店対応の取り組みの重要性、現場のアイデアの必要性をバイヤーが理解し、バイヤー通信や直接電話するなど、発信者へのフォローを継続して行う気概が不可欠です。

C.開発部との連携

開発部は店舗を立てる前の仕事がメインであり、一見既存店の店長との連携は不要に思われます。
しかし、第4回でもお伝えしているように、店舗の売上はハードだけて決まるものではなく、商品構成や売り場づくり、接客などのソフトによって変化しています。新店の店長は開発段階から関わることも多いですから、開発部で設計した売上予測、収支計画を十分理解した上で、ソフト面の設計をしていかなければなりません。
また、新店の売上予測に対する実績の検証も開発部とともに行っていかなければなりません。開発当初に想定していた商圏、客層などの実態を開発部と連携を取って検証していくための比較データの作成、オープン後一定期間を過ぎた時点での開発メンバーとのミーティングなども店長も交えて行う必要があるでしょう。

D.販促企画部との連携

販促企画部も商品部と同様に「個店対応」の場合のチラシの差し替え内容を店舗と調整していくといった連携が必要です。店舗では、事前に販促企画部から送られてきたチラシ原稿に対して、自店舗の希望する商品や価格を検討しなければなりません。
また、チラシの配布エリアについても、客層や顧客カードから来店しているお客様地域の特定など、現場の意見を取り入れていく必要があります。

このように、強い本部を作るためには、それを実現する店長の存在が欠かせません。店長が店舗管理を実践できるよう、仕組みをつくるのも本部の仕事です。

小売業は細かい管理、改善の積み重ねではじめて利益が生まれます。
企業の成長のために「重要業務」を推進する各本部ときめ細かい管理を徹底する各店舗の連携により、売上高アップと利益増大が同時に実現できるのです。

是非一度、本部機能を見直してみませんか。
本シリーズが、皆様のビジネスのヒントになれば幸いです。

著者プロフィール

加納由紀子(かのう ゆきこ)
トーマツ コンサルティング株式会社 マネジャー
日系/アメリカ系コンサルティング会社を経て現職。リテール部門担当マネジャー。著書「売上アップのための店舗診断入門」「売れる『売り場』はこうつくる」「ストアコンサルティング」「なぜこのお店に人が集まるのか」他
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