小売業改革 強い本部の作り方
第1回 強い本部
トーマツ コンサルティング株式会社
マネジャー 加納由紀子
E-mail: yukiko.kano@tohmatu.co.jp
業界動向では、今回より小売業にスポットを当てたシリーズを掲載いたします。
本稿では、中堅小売業が業績を拡大していく上で重要な役割を果たす「本部」のあり方について6回シリーズでお伝えいたします。
第1回につきましては、本部の重要性やベーシックな本部の機能を整理していきます。
1.なぜ本部は必要か
これまでコンサルタントという立場で様々な小売業を見てきました。創業間もない企業から、何世代も前から続いている老舗企業まで様々です。企業のさまざまなステージを一通り見てきた、といってもいいかもしれません。
そのような体験から、規模が変わっても普遍的な小売業の特徴として「今日売ることを最も重視している」という点が挙げられます。
その理由は小売業の生業にあると思われます。小売業は基本的に“日銭商売”です。お客様からの売上は、クレジットは別として、ほぼその日に現金として手元に入ってきます。ですから、日々の金銭の出入りには敏感な経営者が多いのです。
また、店舗での販売が収入源ですから、何をおいても販売を優先する、という考えが強くあります。創業社長のほとんどは店舗販売経験をお持ちです。
「今日売ることを最も重視している」ことはもちろん良いことですが、一方でマイナスの側面もあります。
業務は大まかに「重要な業務」と「緊急を要する業務」に分けることができます。販売の現場では、「重要な業務」より「緊急を要する業務」が優先される傾向が強く、具体的には、「来月のチラシの目玉商品の選定」より、「目の前にいるお客様の売上確保」の方が大切になります。つまり、3ヵ月後の計画より、今月末までの売上なのです。
このような判断を繰り返していくと、日々の勘定は合ってくるのですが、将来的な売上や利益を逃していることも多くなりかねません。
企業が拡大するためには、足元のみならず、先を見ることが必要です。急拡大してきた企業の社長がよくおっしゃることに「マーケット(業界)でいちばんになる」という言葉があります。大きな目標を見据えて、それを解決する策を遠くから順番に落としていくわけです。残念ながら、そのような発想は店舗の現場で日々の売上を追いかけていると生まれにくいのです。「マーケットでいちばんになる」という志向で企業をひっぱっていくためには、「重要な業務」をこなせる立場や環境が必要となります。
企業が拡大し、店舗数が増えていくに従い、「優先すべき事項」は社長1人では解決できなくなります。
そこで、本部機能が誕生します。
企業の成長の方針に従い、新店の開発を専門的に行う店舗開発部や、メーカーや卸との交渉を専門的に行う商品部など、専門部隊が組織化されます。
強い本部とは、「重要な業務」が明確で、それが優先的に行われている状態が確立できている組織なのです。
2.「本部主導型」と「個店対応型」
小売業の多店舗展開においては、大きく2つの考え方があります。
本部主導の統一フォーマットによる出店方法と現場の意向を反映させる個店対応導入型です。
これまで、急速なチェーン展開を行ってきた企業の多くは、店舗のフォーマットを統一し、同じ店構え、同じ商品構成、同じオペレーションで大量出店してきました。
ところが、店舗数が増えたり、市場が鈍化してくると、局地戦で競合に負けることが増えてきました。出店地域の特性や顧客ニーズに対応しきれず、地元の店舗に負ける店が出てきてしまい、それが既存店の売上昨対減となり、企業全体に大きな影響を与えるようになりました。
そこで、再度見直されているのが「個店対応」です。地域特性に合わせて、商品構成の一部を変更、競合対策として個店のチラシを配布するという動きです。
それぞれのメリット、デメリット(図1参考)を理解し、双方のメリット部分を取り込むために自社にとってベストな「本部」と「店舗」の決裁内容、範囲を決定することは重要であり、本部のあり方に影響を及ぼします。

3.小売業の本部体制
店舗サポートマトリックス
既存店舗を支える機能のうち、最も大きな視点は「商品」と「オペレーション」のサポートです。(図2参照)
販売とは、突き詰めて考えても見ると、「何を誰にどのように売るか」です。
店舗での単品の売上増に向けて、商品面については、バイヤーを始めとする商品部が行い、オペレーション改善をスーパーバイザーを擁する店舗運営部が示唆し、店舗の単品リーダーを支える仕組みです。
小売業での売上の伸ばし方には、商品主導型と運営強化型があり、常に商品部と店舗運営部には確執が存在していました。「なぜ売れないのか」売れない理由を、「商品が悪いから」「売り方が悪いから」という具合にです。
商品部と運営部の双方が現場にプラスに作用するために、店舗サポートマトリックスをベースに、商品と運営の担当者双方の責任範囲と果たすべき役割を整理してみてはいかがでしょうか。商品とオペレーションを強化する体制とその具体的取り組みが、本部が既存店をサポートする体制の原型です。

主な本部機能
本シリーズではこれ以降、小売業のための強い本部づくりについて、各部門ごとに部署のあり方、業務、見るべき指標についてご説明いたします。
次回以降のテーマ
- 第2回 店舗運営部
- ここでは、店舗を束ね、営業のライン責任を負う部門を指します。現場と本部のハイプ役を務め、店舗の活性化のサポートを行う、スーパーバイザーの機能を整理します。
- 第3回 商品部
- 既存店の売上を左右する最も重要な要素である「商品力」に責任を負う商品部のあり方、バイヤーが日々実践すべきことなどをまとめます。
- 第4回 開発部
- 小売業で最も費用がかかる新店出店における開発部の役割を整理します。店舗の物件決定、売上予測策定のために開発部が確認すべき項目もあわせてご紹介いたします。
- 第5回 販促企画部
- 小売業に特徴的な「チラシ」販促。店舗の集客手段としてチラシは依然重要であり、売れるチラシづくりのための販促企画部の業務を整理します。
- 第6回 店長
- 本部の意向を「個店対応」する力を有すべき位置付けが店長です。店長が日常業務を遂行するだけでなく、店舗の売上を上げるために何をすべきかを整理します。
本部の意向を「個店対応」する力を有すべき位置付けが店長です。店長が日常業務を遂行するだけでなく、店舗の売上を上げるために何をすべきかを整理します。
次回以降は強い本部を目指して、それぞれの本部について整理していきます。
- 第1回 強い本部
- 第2回 強い店舗運営部
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