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Work Place Creative

我々の仕事環境は、過去の技術のもと、機能と効率を優先したワークスタイルを強いられてきたのではないでしょうか?「機能と効率を優先した社会の仕組み」から「人間として一個人のあり方を重視した仕組み」へと、今まさに変化を必要としています。

Work Place Creative(以下、WPCと省略)は、この点に着眼したメンバーが結成した、クリエイティブなプロジェクトです。本プロジェクトは「オフィスとホームの境界」の考察を通じて、仕事とは個人の豊かな「振舞い」であり、仕事の場とは個人表現のための「舞台」であると捉え、ワーカーの創造性を最大限に引き出す「舞台道具」としての、機器、家具の提案を行ないました。

ライフスタイルとワークスタイル

家族と共有する時間や、自分自身の時間を重視したライフスタイルが見直されると、社会のしくみや個人のワークスタイルが、影響を受けて変化します。 近年よく聞かれるようになった「在宅勤務」や「SOHO (Small Office, Home Office)」といった、必ずしもオフィスに束縛されない新しい仕事の仕方が、その代表的な変化の兆しと言えます。

このようなワークスタイルを実現するために、必要な社会基盤は整備されつつありますし、舞台裏をサポートするだけのテクノロジーも、十分に進化してきています。

ネットワークが変えるワークスタイル

高度にネットワークが発達すると、どこにいてもオフィスと同じ仕事の環境が端末機上に再現されるため、必ずしも特定の場所に、1日中拘束される必要が無くなります。オフィスに通勤することを前提とした、今までのワークスタイルも、これからは大きく変化することになるでしょう。

そして、今や仕事の道具として必要不可欠となったコンピュータも、高速ネットワークと先端テクノロジーを前提とすると、今までの概念と異なった使い方に変化し、驚くほど小型化されます。

身振りと立ち居振る舞い

我々は、普段の生活の中で、無意識な身振りや立ち居振る舞いをしています。指し示す時に人差し指を使ったり、手をかざして遠くを見るなど、特に手を使ったジェスチャが多いようです。また日本人は、敷居ひとつで空間を分け隔てて振舞ったりする「見立て」に、その特徴があるとも言われています。

これらは全て、文化や生活様式の長い歴史を通じて自然に身についた、いわば人間の本能的な行動であるといえます。わが国においては、このような身振りや立ち居振る舞いを、「作法」として様式化し意味を持たせる例が、特に儀礼をはじめ、神事や仏事、茶道や武道などに多く見ることができます。

仕事を個人の豊かな「振舞い」であると捉えたWPCは、このような人間の身振りや立ち居振る舞いを重視した、より人間的な仕事の仕方や環境、そして道具を提案しようと試みました。

農耕文化とワークスタイル 舞と踊

技術が進化して生活が便利になる反面、我々は知らないうちに阻害されている「人間として大切なもの」を求める行為をしています。例えば、自然を満喫する旅行をしたり、ナチュラルな物を求めたりといった自然回帰の行動は、人工物に取り囲まれた人間の反動行為とも言えるでしょうし、かわいいものにくつろぎを感じる幼児回帰、趣味を通じた自己回帰などの「回帰」行為は、全てそういった魂からの警告ともいえるのではないでしょうか。

これは仏教の唯識の概念でいうと、人間のアラヤ識(五感、意識、マナ識のさらに下にあるとされる精神の最深層部)と呼ばれる、太古の意識の働きであるとも言えます。

一般的に、農耕を文化基盤とする民族の振舞いは、田植えや稲刈りなどに見られるように、腰を据えた水平運動を基本としていると言われています。舞踊も「舞」で象徴されるように、足の運びや腰の動きは水平的で、能などの芸能や茶道、武道などでも同様の動きを見ることができます。これらは、大地と人間の関わり方が決定した文化と言え、所作のみならず、思考や宗教などに幅広く影響を与えています。

一方、大陸の遊牧を文化基盤とする民族は、騎馬に見られるように垂直運動を基本としており、舞踏では「踊」で象徴されるように、飛び跳ねたりする上下の動きに特徴があります。彼らの世界観は農耕文化と異なり、目的に対して直線的に思考、行動するもので、場所に固執しないライフスタイルを生んでいます。

農耕文化の舞を象徴する、水平運動をする人と、遊牧文化の踊を象徴する垂直運動をする人の模式図

農耕文化とワークスタイル 振る舞いと道具

我々日本人は、自分の身体を基準にして、日常生活の様々なモノの寸法を定めてきました。日本人にとって、最も身近な道具の1つであるご飯茶碗や汁椀をみてみると、その径はおおむね四寸(12cm)となっています。この寸法は、手のひらと指でできる半球の直径と一致し、握りやすく、洗いやすい寸法であるといわれています。湯呑みや徳利の径は、二寸半(7.5cm)で片手で握れる寸法であり、これは、ビールやワインの瓶の径とも一致します。

また、住居や茶室などの、日本の建築の寸法である一間(180cm)、一坪(180cm)四方などの単位も、人の身長および、両手を広げた巾に収まるサイズからきており、柱の間の距離や畳などの、寸法の基準となっているのは言うまでもありません。これらの一寸、一尺、一間などの寸法は、身体との関係から生まれてきた、モジュール単位と言うことができます。WPCでは身体と道具の関わりを重視し、身体尺からの道具立てを考えました。

