第1回 小売業の歴史と特徴
流通業における歴史と変革、それぞれの特徴・店鋪改革について、富士通グループのコンサルタントが5回にわたりご紹介いたします。
流通コンサルティング・ノウハウへの高まる関心
ここ数年、製造業やキャリア系のお客様から流通業のノウハウを持ったコンサルタントを求められます。低成長の時代を迎えモノの売りかたが難しくなるなか、顧客をとらえ市場を活性化しようと工夫している流通コンサルティングのノウハウに、他業種の方々の関心が高まった結果と認識しています。 本稿では市場環境の変化にあわせて、自ら激しい変化を遂げてきた小売業の歴史要約を通してその特徴をのべるとともに、次回以降の連載にて店舗改革、営業改革、ロジスティックス改革など、現場と一体となって地道に積み上げてきた流通コンサルティングの工夫と面白さを、実例などを通してお伝えしていきます。
流通業とは
神戸大学、丸山雅祥教授の定義を借りますと、流通業とは「生産と消費を空間的・時間的に連結するネットワーク・ビジネス」です。つまりモノやサービスと人を、生産地と消費地を、そして作った時と使う時を結びつける業務の総称ということです。
小売業の歴史・第1の節目
近代以降の小売業の歴史を大きく概観してみると、3つの節目があると考えています。 第1の節目は、いまから約100年前、日本橋の三越による「デパートメント・ストア宣言」に始まります。この宣言で三越は2つの革新をおこないました。第1の革新は、いまで言うマーチャンダイジング(品揃え)の改革です。化粧品・衣料品・鞄・靴・傘などまさに「百貨」を扱う小売店が誕生しました。第2の革新は、サービスの革新です。自動車による無料送迎サービス、エレベーター設置、少女音楽隊など、いままでにないサービスを実施し、買い物の楽しみを提供しました。その後百貨店は、鉄道会社による鉄道と不動産を加えた連携事業として、大都市から地方都市へと急速に拡大していきました。1932年、東京市では、百貨店18店舗の小売販売額が、東京市全体(約6万店)の25%を占めるまでに成長しました。
小売業の歴史・第2の節目
第2の節目は1960年代です。高度成長の波にも乗り、需要が供給を追い越し始めた時代であり、大量生産・大量消費のあらたな「効率化の時代」へ突入していきました。この時代変化に乗って、スーパーマーケットが出現しました。「売りかた」と「マネジメント」に着目し効率化を始めたのです。売りかたの革新は、セルフサービスの導入です。買いたいものを顧客自らが選び、最後に集中レジ方式で精算します。人件費も削減できます。マネジメントの革新では、チェーンオペレーションを導入し、本部主導の管理コストの圧縮、一括購入により仕入価格低減を実現しました。百貨店が非日常的な要素を持っていたのに対し、スーパーマーケットは日々の買い物の利便性と効率性を指向したものでした。その結果、1972年にはダイエーの売上が三越を上回り、スーパーマーケット全盛時代を迎えました。
小売業の歴史・第3の節目
第3の節目は1990年代です。国民の生活水準の向上を背景に、価格が安いだけでは消費者も満足しなくなりました。消費者の価値観の多様化が背景にあります。小売業者は、効率化の追求だけでなく、専門的な情報提供、目新しい商品やサービスの提供、ニッチであっても奥深い品揃えが望まれるようになりました。結果として、コンビニ、ドラッグストア、ホームセンターなどのあらたな業態が生まれ、さらに、カジュアル衣料、100円ショップなど多彩な専門チェーンが台頭しました。そしていまや、食品・衣料などのスーパーと専門店チェーンが一体化し、映画館などを加えた複合型商業施設へと展開していきます。
富士通の経験をコンサルティングに活かして
流通業の特徴は、変化の激しさと登場人物の多様さにあります。しかしどんなに変化しても変わらないのが、つねに消費者(=市場)を意識した発想です。低成長時代に突入して企業間の生き残り競争はますます激化している中、ITを通して業界変化に対応してきた富士通の経験が、いま、コンサルティングを通してお客様に還元できることになります。
次回以降6回にわたり以下のコンサルティング事例を連載します。
- 第2回 店舗改革を災害対策ツールで
- 第3回 受注業務は物流で
- 第4回 賢い薬局選び(健康ビジネス)
- 第5回 HHTを活用した営業改革
- 第6回 物流とロジスティックスはここが違う
- 第7回 スマートカートで楽々ショッピング
HHT:Hand Held Terminal (ハンドヘルドターミナルの略。携帯情報端末)
2006年4月公開
〔富士通株式会社 コンサルティング事業本部 シニアマネージングコンサルタント 小池隆康〕
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