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CMDB開発が目指すのは、自律したITシステムの実現

ITサービス管理・運用規則に関するベストプラクティスをまとめたITIL(ITインフラストラクチャ・ライブラリ)。このなかで定義される考え方の1つに、CMDB(コンフギュレーション マネジメント データベース 構成管理データベース)がある。富士通では早くからCMDBの研究開発に取り組み、標準化活動にも積極的に参画している。

今回は、このCMDB標準化プロジェクトの背景と成果、そして今後の展望について、プロジェクトメンバーである富士通研究所 サービスプラットフォーム研究センター 自律コンピューティング研究部の松原正純、和田裕二、ソフトウェア事業本部 システムマネジメント・ミドルウェア事業部 プロジェクト課長、島崎健一に話を聞く。


肥大化するITシステムが抱える問題解決に向けて

ビジネスや事業の発展に伴い、サーバ、ストレージ、ネットワーク、パソコン、周辺機器など、企業におけるITシステムの導入はどんどん拡大している。

「多くの場合、機器の構成情報は機器ごと、あるいはサーバやストレージといった機器種別ごとに管理しているため、機器単体では把握できていても、システム全体としての情報は管理できていないのが実情です。
また、システム間の接続情報の管理に関しても自動化されておらず、手書きや手入力で作成したマニュアルによる管理、つまり人の手作業に依存する場合が多く、書き漏れや記入ミスなどが発生しがちです。」

「このように、ITシステムの運用管理の現場では、さまざまな問題を抱えていますが、なかでもシステム全体がどうなっているか把握したい、さらに、人の手を介さずに自動的に管理したいという需要が高まっており、これを解決する方法として、散在するデータベースサーバを束ね、さらに管理の自動化をはかるため、CMDB研究開発プロジェクトがスタートしました。」
松原はプロジェクトの背景について口火を切った。

富士通研究所ではこれまで、自律コンピューティング(注1)を目指した研究に取り組んできた。ITシステムの運用を安定させ、システムみずからが状態を監視し、人の手を介さずに制御する自律機能が主な研究テーマである。

「個々のシステム情報が散在し、集中管理できていない、つまり「見える化」できていない点にまず注目しました。これを解決するために、運用管理に関する情報を横串で関連付けして管理しなければ、全体最適化はできないと考えていました。ちょうどその頃、CMDBを業界標準とするワーキンググループへの参加要請を受け、これまで私たちが研究してきた自律コンピューティングのノウハウが活かせる、と思ったのです。」
松原に続き、和田はプロジェクトの経緯について補足する。

CMDBの国際標準化、そして製品化へのステップ

オープン化やマルチベンダー化により、お客様のシステム環境では、個々の機器専用の管理ツールが導入されている。しかし、ベンダー間での相互運用性を向上させない限り、システムの全体最適化は進まない。この課題解決に向けて、2006年よりBMCソフトウェア、ヒューレットパッカード、IBM、CA、マイクロソフト、そして富士通の6社は、CMDB federation標準化ワーキンググループとして、標準仕様の策定に向けた取り組みを始動させた。

「標準化ワーキンググループでは仕様を決めることが中心になるのですが、私たちは実装レベルまで踏み込んで研究していましたので、製品化する際の課題も他社に先駆けて把握できていたと思います。

たとえば、標準化ではデータベースを統合するための共通インターフェースの仕様は検討されていますが、製品ごとにばらばらなデータ表現をどうやって統一するかということは議論されていません。しかし、富士通ではデータモデルを統一するRCXML(注2)という記述言語を2004年度から開発していたので、これを利用してインフラ情報、サービス情報、ビジネス情報を統合管理する基盤はすでに実現できていました。」と和田はいう。

「一次試作では、データを永続化(注3)できなかったので、二次試作では、製品化された場合を想定して実装しました。私がデータベースをコントロールする部分、つまり、外向きの機能を担当し、和田がデータベースを永続化させる部分を受け持ちました。」と松原はいう。

CMDBを使った製品はすでに富士通より発売している。Systemwalker IT Process Master(システムウォーカー アイティー プロセスマスター)がそれである。富士通研究所で開発された基礎技術を製品化するのは、島崎がいる富士通のソフトウェア事業本部である。製品化の苦労を次のように語った。

