Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

小売業改革 強い本部の作り方
第4回 強い店舗開発部

トーマツ コンサルティング株式会社
マネジャー 加納由紀子 E-mail: yukiko.kano@tohmatu.co.jp


小売業の事業拡大における本部の強化方法について連載をしている本シリーズの第4回は店舗開発部にスポットを当てていきます。

1.開発ノウハウを整理する

物あまりの現在、ほとんどの業種は既に成熟期に入っていて、既存店の売上高を増大させることは非常に厳しい状況です。そんな中、企業は新規出店を行うことで全社の売上高をなんとか前年度プラスに持っていこうとしています。
既存店のマイナスを新規出店でカバーしながら企業規模を拡大しているケースは増えています。
企業の「成長性」を考える上で、新店の出店は重要なファクターであり、新店の出店時には最も巨額な投資を伴います。「どこに」「どのくらいの大きさの」店舗をつくるのか、といった新店の出店戦略の是非が企業の「成長性」と「収益性」に多大な影響を及ぼします。
ところが、「出店」に関する企業の対応についてヒアリングをしてみると、データや実績分析より新規出店のプロセスが確立されている企業がある一方、昔からの担当者の経験と勘に頼っている企業も少なくないのです。
担当者に「勝率は?」と聞くと、「当たることもあるけど外れることも、五分五分かな」と言う答えが返ってきたこともありました。
経験とそれに培われた勘は重要です。しかし、それをそのまま属人化していることは非常にもったいないことです。
ある企業の開発の担当者にヒアリングした際に、「新店の出店の基準は?」と聞くと、「見えるんです。だいたいの売上高が」とおっしゃっていたことがありました。一瞬、何を言っているのだろうと思いながら、「何を見て、そう思うのか」とずっと質問を続けていくと、担当者が見ているポイントがどんどん出てくるのです。約2時間、担当者からの話をもとに、ポイントを整理し、項目ごとに優先順位をつけていくと「出店診断表」が出来上がりました。
このときつくった「出店診断表」をベースに他の担当者の話と合わせて、新店の出店基準を作成したことがあります。
誰もが分かる出店基準を作ったことにより、社長はじめ経営幹部も新規出店の決裁がより判断しやすくなったり、よりシビアに候補地を判断するために基準値を操作することで、新店の1店舗当たりの売上高の水準を高くすることが出来るなど、さまざまなメリットが生まれました。

2.店舗開発のプロセス

店舗開発の流れを整理しましょう。
店舗開発における業務は大きくハード的側面とソフト的側面の2つに区分することができます。(図1)

図1 店舗開発のプロセス

ここでのハード的側面とは、出店に関する計画策定から物件調査、契約、建設着工までの投資に関わるものとし、ソフト的側面とは社内の意思決定後、商品構成や人、売り場、販促の手配を行うものとしています。
ハード的側面において、各企業が最もノウハウを有しているのは「売上予測・投資回収計画」の部分です。
先ほど例に挙げた企業においては、実際の開発担当者のヒアリングから「商圏データチェックリスト」と「物件評価チェックリスト」を作成しましたが、それ以外に既存店舗のデータを相関分析することにより、店舗のタイプ別の出店基準を作成しました。
一般的に売上高、営業利益との相関が見られる店舗の構成要因は、商圏人口、売り場面積、立地(都心、郊外)、競合といった要素です。これらの相関分析をすると、例えば「売り場面積が200坪を超えると、売上高があまり伸びなくなり、営業利益が下がる」などといった傾向が見えてきます。このような傾向から、新規出店の適正売上面積を設定します。
図2に売上予測のプロセスを整理しました。

図2 売上予測作成のプロセス

3.店舗運営部の機能

もう一度、図1の店舗開発のプロセスに戻って、店舗開発部の機能を確認していきましょう。
たいていの企業において、店舗開発部が中心的に機能するのは主にハード的側面です。経営幹部で決定した中期計画の目標値をベースに新規出店による売上高ならびに出店店舗数を決定します。大型店舗になると、出店計画を立ててから実際のオープンまでに3年掛かることもあります。そのため、中期計画がベースとなります。

アライアンス・提携

好条件の出店候補地を確保するためには、デベロッパーや土地の所有者などからの情報をいち早く、有利な条件で聞き出すことが重要です。特に、商業に適した立地は競合を含むさまざまな企業が狙っています。そのような立地を早期に確保するためのアライアンス業務は通常、開発部長が担当されていることも多いようです。
また、企業によっては独自に好立地の開発に取組んでいるところもあります。自社にとって商圏や立地に関してベストな土地があれば、所有者を探し出し、直接交渉をしていくやり方です。
いずれにしても、1つの店舗を出店するためにはいくつかの候補地を確保していく必要があります。そのためにも常に候補地の情報を複数、用意しておく必要があります。

