家庭やビルの温暖化対策は「見える化」とインセンティブ設計がカギ
富士通グループのコンサルタントが調査・研究する温暖化対策の国際最新動向や課題、取り組みについてご紹介します。
温暖化対策の現状と課題
家庭やビルなどの温暖化対策の進展が、京都議定書の目標(2008年度から12年度の間に温室効果ガス排出量1990年度比6%削減)達成の課題となっています。1990年度と2006年度のCO2排出量を比べると、産業部門が約5%減少したのに対して、家庭部門が3割、ビルなど業務部門は4割も増加しています。世帯数の増加やオフィス床面積の増加に加えて、OA機器・家電・情報通信機器などのIT普及に伴う電力消費量の増大が要因とされています。
個人レベルの対策にはCO2排出量の「見える化」が不可欠
家庭やビルでの有効な温暖化対策をはかるためには、省エネ型の設備・機器の普及だけでなく、個人レベルでの排出削減を促す仕組みが必要です。その前提となるのがCO2排出量の「見える化」です。ビルの場合、BEMS(注)(ビルエネルギー管理システム)導入によるCO2排出量のリアルタイム監視・自動制御とともに、フロアやエリア(テナント)単位で計測情報を開示し、利用者の排出量に応じたインセンティブを与える契約メニューを提供することが考えられます。
リアルタイム計測・表示器「スマートメーター」
家庭部門では、「スマートメーター」と呼ばれるリアルタイム計測・表示器が注目されています。国内では本格的な普及策がありませんが、海外では、省エネルギーの推進を目的として、スマートメーターの全戸配付の取り組みが進められています。
カナダのオンタリオ州では2010年までに州内全家庭450万世帯へのメーター導入計画が始まり、インセンティブとして3段階の時間帯別電気料金が導入されました。実証実験では4分の3以上の参加者が電気料金支出を減らすことができ、電力需要のピークカットと全体の省エネにもつながりました。
「見える化」とインセンティブ設計
地域レベルでも家庭やビルに対する排出削減・CO2管理の要請は強まるばかりです。東京都では2010年度から大規模事業者に対してCO2総量削減義務付けが始まり、目標達成手段としてCO2クレジット取引が導入されます。広島市でも、家庭での削減取り組みの成果を排出量取引に適用する仕組みを検討しています。これらの施策に適切に対応するためにも「見える化」は不可欠です。今後、国内でも「見える化」とインセンティブ設計の議論が高まるでしょう。
富士通総研では、温暖化対策を巡る国際最新動向の調査・情報発信、および事業所などのCO2管理戦略策定の支援、国・地方自治体に対する温暖化政策策定の支援を推進しており、温暖化問題に関するさまざまな顧客ニーズに対応しています。
(注)
BEMS : Building and Energy Management System(ビルディング アンド エナジー マネジメントシステム)の略。ビルの機器・設備等の運転管理によってエネルギー消費量の削減をはかるためのシステムのこと。
[2008年12月25日 公開]
〔株式会社富士通総研 経済研究所 主任研究員 生田 孝史〕
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