「実用化に向けた一番の課題は、CMDBを使ってどういう価値を提供するのか、という点でした。運用管理の多くの現場では、台帳管理をしています。具体的にはエクセルを使って管理をしているのですが、実際はデータセンターにある機器と台帳を人がつき合わせながら管理しています。こういった、人がおこなう作業をシステム化して信頼性を向上することを一番の目玉機能として提供することを考えました。」

「今回の製品はデータセンターのような大規模システムでの利用を前提とした開発でしたので、サーバ数で換算すると1万台規模の環境に耐えうるような性能を確保するため、幾度も検証と改善を重ねました。」

また、富士通研究所と連携して取り組むことにより、製品開発がこれまでより65%ほど短縮できたという。経営スピードの向上が盛んに言われるなか、実装レベルでの基礎技術の応用と、富士通グループが一丸となった取り組みにより、リードタイムの縮小を実現したのである。

真に役立つ技術開発とは

国際標準化に向けた取り組みのみならず、すでに製品化を実現しているCMDBだが、今後の展開はどのようになるのか。

「今のところ、CMDBを適応させる範囲はITインフラだけですが、今後は業務アプリケーションまでを含めた範囲に拡大します。そして将来的には、ビジネスの視点で活用できる製品を提供していきたいと思います。」と島崎はいう。

和田は、現場が抱える問題点から、研究員として果たすべき責務について、こう考える。

「夜中にコールセンターから電話がかかってきて、障害対応しなければならないとか、残業時間に食い込んでまで作業しないと終わらないようなトラブルに対し、多くのシステムエンジニアが日々、人海戦術で対応しています。長時間労働になれば、集中力も体力も落ちてくるうえに、問題解決にも時間がかかり、結局のところ、お客様には不満が残り、現場担当者は疲弊するばかりです。
この悪循環を解決するために、私たちが持つ自律コンピューティングのノウハウと、CMDB技術を応用した運用管理の自動化、ひいては自律したITシステムを実現したいと思っています。お客様も、現場も幸せになれる技術開発を目指したいです。」

「自律運用の開発を進めて行く際にぶつかる壁があります。それは、技術に対する信頼性の問題です。新しい技術を提供するたび、現場の人たちは「本当にそれで動くのか?」と疑心暗鬼になることがあります。運用管理の自動化についても、IT任せにする不安がいまだ根強く残っています。こういった不安を解消する、真の技術を開発したいと思っています。」

松原は最後に、自律システムのあるべき姿について、明言してくれた。

「システムがおかしくなる前にトラブルを自動的に予測し、復旧するのが自律システムの目的です。ビジネスに貢献すると言われているソリューションやサービスは巷にたくさんありますが、運用管理システムを整備し、人が介在してきた作業を自動化することで、業務の効率化につなげていくことは1つの解だと思います。そうすれば、現場スタッフが夜中に呼び出されるようなことは減って、正常な業務プロセスになり、ビジネスに貢献するIT戦略の検討など、企業経営に関わる業務に注力できるようになるでしょう。
人・プロセス・技術を最適化することは、IT部門だけでなく、企業経営の改善につながると思います。」

自律したITシステムの実現は、現場にとっては運用負荷の低減とプロセス改善、企業にとってはコスト削減と経営改革をもたらすことであろう。企業経営の安定と継続的な成長を支える技術開発に向けて、彼らは今後も重要な役割を果たしてくれるに違いない。

注記

(注1)自律コンピューティングとは :
運用管理に必要なシステム設定や保守作業を自動化する技術。
(注2)RCXMLとは :
Resource Control XMLの略。リソース構造管理記述言語で商談~設計~構築~運用~保守というITのフェーズ(ライフサイクル)で必要となるすべての情報を記述できる、富士通独自の技術。
(注3)データ永続化とは :
CMDBが扱う標準データ形式を内部データ形式に変換し、バックエンド・データベースを用いて永続データとして効率的に管理すること。

2008年11月25日 公開

標準化された統合CMDBの導入で運用効率と運用品質の向上を実現

システム運用の分野においては、各製品・ベンダーで個別に管理・利用していた構成情報のデータベースを統合する統合CMDBが注目され、標準化が進んでいます。標準化されたCMDBを導入することで運用効率の向上が実現でき、ベンダーを超えた相互運用性が向上します。


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