最終回 日本版SOX法対応で留意すべきこと
2008年4月にも施行される予定の日本版SOX法をテーマに解説する連載企画。今回は「日本版SOX法対応で留意すべきこと」についてまとめます。
1. 米国SOX法対応でわかったこと
米国では、米国大企業については2004年11月15日以降の財務報告書に内部統制監査報告書を添付することとなっており、すでに2年の対応実績を持っています。その経験のなかでわかってきたのは、SOX法対応作業は思いのほか、時間とコストがかかるということと、内部統制の観点からは意外に多くの会社で問題点を指摘されているということです。
a) SOX法対応の時間・コスト
監査法人Ernst & Youngがまとめた「内部統制における最近の動向 第2回調査」によると、企業改革法の適用初年度の場合、売上60億ドル以上の企業の約半数が5万時間以上(300人月程度)、売上200億ドル以上の企業の約4分の1が10万時間以上(600人月程度)の作業が必要であった、とのことです。これらの作業は企業内の要員、コンサルタント、外部監査法人などにより実施され、企業内要員の場合は間接的コストとして、コンサルタントや外部監査法人の場合は直接的コストとして、企業に影響を与えることになります。
b) 企業の内部統制状況
上記の通り、米国では企業は多大な時間・コストをかけて内部統制の文書化・不備改善・有効性評価をおこなってきていますが、結果として内部統制に大きな欠陥があると判定された会社が数多くでています。この場合、外部監査法人は内部統制監査報告書に「不適正意見」を表明することになります。ある監査法人によると、この不適正意見を出されてしまった企業は全体の10%以上にもおよぶとのことです。
2. 日本版SOX法に対応するうえでの留意点
このように対応が大変であることや、企業の内部統制には欠陥がある可能性があることを認識したうえで、どうすれば効率的、効果的に対応ができるのか、という観点から何点かポイントをあげたいと思います。
a) トップの姿勢
内部統制作業をおこなううえで起こりがちな問題点として、全社的な方向性が不明確であることが原因で現場が混乱する、また現場において十分なリソースを確保することができずに作業が遅々として進まない、といったことがあげられます。
内部統制整備は、特に財務報告目的である日本版SOX法対応においては、企業にとってはコスト要因としか見えず、結果として経営者が消極的な姿勢を取るケースも散見されます。しかしながら、企業活動が法令順守しつつ、かつ、利益を生み出す必要があるという観点から、もっとも効率的に機能することを担保するのも内部統制の重要な目的です。
いままであまりクローズアップされることのなかった内部統制をまず財務報告目的から取り組み、その取り組みをコンプライアンス、業務有効性に拡張することで企業はメリットを享受できることを意識し、トップが日本版SOX法対応について強いコミットメントを表明することにより、現場の作業はスムーズに展開することが可能となります。
b) 作業標準の確立
内部統制作業を実施するうえでは、多くの部門と多くの要員の直接関与が欠かせません。このような状況で、全員が同じ用語を使い、同じレベルの作業を実施し、同じレベルの成果物を作成していくためには、作業標準を確立することが重要です。
作業標準を確立するうえでは、パイロットプロジェクトを実施することが効果的です。いくつかの分野や業務プロセスを選択し、実際の文書化作業などを実施、その作業の進め方や使うワークシート、目標とする成果物について実作業を通じて議論していくことで、自社にもっともフィットした作業標準の策定が可能となります。
c) プロジェクト管理
内部統制作業は外部監査人と相談しながら進めることが必要であり、そのため、プロジェクトの初期段階ですべての作業項目が明確になっているわけではありません。また、プロジェクト作業のなかで外部監査人や業務委託先がおこなう作業もあり、全てスケジュール通り作業が進捗するとも限りません。
しかしながら作業を完了しなければならない時点があるのは明白であり、プロジェクトが成功するためには、1)問題点を早期に発見、対応を実施すること、2)各タスクのプライオリティをダイナミックに管理し守るべき期日を守ること、が重要なポイントとなります。
2006年6月7日に金融商品取引法(現証券取引法)が成立し、2009年3月期の財務報告から対応することが義務づけられました。したがって、2006年度に文書化、2007年度に不備改善および有効性評価をおこなうというスケジュールでの対応が一般的になると想定されます。全体作業を円滑に推進し、内部統制監査をクリアすることが企業の差別化になるでしょう。そのためには早期に着手し、効率的な作業推進をおこなうことにより、第1のマイルストーン(チェックポイント)である文書化作業を2006年度内に完了することが望まれます。
・SOXコンサルティング
http://segroup.fujitsu.com/consulting/strategy/sox/
SOX: Sarbanes-Oxley(企業会計・財務諸表の信頼性を向上させる目的で成立したアメリカ合衆国の連邦法。法案を提出したポール・サーベンス(Paul Sarbanes)上院議員、マイケル・G・オクスリー(Michael G.Oxley)下院議員の名前から、サーベンス・オクスリー法=略称SOX法と広く一般で言われている)
2006年7月 公開
〔富士通株式会社 コンサルティング事業本部 内部統制事業推進室長代理 古庄裕司〕
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