技術情報のマーケット・プレイス
- オープン・イノベーションにおける新しい方法の出現 -
企業は研究開発活動から収益をあげるために、社外との連携を積極的に活用するオープン・イノベーション(注1)に取り組んでいます。
オープン・イノベーションで重要なことは、社外の良い技術や連携相手を探索することです。
この手段として、インターネットを活用して技術の橋渡しや企業間あるいは企業と個人などのアライアンスの橋渡しをするサービスが生まれています。ここでは、この技術の仲介機関をマーケット・プレイスと呼ぶことにします。
マーケット・プレイスは、技術の取り引きに用いる共通プラットフォームを提供するもので、技術の流動性の向上を推進するものです。
海外企業では、P&G社、イーライ・リリー社、ダウケミカル社などの大手企業が活用しています。最近では日本の大手企業も活用するようになっています。企業は技術開発の1つの選択肢として利用しています。
ここでは代表的な企業の1つであるInnoCentive社(注2)の例を取り上げます。
InnoCentive社では、まず技術を希望する者“Seeker”が希望する技術を“Challenge”として登録し、募集が始まります(期間は3~4ヶ月が多い)。
解決策を提供する者が“Solver”として登録します。Solverとなることで誰もがChallengeの詳細情報を閲覧できます。そして、SolverはChallengeに対する解決策を提案し、それが採択されれば、SeekerとSolverとの間で契約が締結される、というプロセスを経ます。取り引きされる技術は、バイオ・化学が中心ですが、その他に食品、建築・土木、繊維、環境なども仲介されています。実際には、アイデア・技術を単にSolverからSeekerにライセンスするだけでなく、両者の間で共同・委託研究開発も多くおこなわれます。
Seekerのニーズは、実証できるレベルのアイデアや技術で、実用化に近い段階です。
Challengeには、必要な技術内容、背景、可能なアプローチなどが記載されます。Solverからは、実現可能性の証拠として、Work Product(ノートのコピーや実験データ、特許や文献)を提出させます。
マーケット・プレイスは、Science Operationチームを結成して、この専門人材がChallengeの内容の相談を受け、応募されたSolutionの評価をおこないます。
誰もがSolverとして登録できます。InnoCentive社のSolver登録者は、北米、中国、ロシア、インド、東欧を中心に、175カ国95,000人です。
マーケット・プレイスは、不特定多数を相手に技術情報・ニーズを開示して相手を探索する、インターネットの普及により可能となった新しい方法です。
技術情報の開示は、連携相手やネットワークの拡大には重要な方法です。一方、技術情報を入手するためだけにSolver登録をしている人も多数いるのです。
そのため企業は、オープン・イノベーションを効率的に実践していくために、権利化や秘匿など自社の強みを確保した上で、開示する技術情報を検討し、技術情報開示をより戦略的に活用していかなければなりません。
しかも社外と連携することを単に自社の研究開発をアウトソーシングするという発想ではなく、社外の色々な技術やアイデアを活用(インソーシング)するという考えが求められるのです。
(注1)
オープン・イノベーション : 企業内の知識の使用だけでなく、積極的に社外のプロセスまたは発明品(特許)を購入するまたは、ライセンスする行動。
(注2)
InnoCentive社 : 研究開発課題を抱える世界の一流企業と、その研究を専門とするトップクラスの科学者たちを結ぶ、ウェブベースのコミュニティーを提供している。
2008年6月13日 公開
〔株式会社富士通総研 経済研究所 主任研究員 西尾好司〕
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