第3章 「サステナブルデザイン」

図14:サステナブルなデザインのアプローチ
出典:LLPエコデザイン研究所
サステナブルデザインとは?
サステナブルデザインとは一体何なのか?元の英語は "Design for Sustainability" 。ではサステナビリティとは何かと聞いて、持続可能性だと答えられても分りにくい。何が持続するのか、地球か、自然環境か、あるいは気候か、生態系か?どうすれば持続するのか、しないのか?
地球環境は持続する?
地球は誕生以来少なくとも4回の大きな氷河期を経験し、8億年から6億年前の氷河期には赤道まで厚さ3,000mもの氷で覆われたスノーボールになってしまったという。過去数百万年だけ見ても、数万年から十万年の周期で氷期を迎えていて、そのたびに現在の自然環境から見れば想像を絶する激変を繰り返しているのだから、長い目で見れば地球環境には、持続可能も何もあったものではない。
逆の言い方をすれば、それだけ激しい変化を繰り返しながら地球は存在し続け、そのダイナミックな地球環境の変動の刹那にわれわれ人類の歴史の全てと現代の文明があるということである。この壊れやすいわれわれの文明社会と生活環境を今しばらくは何とか無事に維持したいものだ、というのが正直なところで、地球温暖化を始めわれわれが地球環境問題と言っているのは、実は地球レベルでの人間にとっての生活環境悪化の問題に他ならない。
続けてゆける社会のためのデザイン
どうやらこの文明はこれ以上もちそうもない、という議論が沸き起こったのは1970年頃。ここ10年ばかりはそのことを証拠立てる事実が次々と明らかになっている。その主な内容は、産業革命以来の工業生産と消費文明が20世紀後半になって急激に拡大し、世界人口の激増とあいまって、地球資源の枯渇や、地球規模での気候変動とそれによる水不足や食糧危機、疫病の蔓延など人類の生存にかかわる災禍をもたらしつつあるというもの。
もはや、その信憑性や利害関係をめぐって議論や駆け引きをしている場合ではなさそうだ。それより自分達から考え方を根本的に改めて、生活の仕方を、社会のありようを、経済の仕組みを、そして文明の枠組みを変えてゆこう、何万年とはゆかないまでも、せめて今後何世代か先までは何とか暮してゆける社会、可能な限り持続できる新しい社会を作ってゆこう、という意思がサステナビリティという言葉には込められている。したがって、サステナブルデザインの意味をより正確に表現すれば、"Design for the Sustainable Society"、続けてゆける社会を作るためのデザインということになる。
サステナブルな社会の条件
地球環境は何と言っても社会存続の基盤ではあるが、社会がサステナブルであるためには環境的な条件を改善するだけでは充分ではない。仮に資源とエネルギーの消費が抑えられるのと引き換えに病気や戦争や犯罪が増えるとすれば、社会は持続できないだろう。また、仮に権力によって社会秩序を維持したとしても、自由で文化的な活動が抑圧された社会など誰も望まないだろう。環境的な条件においてサステナブルであるとともに、社会的な意味でも、更には文化的にもサステナブルでなければならないし、そのためには是非ともサステナブルな経済の裏づけが必要である。
新たな価値観とサステナブルデザイン
大量生産と大量消費、大量廃棄、とどのつまりは地球資源の大量消費と地球環境の悪化、富の著しい偏在と貧富の差の拡大、地域間格差や社会的対立構造。この因果関係を断つための推進力となるのは新しい価値観の構築である。
われわれはすでに地球の許容力を超える消費の上に立って経済活動を行っているのだから、自分が物質的に豊かになれば必ず別の誰かが貧しくなる。それならばいっそ物質的にはシンプルでありながら心身とも充実した豊かな暮らしがしたいという価値観、そのほうがカッコイイという美意識。それはこの国の歴史を通じて人々が変わらず求め続けてきた理想の生き方ではなかったか。そのようなサステナブルな生活を支える社会環境、都市環境、生活環境、道具環境そして文化的環境を実現するためのデザインをサステナブルデザインと定義しよう。
目標はサステナブルな社会を実現すること、そのためには環境調和性とともに社会的意義や文化的意味にも配慮し、さらに経済的可能性をも考慮しつつ、製品やサービス、システムや施設などを注意深くしかもイノベーティブにデザインする必要がある。その場合、視線は実現すべき未来の社会の姿に向けなければならない。サステナブルな社会とはどんなものかを構想し、そこに向けたシナリオを描きながら筋書きを持ってデザインするのである。
