第2回 市場投入期間の短縮を加速するPLM(上)
第1回では、PLMの意味と概要を解説しました。
第2回からは、製品開発において市場競争力を決定する構成要素の「開発期間」「コスト」「品質」をコントロールする観点から、PLMの考え方とその対応を概説していきます。
そのなかで今回は、開発期間とその短縮にフォーカスをあてます。
(1) 開発期間とその短縮の意味について
一般的には「開発期間」とは、新製品の企画や設計を開始してから生産あるいは販売を開始するまでの経過時間のことと解釈できます。また、同意語として「市場投入期間(Time To Market)」「開発リードタイム」などの言葉が使われています。開発期間を短縮することは、一番乗りによるマーケットシェアの確保や市場のより迅速で正確な予測のために不可欠な方策であり、経営戦略上も重要なテーマとなっています。
(2) 製品開発の手順と作業の概要
製品開発のおおまかな手順は、先行技術開発・商品企画・設計・試作/評価・生産準備・販売準備・生産・出荷・納品・発売となります。
先行技術開発は、製品のキーとなる要素技術や部品をあらかじめ社内開発しておくことです。近年の短納期化が求められる市場環境においては、個別の製品開発に並行して技術開発がなされるケースが増えてきており、要素技術の安定化までの期間が長びくことで、結果として全体の開発期間を延伸させる要因となる場合があります。キー部品や要素技術を社内で開発するか外部調達するかの戦略的判断が重要となってきています。
商品企画は、市場調査による市場・顧客のニーズと要素技術などのシーズをもとに企画者が商品のコンセプトを創造し「なにを作りたいか(What to Make)」を定義します。
設計では、企画要求をもとに製品の機能とレイアウトを設計の成果物としてモデル化していきます。また、製品を構成する全体機能のなかでユニットや部品単位での外部委託を検討します。この外部委託の方法には、設計から外部委託し設計成果物を自社で承認する方法と、自社の設計をもとに製造のみを委託する方法があります。前者を承認図方式と呼び、後者を貸与図方式と呼んでいます。一般的には国内製造業は承認図方式を取る企業比率が高いことが特徴です。こうした手順を通して、企画要求に対する製品全体での機能・品質面からの設計上での完成度の観点から、上長による設計承認がおこなわれます。こういった行為を伝統的には検図・承認と呼んでいます。
試作/評価では、「設計の意図通り製品が機能するか否か」を試作品で機能を検証します。
生産準備では、製品の量産化に向けて製造に必要になる冶具・工具・金型などの生産設備や工場のラインつくりなどの準備をおこないます。いわば設計の意図を反映して「いかにつくるか(How to Make)」を検討するフェーズです。一般的には、国内製造業は複雑な製品における生産技術能力や製造能力が海外企業に比較して強いと言われていますが、近年の生産の海外移転の進展にともない、この能力の維持が課題のひとつとなってきています。
販売準備では、カタログ作成や保守作業に必要なサービス・パーツなどの販売へ向けた準備をおこないます。
生産・出荷・納品・発売では、生産計画・販売計画・調達計画にしたがい必要な量の製品の製造をおこない、製品の市場投入をおこないます。従来は、販売開始から3ヶ月~6ヶ月が、製品の売れゆき状況や品質問題などの市場反応を見る期間でしたが、最近は販売後の9週間がこの勝負の期間となってきています。
以上の企画・設計の開始から出荷までを通して、各工程において原則として関連部門参加型での設計検証(デザイン・レビュー:以下DRと呼ぶ)をおこない、製品の機能・品質・コストのチェックをおこないます。たとえば、営業部門や企画部門は市場・顧客の要求との整合性の確認と指摘をおこない、調達部門や品質保証部門は部品や材料のコストや品質の観点から確認と指摘をおこないます。
また生産技術部門や製造部門は製品のつくりやすさや過去の製造上の不具合再発防止の観点を中心に確認と指摘をおこないます。
設計部門では、以上のDRを通して設計の修正をおこないます。このような設計者による設計の修正行為を設計変更と呼び、設計変更が多くなるとその手戻り回数と時間により開発期間が長くなる主要因となります。また設計変更の要求やそれにともなう設計変更は、以降の市場投入後まで品質問題や市場要求の変化などに応じて度々発生します。このことから、設計品質の不具合を「いかにして上流でつぶしておくか」が開発期間短縮のポイントとなります。
これまでのべてきたことを総合すると、製品開発の仕事は、社内の複数部門や外部のサプライヤーなどのやりとりを含めた複雑な「問題解決のプロセス」であることが理解できると思います。
第3回は、開発期間の短縮について概説します。
PLM: Product Lifecycle Management(プロダクトライフサイクルマネジメントの略。製造業における収益の源泉となる製品(モノ)の企画・設計・製造・調達・保守に至る開発プロセス全体を支援する仕組み)
DR: Design Review(デザイン レビューの略。設計検証のこと)
2006年9月 公開
〔富士通株式会社 コンサルティング事業本部 マネージングコンサルタント 吉本修三〕
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