建具や道具の寸法を示す図。丸畳は、縦6尺3寸(191cm)横3尺1寸5分(95.5cm)。半畳は、縦3尺5寸7分(108.2cm)横3尺1寸5分(95.5cm)。茶室の炉は、縦横1尺4寸(42cm)。一握は親指と人差し指を開いた程の長さ。六曲屏風は、高さ5尺(150cm)。男椀は、直径4寸(12cm)。湯呑みは、直径2寸5分(7.5cm)。ビール瓶やワインボトルは、外径2寸5分(7.5cm)。茶筒は直径3寸(9cm)。

注: 尺、寸を換算したセンチメートル寸法は目安となる数値です。


Work Place Creative

農耕系ワークスタイル

農耕を文化基盤とする民族のライフスタイルは、大地と人間の関わり方によって、決定づけられており、同様にワークスタイルについても、ワークプレイス、すなわち働く場が、彼らにとって、重要な意味を持っています。それは、「場」との対話から、全ての創造が始まるからです。

かつては、田畑が彼らのワークプレイスでしたが、現代では、オフィスがそれに相当すると言ってよいでしょう。そして、江戸時代に「居職」と呼ばれた建具や、手工芸の職人達にとってのワークプレイスは、生活の場でもありました。SOHO(Small Office, Home Office)は、さしずめ現代版の居職ともいえ、同時に、農耕系ワークスタイルの最先端の姿とも言えるでしょう。

WPCでは、農耕系ワークスタイルの典型として、SOHOワーカーをとりあげ、それらの道具立てを提案しました。

 囲炉裏スペース ‐Irori space‐
四尺半(135cm)四方の、囲炉裏ディスプレイを中心にして、床イスを自在にレイアウトすることができる、ワークスペースです。仕事の打ち合わせや、囲炉裏を囲んだ団欒まで、様々なシーンで活用することができます。囲炉裏に相当する部分には、タッチパネル式プラズマディスプレイが内蔵されており、TVやBGV(Background Video)を写したり、コンピュータとつなげて、仕事やプレゼンテーションに使うこともできます。床イスは一間 (180cm)の長さがあり、正座やあぐらなど、椅子座として利用するだけでなく、寝転ぶこともできます。


 屏風ステーション ‐Byoubu station‐
部屋を自在に仕切ることができる、二尺半(75cm)の幅をモジュールにした、屏風型ワークステーションです。テーブルを引出して座布団チェアを持ってくれば、簡単なデスクとしても使えます。そして利用しない時は、折り畳んで部屋の隅に置くことができ、プライベートな時間や空間を、阻害することがありません。四寸(12cm)四方モジュールの格子棚には、電源やLAN(Local Area Network)のケーブルがビルトインされており、コンピュータやオーディオなどの機器と、ケーブルレスで接続することができます。


 掛け軸ディスプレイ Kakejiku display
電子インクと呼ばれる、先端技術を使った大型の、ペーパー・タイプ・ディスプレイです。超薄型でフレキシブルな素材を使っているために、利用しない時には掛け軸の様に巻き取ることができます。屏風ステーションには、このディスプレイを掛けるだけで、コードレス接続ができ、TVを観たりコンピュータにも、接続することができます。

遊牧系ワークスタイル

遊牧を文化基盤とする民族は、特定の場所に固執しないライフスタイルやワークスタイルを、特徴としています。彼らにとってワークプレイス、すなわち働く場は、特定の場所を意味せず、逆に移動することに価値を見出す、ワークスタイルであるといえるでしょう。この遊牧系ワークスタイルは、江戸時代には「出職」と呼ばれる行商や、大工など外まわりの職業が中心でした。パソコンと携帯電話を持って街に出る、現代のモバイルワーカーは、ハイテク出職といえるでしょう。 WPCでは、遊牧系ワークスタイルの典型として、モバイルワーカーをとりあげ、それらの道具立てを提案しました。

 鍵 ‐iKey‐
i鍵とは、持ち歩きたい情報やネットワークに接続するため、パスワードなどが記録されている合い鍵です。鍵を「差す」という行為は、コンピュータの世界を意識することなく、特定の場所へ入り込み、必要な情報を、手元に取り込む行為を意味します。また、仕事仲間へi鍵(合い鍵)を渡すことによって、離れた場所でも、同じ仕事環境を共有することができるようになります。


 四寸モジュール ‐4-sun Module‐
四寸 (12cm)四方という、ハンドリングのよい身体尺を使った、コンピュータです。 コンピュータは、使い方に応じて必要な機能だけ持ち運べるように、いくつかのユニットに分かれています。メインユニットには、プロセッサと通信機能、メモリが内蔵されていて、鍵を挿すことによって、個人の仕事環境が瞬時に再現されます。屏風ステーションの格子棚に、収納及び接続することができます。


 八寸ディスプレイ ‐8-sun Display‐
八寸(24cm)四方の、タッチパネル式ディスプレイです。四寸(12cm)モジュールと、組み合わせて使用します。ディスプレイは、最大4枚まで接続でき、打ち合わせの際に資料代わりに手渡したり、あるいは、4枚合わせた大画面で、プレゼンテーションすることもできます。また、このディスプレイは、ジェスチャによって操作することができ、自然な振舞いのなかで、利用することができます。


 巻物PDA ‐Makimono PDA‐
巻物PDA(Personal Digital Assistance)は、タッチパネル式ディスプレイを、巻物のように引き出して使用します。本体には、プロセッサ、通信モジュール、メモリ、CCD (Charge Coupled Device 電荷結合素子)カメラが内蔵されており、指の動きを読み取るカーソルキーがあり、画面のスクロールを行います。ペンは、画面の入力だけでなく、テキストスキャナとしても、利用することができます。

注: 尺、寸などを換算したセンチメートル寸法は目安となる数値です。