売上予測・投資計画

特定された候補地に対する売上予測、投資計画は店舗開発において、最も重要な局面であるといえるでしょう。
「販売」という行為において、100%の確度ということはありませんが、大きな投資が掛かっている出店においては、売上予測の精度を高めていくことが重要です。店舗開発部においては、売上高の予想だけでなく、投資回収期間を意識した利益計画の策定も不可欠です。近年は店舗立地の優位性が数年で変化することも多く、投資回収期間の目標値も年々短くなっていっています。それらの数値を全て理解していることが店舗開発部には必要です。経営幹部が意思決定をするための資料を用意するのも店舗開発部の仕事です。
数値に強い店舗開発部を持つことが企業拡大する上では重要なのです。

条件交渉・契約

出店場所が決定した後の、条件交渉ならびに契約までは店舗開発部が担当します。

商品構成、人の手配、売り場づくりなどソフト的側面

出店の場所が特定し、契約まで完了すると、後は開発部の手を離れることが多いようです。企業によっては、出店準備室をつくり、店舗運営部や商品部と新店の店長予定者で決めていく場合もありますし、出店地区のスーパーバイザーが中心に進めていく場合もあります。
このようなハードとソフトの役割分担は、効率化という意味ではプラスですが、一方でマイナスとなることもあります。
店舗開発部はハード的要因から売上予測を行いますが、店舗の売上はハードだけで決まるものではありません。商品構成や売り場づくりなどのソフト的要因も影響します。

企業にとってのマイナスは、実際にオープンした後の新店の売上高を検証する際に、各部の責任範囲が曖昧になり、予測に対する実績の検証が行われないということです。
店舗開発部は契約までで業務を終了しており、その後の新店の実績を知らなかったり、知っていても、ソフト面に課題があったのではないかと勝手に解釈し、実績との検証をせずに終わっていることも多いのです。
本来は、「どちらの責任」ということではなく、売上予測と実績の差異をきちんと確認し、なぜ予測との違いがあったのかを分析する必要があります。

4.店舗開発部の体制

企業によってばらつきはありますが、店舗開発部のメンバーは比較的少数精鋭で構成されていることが多いようです。

図3 店舗開発部の体制

図3はさまざまな業態の企業における店舗開発部の体制と出店の店舗ペース、出店までにかかる期間を整理したものです。1人当りの出店数が多い企業で1人平均年間15店舗を手がけています。これは平均すると1ヶ月に1店舗以上の出店をしていることなります。前述のプロセスを全て実施することは至難の業です。そこで、出店基準を作ったり、売上予測をシステム化しているなどの工夫が生まれます。ただし、出店候補地の視察については、現地に行かないわけには行きません。そこで得た生の情報が店舗開発部のノウハウとなるのです。
さまざまな店舗が出店を続けているために、刻々変わる立地条件をデータと情報から常に最新の状態にし続ける店舗開発部、そんな店舗開発部を持つ企業が「成長力」を備えた企業なのです。

次回は、販促企画部です。

著者プロフィール

加納由紀子(かのう ゆきこ)
トーマツ コンサルティング株式会社 マネジャー
日系/アメリカ系コンサルティング会社を経て現職。リテール部門担当マネジャー。著書「売上アップのための店舗診断入門」「売れる『売り場』はこうつくる」「ストアコンサルティング」「なぜこのお店に人が集まるのか」他
トーマツ コンサルティング株式会社

ジャーナル最新のテーマ

今月のテーマ:新世代ERP 迅速な経営判断と戦略展開を支援します 続きを読む


今月のアンケート 第2回集計結果公開中 情報の「見える化」による予測の実現を望む声多数 2009年11月17日集計 気になる結果は?


お客様の声をお聞かせください

富士通ジャーナルに掲載している記事やコンテンツについてのご意見・ご感想を、ぜひお寄せください。

ご意見・ご感想フォーム いただいた、お客様の声


お寄せいただいたご意見・ご感想については、富士通からの回答をお約束するものではありません。ご了承ください。
なお、富士通からのご回答を必要とするお問い合わせについては、
富士通ジャーナルに関するお問い合わせをご利用ください。