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タンポポからみる生物多様性

国立大学法人愛知教育大学 教授 渡邊幹男

生物多様性を基盤とした持続可能な社会をつくることは、21世紀に生きる我々には不可欠なものです。生物資源を将来にわたって持続可能に利用するためにも生物多様性の保全は重要なのです。

また、特定の生物を調べることによって我々がどのように生物に関わってきたかがわかります。タンポポもそのような生物の一つです。タンポポを通して生物多様性を考えてみましょう。

ニホンタンポポの分布からわかる自然との共生

自然に脅威を与えた(破壊してきた)時代、20世紀。21世紀は自然との共生を考えなければなりません。春の代表的な植物であるニホンタンポポ(日本の固有種)は、西日本から東日本にかけて分布する黄色のタンポポです。都市化に伴ってその分布域が縮小してしまいました。

今、どのような場所にニホンタンポポが生育しているのか調べることによって、高度成長期(第二次世界大戦以降)以前の日本人が自然と共生していた環境が、都市空間のどこに残っているかがわかります。日常生活でよい環境とは、生活するのに便利な環境、すなわち都市環境です。

一方、心安らぐ環境とは、自然との共生がある環境です。一見ニホンタンポポとは結びつかないようですが、都市おける自然との共生がある環境。すなわち、生活するのに便利で心安らぐ環境、それをニホンタンポポから見つけ出すことができるかもしれません。

雑種性帰化タンポポの誕生は生物多様性の崩壊の先駆け

ニホンタンポポと帰化タンポポ(人間によってヨーロッパから明治時代以降に日本に持ち込まれた植物)の交雑によって生まれた雑種性帰化タンポポ。そのタンポポの中には、花粉を作らない個体があります。花粉がないと、花粉を求めてそこにくる昆虫(ハチやチョウの仲間)が来なくなる可能性があります。

その結果、花粉が運ばれることによって受粉する植物に大きな影響が出ます。花粉のない雑種性帰化タンポポの誕生が、花粉を運ぶ昆虫の多様性や進化にも影響を及ぼす可能性もあります。

このような現象は人間の活動が、生物多様性を崩壊させてしまう可能性を暗示しています。新しく生まれた雑種性帰化タンポポがどこまで分布を拡大しているのかを調べましょう。

シロバナタンポポからみる地球温暖化

シロバナタンポポは、西日本(九州や四国)に多くみられる植物です。もともと西日本にしか分布していなかったシロバナタンポポが、最近関東地方でもみられるようになりました。

これは温暖化の影響だとも考えられています。特に中部地方より東に分布を拡大しているシロバナタンポポは、1クローン(同じ遺伝子を持っている)の可能性が近年の研究から明らかになっています。

同じ遺伝子を持つ個体は同じ環境で花が咲きます。ですから、シロバナタンポポの分布や開花状況を調べることによって西日本と同じ環境がどこまで拡大したのかがわかります。

温暖化によって分布を拡大している生物はいくつか報告されています。でもそのほとんどが、身近に見られなかったり、温暖化の影響がすぐに繁栄されない生物の場合もあります。

身近なタンポポを通して生物多様性を調べましょう。