小売業改革 強い本部の作り方
第2回 強い店舗運営部
トーマツ コンサルティング株式会社
マネジャー 加納由紀子
E-mail: yukiko.kano@tohmatu.co.jp
小売業の事業拡大における本部の強化方法について連載をしている本シリーズの第2回は店舗運営部にスポットを当てていきます。企業によっては、営業部や店舗管理部という名称であることも多いのですが、ここでの店舗運営部とは、組織として店舗を直轄し、売上を管理し、店舗運営をサポートする部署のことを指します。
店舗運営部が担う役割
(1) SV(スーパーバイジング)機能
店舗運営部の最も重要な役割は、店舗の売上を上げ、利益を確保することです。
店舗数が多くなってくると、店舗をエリア単位に分け、エリアごとにエリアマネジャー=スーパーバイザー(以降SV)を配置することで管理を徹底します。売上予算もSVの担当エリアごとに分割されます。一般的にSVは10~15店程度の担当店舗を持ち、予算達成に向けて、店長を始めスタッフの管理、販売力強化のサポートを行います。これをSV機能と呼びます。
店舗の売上達成のためのSV機能は、単語の頭文字を使って3C+1Rであらわすことが出来ます。
C : Communication ・・・ 本部、店舗間の情報伝達、店長のカウンセリング Consultation ・・・ 店舗経営、商品・売り場づくり・販促施策などについて店舗を巡店しながら指導する Control ・・・ 店舗のクレンリネス、接客対応、商品陳列などチェックリストに従い、チェックする R : Research ・・・ 商圏や競合店の調査、新商品開拓
図1は、SV機能を達成するため、SVの理想的な巡店指導内容をまとめたものです。
SVが店舗の概要を把握し、売上に大きな影響を及ぼすような要因は見受けられないかを確認し、商品や売り場、接客、オペレーションの状況確認、改善指示に当たります。

上記のようにスーパーバイザーは1人当たり10~15店舗の担当店舗がありますから、ほとんどのお店に常に顔を出すわけには行きません。店長とのコミュニケーションや店舗チェック、指導をしていると半日くらいはかかるものです。ですから、せいぜい1日2~3店舗と考え、全店を廻るとすれば、計算してみると、2週間に1回くらいの訪問となります。
1店舗当たり、2週間に1回の訪問を効果的なものにするためにSVは店舗の基礎情報を事前に収集し、課題を予め想定しておかなければなりません。
図1の理想的な巡店指導を実現するために、巡店前に確認すべき基礎情報については以下の項目を参考にしてください。
本部情報 : 本部の決定事項で店舗に伝えるべき項目を確認しておきます 店舗の損益情報 : 担当店舗の売上、粗利とできれば経費も含めた月次損益を確認しておきます 地区情報 : 競合店の出店や商圏情報など、外部データから情報収集可能なものを確認しておきます 商品情報 : 新商品、全店やエリアの売れ筋商品データをチェックします。できれば、他店と担当店舗における売上実績も比較しておきます。 他店舗の成功事例 : 売り場づくりや接客などの他店の成功事例をチェックします。売り場の状況などは写真などビジュアルなものの方がベターです
SVは、上記のようなデータを店舗に直接出かける前に用意しておきましょう。
1ヶ月、1週間単位での巡店計画を立てられる際に、担当店舗に関する上記データを確認し、指導の優先度や緊急性を加味した巡店スケジュールを作成することが出来れば、もっと効果は高まります。
SVは店長と違い、店舗を離れたところから見ることが出来ます。「忙しいから分かっているけど、やりきれない」「人が足りないから手がつけられない」といった現場の都合でやるべきことが出来ていなかったり、自分のお店しか知らないからノウハウが広がらない店長に対して、客観的な診断や他店舗のノウハウを提供できるのは、SVという立場ならではなのです。
(2) 教育機能
販売スタッフの育成、日々の教育は店長が実施し、店長教育の一部はSVがOJTという形で担っています。
一方で効率や専門知識の習得のために、「集合教育」の必要も生じます。
店舗運営部がサポートしている教育として、大きく「技術研修」と「階層別研修」があります。
技術研修は、新入社員や新店オープンの際にレジ精算の方法や発注の方法など、店舗オペレーションに関する技術の教育です。
また、階層別研修で特徴的なものは「店長研修」で、店舗管理者として身に付けなければならない管理能力を提供する教育を実施します。
これらの教育に対して、専任のトレーナーを置いている企業も多々あり、たいていは店舗運営部に所属しています。彼らの業務として、研修の運営に加え、各種マニュアル作成などを行います。
(3) 情報支援機能
POSデータを始めとする各種データから、店長やSVなどが見るべきデータの収集、加工をサポートする機能です。
前述のSVが見るべきデータなどは、SVが個別に作成、加工をするのではなく、部署としてフォーマットを特定し、全てのSVに同様なデータを提供する必要があります。使う人にとって最も分かりやすい加工をしたり、帳票を作成するためには、店舗運営部の中に情報支援機能があることが望ましいのです。
(4) 顧客窓口機能
小売業は「お客様」あっての商売ですから、店舗ではさまざまなクレームが発生します。店舗内で処理できるクレームも多いのですが、中には、企業として対応すべきクレームも発生します。例えば、店舗の施設利用時にころんで怪我をされたとか、地域住民からの騒音に対するもの、または店長でフォローしきれないものなど、店舗が多くなればなるほど、それに比例してクレームの発生数は増えます。
店舗運営を円滑に行うためにも、このようなクレーム対応窓口を本部に持っている必要があります。
また、クレームの再発防止を企業挙げて行うためにも、店舗で起こったクレーム情報は蓄積し、対応を検討する必要があります。
(5) 施設管理機能
店舗のハード面の管理機能です。店舗の施設を維持・管理します。企業のブランド・イメージ確立のため、特に看板や売り場サイン、什器などは全店統一で使用することも多く、それらを一括で管理していく機能が店舗運営では必要となります。
店舗運営部は、店舗の運営をサポートする機能ですが、その機能を整理すると、このようにその役割は多岐に渡ってきます。
多店舗化の推進当初や店舗が未だ少ない場合は、これら機能の分担を兼務で対応することも多いと思いますが、規模が大きくなると、専任者が必要となります。
SVやトレーナーなど、基本的には店舗での経験を生かして業務に当たらなければならないので、現場のノウハウを持った店長経験者のキャリアアップとして位置付けることもできます。
次回は、商品部の役割を整理していきます。
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加納由紀子(かのう ゆきこ)



