お客様の声から開発や販売を考える CRMソリューションビジネスへの挑戦

市場ニーズの多様化は商品の付加価値の多様性を生み、量、機能、価格はもとより、消費者の価値観にマッチした商品づくりが求められている。そうしたなか、CRMは消費者の声を収集、分析するツールとして重要視され、富士通でも種々のサービスを提供している。
なかでも、時代のニーズに合ったSaaS型で提供する「CRMate/お客様接点力」と現場の予兆を捉える分析ツール「CRMate/お客様の声見える化」は新たな試みから生まれた現場重視のCRM製品だ。
各々の商品に関わる開発担当 富士通中部システムズ 中浜章文と販売促進担当 富士通 山田稚佳子の2人に新たなチャレンジについて聞く。
コンタクトセンター(コールセンター)で感じた小さな疑問がシステム開発のきっかけ

中浜章文は7年にわたるコンタクトセンター(コールセンター)入力系システムの導入構築の実績を見込まれ、2年前に「CRMate/お客様の声見える化」の商品企画・導入に挑戦することになった。
「コンタクトセンターの問い合わせ管理システムは、お客様のご指摘や相談内容を一元管理できる優秀なツールでした。ただ、蓄積したお客様の声を分析して、商品やサービスに反映するということはお客様任せで、お客様の声を活用する部分で支援できれば新たなビジネスになるのではないかと常々感じていました。」
入力系にたずさわっていた中浜にとって分析系は別の世界だったものの、疑問は大きくなっていったという。
「そのころの分析は『プリンタ印刷不良のご指摘が何件減った』など、定量的に数字にあらわされたものがほとんどでした。お客様の声などの定性的なフリーテキストは、内容を読まなければならず、人手を要する作業となるため、分析が難しい状況でした。しかし、1件1件クレームの中身を確認していくと、『もっと大きなクレームにつながる予兆ではないか』と判断できたり、『通常とは違う使い方をしていて、もしかしたら新製品開発に役立つのでは』と思えるものがあったり、まさに宝の山でした。フリーテキストをうまく自動分類することができれば、目視検査・集計の時間を短縮でき、企業様が分析やその次のアクションに割ける時間が大幅にアップすると考えました。」
そんな中浜の考えに賛同してくれる企業があらわれる。
「早くからコンタクトセンターを重視し、お客様の声を積極的に経営に生かしていこうとする先進的な企業様でした。お客様の声を新しい切り口で分析するアイデアに共感いただき、新しいシステムの開発に同意してくださったのです。」
新たな挑戦への道が開けた。しかし、道のりは決して平坦ではなかった。
テキストマイニングの手法を使って企業のほしい情報を自動分類するアルゴリズム
中浜の分析手法は、単に自然言語をテキストマイニングの手法を使って数値化するものではない。
「お客様からの声の内容をもとに、予測やヒントを汲み上げるようなアルゴリズムを組みました。」
いままでの分析とは手法を異にする、いわば教科書がない状態でのシステム開発。「CRMate/お客様の声見える化」の原型をつくりあげるまでには1年の月日を擁した。
「最初に企業様から業務内容やお客様からの声に関する分厚いレポートをわたされ、それを徹底的に解読するところから始めました。最初のころは、試作しては壊し、また試作することの繰り返しです。自動化・数値化しがたい部分を、どうにか自動分析しようという試みですから、簡単にはいきません。」
そんななか、企業からさまざまなアイデアと意見をいただく。
「企業様の現場からは「集めたキーワードを見ても何が重要かわからない」とか、「お客様のご指摘が多くなる前に、わかることはできないの」など貴重な意見をいただき、それを参考に自分なりの「お客様の声分析」の教科書を積み上げました。」
定性的なデータの分析手法として名高いテキストマイニングも使いづらい側面がある。
「たとえば、テキストマイニングで“パスワード”というキーワードを抽出したとしても、それは“パスワードを発行してほしい”のか、“パスワードを忘れた”なのかはわかりません。そこで、パスワードという名詞とそれにつづく動詞や形容詞をひとつのフレーズとして認識するようなシステムを開発しました。」

開発した独自機能のなかでも出色なのは、お客様の声の分類精度を高めるための日本語辞書の精度向上機能だ。
「企業様が手集計と目視検査でおこなう問い合わせ内容分類をシステム化して、お客様の声から得られる『気づき』の自動化ができるようになりました。これまで手作業による集計で毎月2~3日かかっていたものが、20分へ短縮できるようになりました。その結果、分析やアクションに割く時間を増やすことにつながりました。」
現在、いくつかの機能については特許出願中である。企業との協同作業で作り上げたシステムが富士通の新たな挑戦へとつながっていく。
現場の声をもりこんで、とことん使いやすいCRMにする

