ITの導入には教育と校務の概念を分離すべき
未来の日本を背負って立つ子供たちの創造性を高めるために

写真左から、奥田聡担当部長、藤田香織
2006年1月、政府はe-Japan戦略を引き継ぐ「IT新改革戦略」を発表。教育分野における重点施策としては、2010年までに校内イントラネットの完備、高速LANの敷設に加え、教員一人に1台パソコンを設置することを謳っている。現状の教員用パソコンの整備率は33%と低く、このため教師の多くが個人用パソコンを使い自宅、学校を問わず作業をしているのが実態であり、これはセキュリティや個人情報保護の観点から極めて危険な状況にある。
一方、教育の現場における生徒と先生の向き合う時間の向上を目指してIT化に取り組む学校が急増している。今回は、教育市場の商品企画、拡販を担当し、4月にリリースされた「@SCHOOL校務 児童生徒DB」の導入推進を積極的に展開している文教ソリューション事業本部、ビジネス企画推進室、担当部長の奥田聡ならびに文教ソリューション統括部、藤田香織に教育現場のIT化に向けた富士通の取り組みを聞いた。
その先に進めなかった理由
先生のゆとりは生徒との触れ合い時間を増やす

奥田聡担当部長
教育の場におけるIT化の歴史を奥田は次のように3段階に分けて解説する。
「教育のIT化は、『教育の中身をパソコンによって変えていこう』という目標を掲げてスタートしました。第1段階は1980年代で工業や商業の教育の中での、情報処理教育の時代です。第2段階が1990年頃ですが、一般国民のITリテラシーを向上させるために小学校の時代からITを教育に取り込もうという時代。そして3段階目が2000年ころで、ITで教え方の改善を狙った時代です。
例えば、繰り返し学習にはITの利用効果が高いという理由で各教室にパソコンを導入する機運が高まったのです。ところがです。ふと気づくと、問題は、教員にパソコンが配備されていない、基幹システムもないという実情だったのです。これでは、その先に進めないのは自明の理でした。」
だが、ここに来て教育現場のIT化にも大きな変化があらわれている。2007年6月11日に文部省が発表したプレス資料には重要な文字がある。「校務情報化」という5文字だ。これは、まさに富士通の描いていた「ITの導入には教育と校務の概念を分離すべき」という考え方を裏付けるものである。
(関連情報:社団法人 日本教育工学振興会(JAPET))

「ごく最近まで『パソコンは児童生徒の授業に使うもの』という認識のもとで、文部科学省はIT化を推進してきました。しかし、真に必要なことは『教員の労働環境の改善』であり、先生のゆとりをつくるためにこそITを活用する必要があるという認識が定着してきました。なぜなら、先生のゆとりは生徒との触れ合い時間を増やし、教育の質を向上することに繋がるからです。
今では総務省、経済産業省もこの重要性を理解し、IT化にてこ入れをする形となっています。」
と藤田は語る。
奥田は文部科学省が主宰する校務情報化に関する調査研究委員会のメンバーでもあり、教育の現場には明るい。
「小中学校ってイベントが多いのです。忙しい先生は生徒と向き合う時間が取れないのが実態です。通知表を作る場合でも、全体の成績の分布が正しいか、中味が正しいかという議論が重要なのですが、その時間はほとんど取れていません。」
「ITを活用することで普段は見えないものが、見えてくるのです。一人の生徒をさまざまな角度から捉えることが可能になる場合もあります。
IT化により校務の合理化が図られ、学校経営が改善されることで、先生方にゆとりができ、先生間のコミュニケーションも活発になります。それによりお互いが持っていた課題や目標などを一緒に解決していこう、という意識が生まれます。教育の場の『見える化』が始まったのです。」
校務の合理化は教育委員会から
ただし、IT化は単に効率化を目指すものではない

藤田香織
このような状況を追い風にして、富士通でも校務ソリューションに対応した幅広い商品群を用意している。受給者が急増しその対応が急がれている『就学援助システム』もそのひとつだ。
「まずは、教育委員会の事務システムから入りました。就学援助という仕組みに対応したシステムです。この10年の間でその受給者が急激に増えています。例えば、東京都足立区の場合、就学援助受給者の率は全体の4割強、県単位では大阪府が最も高くなります。受給者の急増により手作業では追いつかなくなったのです。」
もちろん、教育の場のIT化は単に効率化を目指すものだけではない。
愛知県愛西市の教育委員会は校務情報化の進んだ取組みを行っている。
@SCHOOL校務がそのシステムだ。Webベースでセキュリティに配慮したセンター型の運用を目指す。
また、学校側に責任者を置くのは負担が大きいためサーバを設置した地域内イントラネットとした。
(冊子 富士通ジャーナル7・8月合併号:学校事務ソリューション「@SCHOOL校務」をリリース)
「現場で推進役の先生方には、『現状維持は楽なのですが、データは一元化できていないし、セキュリティ上の問題もありますね。』と理解をいただきました。いつまでもこのままではダメ。教育が遅れているという認識は先生方にはあるのです。一方、Webはクライアント・サーバに比べると制限があるなど、ジレンマを抱えているのも事実です。
今は苦労が多いけど、将来はこんなにも役立つのだというゴールを描いて奮闘しています。」
と藤田は語る。
「最初のうちはなかなかインターネットに情報をだしてくれません。これは企業でも同じですが、ホームページなどで情報発信を続けていると、結果として各種協力が得られるようになり、良いコミュニケーションが生まれます。
例えばクレイマーなどの問題も、実は学校が情報提供をしていないことに起因するケースも多いのです。『単にやっています』、と声をあげるだけでは議論にならないのですね。」と奥田は語る。

これらシステムソリューションの行き着く先は?
役立つことがこれから実証される時期
「学校の場におけるIT化に富士通が取り組んで15年になるが、ITは道具の1つなので、使う人の意識の変化を考えるならばその成果が実証されていくのは今後の課題です。」
「本来、ITは多くの可能性を秘めているのです。例えば、藤田が担当していたような特別支援教育の場では、専用のソフトを開発して提供することで紙ではできなかった事が色々と出来るようになるのです。」と奥田は言う。
「特別支援教育向けのソフトウェア開発に携わった際は、ITが障がいのある子どもたちの可能性を大きく拡げるお手伝いが出来ることを強く実感しました。私の職場には教育に愛情を持ち、どうしたらより教育に役立つシステムを開発できるか考えている仲間が大勢います。」藤田は目を輝かせて言った。
先生方の想像力を高め、やがて未来の日本を背負って立つ子供たちの創造性や考える力を鍛えるために、教育の場のIT化に富士通が担う役割は大きい。
2007年7月17日 公開
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