中堅企業のIT投資を成功に導くプロジェクトメンバーの意識改革

中堅企業におけるシステム導入のためのSIプロジェクトにおいて「うまくいかない」という声をよく聞きます。最大の問題はプロジェクトの中核を担う検討メンバーの意識にあり、成功への鍵は人の意識改革であると言えます。今回はプロジェクトを成功に導く意識改革について、事例を交えてご紹介します。
「人の意識改革」が企業改革を成功に導く
21世紀に入り、既存システムの老朽化による業務効率性の低下、取引先企業からの要請によるIT基盤の強化、日本版SOX法など各種法令への対応、セキュリティ強化など、ビジネス環境の変化に適応するため、IT投資を決断される企業が増えてきています。
そのなかでもITへの投資比率を高めているのは、中堅企業です。中堅・中小企業市場の調査会社である株式会社ノークリサーチによると、サーバ統合による運用コスト削減などを始めとして、経営層の意思決定に役立つシステム構築、内部統制などのコンプライアンス対応、といった目的に対して投資することに、中堅企業は積極的であると予想しています。
また、IT専門調査会社のIDC Japanによると、従来は、業務の効率性を高めるための業務支援のツール(効率性重視)としての位置づけが多かったのですが、最近では、情報を駆使し、企業改革を実現するためのツール(戦略性重視)としてのITを期待されるお客様が増えていると分析しています。
これらの結果から、中堅企業のIT投資意欲は高まっていると予測できますが、一方で、課題も見えています。自社で推進するにあたり、ノウハウやスキルが不充分であるため、投資内容や方向性の示唆、導入後の運用支援といった領域に、ベンダーの支援を求めているのが実情です。こういった市場ニーズにお応えするため、SIベンダーやコンサルティング会社は中堅企業向けの製品やサービスを強化しています。
ところが、「企業改革を実現するためにIT投資をおこない、実績豊富なSIベンダーに依頼したが、うまくいかない」という話を耳にすることがあります。大手企業におけるSIプロジェクトの失敗については、メディアで取り上げられることもありますが、中堅企業においては、あまり知られていません。そのため、実態をはかることは難しいのですが、必ずしもIT投資の結果に満足している企業ばかりではないのです。
失敗する要因は多々考えられます。たとえば、ベンダーが夢のような仕組みを描いたものの、現場のレベルとかけ離れすぎていて実現性に乏しい、自身の仕事(成果物を作成すること)を優先し、メンバーを置き去りにしたプロジェクトになってしまった、といったことが挙げられます。
このような状況を回避し、ITによる企業改革を実現するためには、身の丈に合った業務・システムを構築することと、それを運用するメンバーが、構築された業務・システムを活用し、企業価値を高める活動を実践し続けることが必要となります。

今回は、建材メーカーA社様(年商220億円)の情報化企画プロジェクトを例に、成功の鍵を握る検討メンバーの意識を、どのように変革し、企業改革の礎を築いたかについて、ご紹介致します。
5つのステップでプロジェクト改革への意識を改革
プロジェクト発足時、検討メンバーの間には、「今度は大丈夫かな」という不安と「選ばれてしまった」という不満が蔓延していました。その背景には、過去にも同様に取り組んだ結果、うまくいかなかったことがあったからです。そこで、今回は、以下の5つのステップを通して、検討メンバーの不安と不満を取り除くと同時に、プロジェクト改革への意識改革を高めるための施策をおこないました。
ステップ1 目的(ゴール)の共有: 「分からない」から「分かる」へ
検討メンバーに、経営トップの思いとプロジェクトの目的を納得していただくため、理解だけでは人は動かないことを伝えました。それにより、会社を代表しているという責任感が芽生え、検討への参加姿勢に積極性が生まれました。
ステップ2 現状の可視化: 「知らない」から「知る」へ
業務遂行における根本的な問題点(ムダ、ムラ、ムリ)を可視化することで、業務に問題があること、場合によっては必要が無いことの気づきにつなげました。それにより、みずからの存在価値を否定されたと思い反発するメンバーもいましたが、本来注力するべき業務にシフトすることで会社が良くなる、ということを説き、今後、何をすべきかを明確にすることで、取り組みへの意識を高めることができました。
ステップ3 個人としての取り組み: 「できない」から「できる」へ
企業価値を高めるために、一人ひとりがどのような貢献ができるのかを検討メンバーに考えていただき、確実に実践するために、「すべきこと」、「役割」、「期限」を明確に宣言していただきました。それにより、「自分がやらなければならない」という取り組みへの主体性が芽生えていきました。
ステップ4 組織としての取り組み: 「やらない」から「やる」へ
改革は個人の力だけでは達成できません。そこで、検討メンバーの皆様に社内のいわば伝道師になっていただき、周囲の従業員をプロジェクトに巻き込むことで、改革へのシンパを増強することができました。それにより、当初は「やらされ感」が蔓延していた検討会の雰囲気も変わり、改革のベクトルが定まりました。
元来、検討メンバーに選抜されるメンバーは発言力や求心力が高いため、一度彼らの意欲が高まると、その推進力は強大なものになります。
ステップ5 次なるゴールの設定: 「いらない」から「いる」へ
こうして最後までやり遂げることで、検討メンバーは達成感を味わうことができましたが、新たなる課題が見えてきました。そこでさらなるステップアップに向けて、次なる課題にも積極的に取り組むといった積極性が生まれました。初回のプロジェクトで体験した成功例や失敗例を踏まえたうえでの取り組みですので、作業効率が高まると同時に、より中身の濃い検討が期待できるようになりました。

メンバーの意識が高まると、改革がスムーズに進みます。改革がスムーズにいくと、次なる改革意欲が湧いてきます。これは、1つの成功体験が、更なる改革意識を醸成し、改革のスパイラルが構築されるからです。そして、その継続的な活動は、必然的に企業価値や業務品質を高めることにつながるのです。
昨今の金融不況の煽りを受け、今後の市場環境は厳しいものがありますが、そのような厳しい環境下にある今だからこそ、中長期的な経営戦略による業務改革に意欲的なお客様もいらっしゃいます。そのような積極的なお客様はもちろんのこと、SIプロジェクトの推進にご不安をお持ちの方や、今回ご紹介した取り組みにご興味をお持ちのお客様は、お気軽にお問い合わせください。
[2009年1月5日 公開]
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