山田稚佳子は「CRMate/お客様接点力」の企画開発にたずさわり、現在はCRM製品の拡販を担当。「CRMate/お客様接点力」は、富士通がSaaS型で提供する初めてのCRMアプリケーションである。
「富士通として初の試み、私たちにとっても初めての挑戦です。富士通ではさまざまなSaaSサービスを展開していますが、CRM分野では初めて。関連会社で2カ月間勉強させていただいたり、SaaS化や提供機能の仕様についてはメンバー全員で、何度もミーティングを重ねて検討しました。」
SaaSでのサービス提供のポイントは気軽に始められるCRMということ。
「CRMというと、大企業様のコンタクトセンター向けという感覚が強かったように思います。しかし、いまや中堅・中小企業様にとってもお客様との接点力強化は重要です。導入コストを従来の10分の1に抑えられるSaaS型なら必ず企業様のニーズがあると確信したのです。」
そしてこだわったのは、わかりやすさだ。
「一般的にCRMという用語も理解度がまちまちですので、もっと親しみがもて中身がわかるようなネーミングを考え、製品紹介や説明にIT用語はできるだけ使用せずに、平易な日本語で記述するようにつとめました。」
企業の現場を間近にみたことも製品戦略を考える上での貴重な体験となった。
「いままで気づかなかったことが見えてきました。開発の際に想定していた利用方法とは違う方法で利用されていたり、機能の豊富さよりもとにかくスピード優先だったりと、まさにCRMの重要性を身をもって体験しました。」
新たなサービスの提供を機として、富士通はさらに深く企業ニーズをとらえていく。
企業が納得するサービスをSaaS型でどこまで提供できるのか
SaaS型での提供では、ウェブでの情報提供やサポートを中心にしており、商談段階での個別の企業の訪問はあまりしていない。
「ウェブから「CRMate/お客様接点力」をご検討いただき、一度も対面しないまま導入してくださった企業様は少し戸惑いもあったようです。購入を検討する際には販売担当者が出向いて説明するのが一般的ですから。導入後しばらくして訪問させていただいた際、他社はデモ、セットアップ、勉強会まで準備してくれ、富士通とはずいぶん対応が違ったそうです。ところが、実際使ってみると他社製品は高額で多機能すぎて理解しにくく使いにくい。「CRMate/お客様接点力」は、必要な機能がわかりやすく直感的に理解できた。コスト的にも導入しやすく、最終的には「CRMate/お客様接点力」に決定してくださったとのことでした。」
この企業は、ドライブレコーダを製造/販売している会社だが、新規参入市場ながら またたく間にシェアを伸ばし、現在は県内で80%のシェアを占めるまでになった。
「問い合わせを受けて、対応が漏れていることがあっても、その存在すら今までは気がつかなかった。それが「CRMate/お客様接点力」を導入してからは、対応が漏れずにしかも素早くできるようになった、とほめていただきました。また、お客様の声を製品づくりに活かすことで、現場が活性化したと喜んでいただき、いまは、企業様の実績に貢献できると胸を張っていえます。」
コミュニケーションと差別化がキーワード、現場が主役のCRMを展開したい
富士通のCRMアプリケーションについて、今後の展望をふたりに聞いた。
「2009年7月27日から「CRMate/お客様接点力」の機能を絞って低価格化した「CRMate/ライト」の販売を開始しました。富士通ショッピングサイト“WEB MART”から提供します。低価格化したことで、さらに広範の企業様にご利用いただけるものと思っています。」
と山田は意気込みを見せる。
「ウェブの強みである情報提供の早さと連携をいかした販売展開をおこなっていきます。セミナー、イベントなどの情報やユーザー事例、検討時に活用できる体験デモをタイミング良く提供し、その相乗効果で売上向上をはかります。定型業務のアプリケーションでは、ウェブ販売形式が世の中のスタンダードになるのが目標です。」
中浜は常に危機感を持って開発にあたりたいという。
「市場の変化は激しいですし、法規制や顧客価値観も変わる。開発や改変のスピードをあげることは常なる課題です。また製品の差別化のためには、リスクを恐れずに挑戦していくことが大事です。現在、コンタクトセンターをもたない企業様向けにアンケートやインターネットからお客様の声をひろって分析していくツールを研究中ですが、現場が使いやすいとか、スピードが速いとか、どこかに特化して差別化をはかっていきたいと考えています。」
そして、ふたりとも重要だと語るのが『現場視点』だ。
「CRMは、企業様とお客様とのコミュニケーションツールのひとつでしかありません。この情報をうまく利用し良い結果を導くのは企業様自身。だからこそ、現場の方々が積極的に取り組めるアプリケーションでなければ意味がないのです。」
と山田はいう。中浜も開発側が現場を知らなければだめだという。
「現場が変わらなければ企業様の改善は進みませんから、常に現場視点で考えます。商談の結果を聞いてプログラム修正したり、商談に同行し企業様の現場の意見を反映させるようにしています。」
CRMがもたらす究極的な企業とお客様の関係、そしてこれからの発展について2人は次のように語る。
「CRMの基本は人と人のコミュニケーションです。まずは、SaaS型での提供により企業様の規模に関わらずお客様との接点力を高める支援をしていきたいですね。」と山田。
「企業様とお客様のギャップがゼロになることが究極のCRMだと思います。そしてお客様の声を商品開発や品質保証に役立てることによって、日本企業全体の価値が高まっていくことが私の目標です。」と中浜。
現場視点で企業とともに開発した富士通のCRMソリューションは、今後も着実に成長を続けていく。
[2009年9月1日 公開]
現場部門でとらえたお客様情報を企業財産として共有し、「強い組織づくり」に貢献
中堅・中小企業に適したSaaS型アプリケーション「CRMate/お客様接点力」は、営業やカスタマーサポート、コールセンターなどでお客様接点力を強化し、そこで捉えたお客様の声を経営に活かすことで、企業価値の向上を支援していきます。
ジャーナル最新のテーマ
お客様の声をお聞かせください

富士通ジャーナルに掲載している記事やコンテンツについてのご意見・ご感想を、ぜひお寄せください。
お寄せいただいたご意見・ご感想については、富士通からの回答をお約束するものではありません。ご了承ください。
なお、富士通からのご回答を必要とするお問い合わせについては、
富士通ジャーナルに関するお問い合わせをご利用ください。





