第4章 「エコデザイン」
10. プロセス・ツリー
製品で使われる素材や資源がどのような課程を得て成り立つのか、デザイナーはそのプロセスを理解しなければならない。
プロセス・ツリーの例
これは電気ポットのプロセス・ツリーである。矢印はそのプロセスを表す。石油は様々に変容し、ポリエチレンはグラフィック・フィルム、ポリプロピレンは電気ポット本体と他の成形部品に利用されている。

図17:電気ポットのプロセス・ツリー 参考文献:『Okala ecological Design』
11. 長く使い続ける
製品の寿命を延ばすこと。それは今日の使い捨てあるいは短い製品サイクルの消費文化に挑戦することである。
なぜ棄てるのか?

60%以上のストーブとテレビが、廃棄時でも機能している。コンピューターの場合は80%がまだ使える。まだ使えるかどうかは、製品を棄てる理由のひとつにすぎず、逆に言えばそれが、製品を持ち続けるかどうかの理由になりえない、ということでもある。
機能するかしないかが製品を棄てる理由の全てにはならない。
人はなぜ製品を棄てたり、使い続けたりするのか、その理由が機能面だけでないことに注目したい。
図18:どうして廃棄するのですか?
出典:Eternally Yours Foundetion 1999
参考文献:『Okala ecological Design』
12. エコマテリアル
エコマテリアルは一般にライフサイクルを通じて環境負荷の少ない材料のことをいうが、重要なのは、何であれ材料そのものがエコであるとか、ないとかということはなく、要はその利用の仕方の問題だということである。
再生可能自然素材

地球上で最も優れたエコマテリアルは自然再生能力を持った自然素材であることに異論はないであろう。食物連鎖における被食者は捕食者の体を作り維持するための材料であるし、枯れ枝や木の葉は鳥にとって巣を作る材料である。これらの自然素材は採取して利用しても、また時期が来れば新たに生まれ育って利用できるようになる。無機物でも地表にあるものであれば水や空気や表土のように利用し続けることができるものがほとんどである。肝心なのは、エコシステムの中できちんと循環するように、適切な方法で適量利用し、利用し終わった後は、またエコシステムに戻すように処理することである。
工業用に利用できる材料の例として、サステナブルな方法で採取された木材に代表される森林素材などのバイオマス素材がある。綿花や麻などの植物性繊維、絹や羊毛のような動物性繊維、皮革なども自然素材だが、エコシステムの循環速度を上回るような大量消費や、絶滅危惧種などの保護に気を使う必要がある。成長速度が速く再生力が強いヘンプ(大麻)や竹などからとった繊維や、従来資源とみなされなかったバナナの茎やヒマワリの種、杉の皮などの未利用バイオマス資源も近年注目されている。
また、栽培の過程での農薬や化学肥料など自然環境や生活環境を汚染したり、人間の健康に悪影響を与えたりするものはエコマテリアルと呼ばない。その意味で、例えば無農薬有機栽培の綿を特にオーガニックコットンと名付けて、一般の綿とは区別している。
以下、自然素材以外のエコマテリアルについて概観する。
自然素材以外のエコマテリアル
リサイクルを前提とした金属
貴重な鉱物資源から精製される金属はリサイクルしながら使うのが原則である。実際には複雑な合金として利用されることが多いので、その扱いには注意を要する。自然界に豊富に存在するマグネシウムなどは今後活用が期待される金属の一つである。
リサイクルを前提としたプラスチック
一般に化石燃料由来の高分子化合物であるプラスチックはエコマテリアルと呼ばないが、リサイクルを前提とすることによって、環境負荷を低減しつつ利用することができる。但し、プラスチック自体はリサイクル可能でも、塗装やメッキなどの表面仕上げに使われる素材がリサイクル性を下げる場合が多いので注意が必要である。
生分解性素材
自然界に存在する多くの有機素材をはじめ植物由来の樹脂など、一般にバクテリアによって分解されやすい、生分解性の高い素材は、廃棄に当たって環境にかかる負荷が低いとみなされるのでエコマテリアルに加えることが多い。逆の言い方をすれば生分解性はエコマテリアルの重要な要件の一つであるともいえる。
リサイクル素材
人工的に作り出された素材、中でも生分解性を持たない素材は、リユースもしくはリサイクルを前提として利用すべきである。但し、リサイクルに当たって多くのエネルギーを使うことが多いので、そのバランスを考慮しなければならない。リサイクルしやすい素材やリサイクルされた素材をエコマテリアルに加えることが多い。
製造過程での環境負荷を低減する素材
製造にあたって従来多くのエネルギーを使うなど環境に与えるインパクトが大きかった素材を改良したもの。高温で焼成する必要があった陶器のタイルを、不焼成で成形できるようにしたソイルセラミックスなどがその例である。
使用過程での環境負荷を低減する素材
製品に加工した後で使用される際に消費するエネルギー等の削減につながる、軽量素材などがこれにあたる。鉄に変わる金属素材としてのアルミニウム、チタン、マグネシウムおよびその合金などはその例である。
採取・抽出から利用までの環境負荷の総和が低い素材
せっかくのエコマテリアルも、遠く離れた採取地から多くのエネルギーを消費して運んできたのでは環境負荷はかえって大きくなってしまう。
耐久性の高い素材
経年劣化に強く製品寿命を延ばすことに効果がある素材である。鉄に対するステンレス鋼のほか、耐久性能を高めた各種合金やエンジニアリングプラスチックや強化ガラスなどが含まれる。ただし、リサイクルが困難になるなどとのトレードオフには注意が必要。
有毒物質を含まない素材
従来、生態系や人体にとって有害な物質を含む素材から有毒物質を取り除いたもの。
全ての素材はそのライフサイクルを通して総合的に評価されなければならない。
